断続的な断食は肥満でない人のダイエットに不向き 減量以外の副次的効果も疑問
肥満でない人のダイエットには、断続的断食は意味がないようだ。減量効果は単純なカロリー制限に及ばず、減量以外の心血管代謝面へのメリットも認められないという。
人気の断続的断食への期待と現実
1日の中で食事を食べる時間帯を制限したり、または食事をとらない曜日を設けたりする断続的断食は、「摂取エネルギーを考えなくても成功するダイエット法」と言われることもあり、人気が上昇している。ただし、実際には、摂取エネルギー量制限を伴わない場合は有意な減量効果が見られないとの報告もあり、食事スタイルとしての評価が定まっていない。とくに、非肥満の人が減量する場合の効果はこれまで十分に検討されていなかった。その一方で断続的断食には、絶食時間が長く続くことで心血管代謝上のメリットが存在するのではないかとの指摘もある。ただしその点については、肥満者/非肥満者を問わず、エビデンスはほとんどない。
今回紹介する論文は、体重を減らしたいと思っている非肥満者が、その手段として断続的断食を用いた場合に、減量効果や心血管代謝関連パラメーターへの影響が、ごく一般的な摂取制限よりもすぐれているか否かを検討した結果だ。
肥満でない人がダイエットしたい時、効率的な方法はどれ?
この研究は、BMIが20.5~24.9と非肥満でありながら、減量の意志がある18~65歳の成人を対象に実施された。研究参加にあたり、代謝性疾患がないことや、基準範囲内からの減量が健康を害する懸念のないこと、過去6カ月間、体重が安定していること(変動が±3kg以内)が条件とされた。除外基準は、体重が120kg以上、研究参加前3カ月以内に断食や献血を行っていた場合、食事・身体活動習慣を最近変更していた場合、更年期や妊娠中(妊娠の予定も含む)、授乳中の女性、ビーガンやグルテン除去食などを行っている人、この研究に対する偏見やその他のリスクがある場合。
2タイプの断続的断食を単純な摂取制限と比較
前記の条件を満たす36名が研究に参加し、12名ずつ、以下の3群に分けられ、3週間の介入を行った。
a.単純な摂取制限群
毎日の摂取エネルギー量を、それまでの25%制限する群。この群では、ある一定期間で摂取する合計のエネルギー量も-25%となる。
b.摂取制限を伴う断続的断食群
食事を全く摂取しない日と、ふだんの150%のエネルギーを摂取する日を交互に繰り返す群。この群では、ある一定期間で摂取する合計のエネルギー量は-25%となる。
c.摂取制限を伴わない断続的断食群
食事を全く摂取しない日と、ふだんの200%のエネルギーを摂取する日を交互に繰り返す群。この群では、ある一定期間で摂取する合計のエネルギー量は全く変化しない。
体重、体脂肪のほか、代謝マーカーや遺伝子発現も比較検討
この3群間に、年齢、性別比、身体活動量、BMI、および血糖値やインスリン、インスリン感受性、血清脂質などに有意差はなかった。なお、研究参加者それぞれのふだんの摂取エネルギー量は、3週間の介入に先立ち4週間にわたって行われた事前調査から、個々に判定された。
3週間の介入効果は、体重や体組成の変化のほかに、血糖値や血清脂質、インスリン、レプチン、グレリン、ペプチドYYなどの代謝関連マーカー、および、皮下脂肪組織を針生検で採取した脂肪細胞を検体として44種類の心血管代謝関連遺伝子発現(mRNA)を比較し検討した。
単純なエネルギー制限が最も体脂肪を減らせる
それではまず、体重や体組成への介入効果をみてみよう。
a群とb群では体重の減少幅は同じで、体脂肪はa群のほうが大きく減少
介入から3週間後、aの「単純な摂取制限群」では体重が1.91±0.99kg減少し、bの「摂取制限を伴う断続的断食群」では1.60±1.06kg減少していた。この減量幅は、両群間に有意差がなかった(P=0.46)。
一方、体脂肪は、a群は1.75±0.79kg減少、b群は0.74±1.32kg減少で、a群のほうが減少幅が大きく、群間に有意差がみられた(P=0.01)。
c群は体重と体脂肪の減少が、他の2群より有意に少ない
cの「摂取制限を伴わない断続的断食群」では、体重が0.52±1.09kgとわずかに減少し、体脂肪は0.12±0.68kg減少とほとんど変化していなかった。これらの減少幅は、他の2群に比較して有意に少なかった。
なお、a群の減量効果はほぼすべてが体脂肪の減少によるものだったが、断続的断食の減量効果は、体脂肪と除脂肪体重の減少の双方によってもたらされたものだった。
代謝マーカーや心血管代謝リスク関連の遺伝子発現は有意差なし
血液検査による代謝マーカー(血糖値や血清脂質、インスリン、インスリン抵抗性など)は、いずれも群間に有意差がなかった。
皮下脂肪細胞を検体とする心血管代謝リスクに関連する44種類の遺伝子発現(mRNA)レベルを比較検討した結果は、時計遺伝子(PER1)とミトコンドリア機能に関連する遺伝子(PPARGC1A)のみ、単純な摂取制限を行った群が他の2群に比較し有意なアップレギュレーションが認められたが、全体として明確な群間差はみられなかった。
断続的断食では身体活動量が低下しやすい
これらのほか、身体活動量が3群間で異なる結果となった。
aの単純な摂取制限群では、身体活動量は介入前となんら変化しなかったのに対して、cの摂取制限を伴わない断続的断食群では、断食日も摂食日もともに身体活動量が介入前よりも少なくなっていた。bの摂取制限を伴う断続的断食群では、断食日は身体活動量がやや低下し、摂食日は身体活動量が大きく増加するという変動がみられた。
このような身体活動量の変化が、前述のような減量効果の違い、および減量効果に占める体脂肪量の低下が寄与する程度の違いに、影響を及ぼした可能性が考えられた。
減量効果は単純な摂取制限に及ばず、心血管代謝上のメリットも確認できない
以上、一連の結果から著者らは、「エネルギー制限のない断続的断食は、体重を減らすのに効果がないことがわかった。正味のエネルギー摂取量が制限されている場合でも、隔日絶食は体脂肪量を効果的には減少させない。また、毎日のエネルギー制限と比較し、代謝や心血管の健康上の有益性を示すデータも得られなかった」とまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「A randomized controlled trial to isolate the effects of fasting and energy restriction on weight loss and metabolic health in lean adults」。〔Sci Transl Med. 2021 Jun 16;13(598):eabd8034〕
原文はこちら(American Association for the Advancement of Science)