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食べる速さと食べる回数の違いは、成人と子どもの代謝にどのくらい影響を及ぼすのか?

摂食速度や摂食頻度と、BMIや腹部肥満、メタボリックシンドローム(Met-S)およびMet-Sの構成因子との関連を調査した過去の研究を対象とするナラティブレビューが報告された。文献検索で52報を選び出し、成人と未成年に分け、かつ、横断研究、縦断研究、介入研究に分けて考察を加えている。

食べる速さと食べる回数の違いは、成人と子どもの代謝にどのくらい影響を及ぼすのか?

文献検索の手法と抽出された報告の特徴

このレビューは、摂食速度や摂食頻度と心血管代謝関連マーカーとの関連を調査した研究を網羅的に収集し要約することを目的に実施された。文献検索にはPubMedとWeb of Scienceを用い、2020年6~9月に検索が実施された。採用基準は、全文が公開されているヒトを対象とする研究の原著論文で、英語またはスペイン語で執筆されたもの。レターや症例報告、プロトコル論文、中間解析報告、アブストラクトのみのものは除外した。独立した2名の研究者がレビューを行い、意見の不一致はコンセンサスによって解決した。

223件の報告から52件を抽出

PubMedから133件、Web of Scienceから90件、計223件がヒットし、かつハンドワークにて5件を追加。タイトルとアブストラクトのレビューにより176件、重複により33件、関連性のないもの121件、レビュー論文18 件をそれぞれ除外した。最終的に52件が抽出された。

52件の研究のうち、18件はアジア、他の18件はアメリカ、14件はヨーロッパ、1件はオセアニアからであり、残る1件はアメリカとヨーロッパで実施されていた。研究対象者数は、成人を対象とする横断研究が15万7,034人、未成年が3万7,119人、縦断研究は同順に6万4,583人、5,610人、介入研究は357人、24人だった。

論文ではこれらの研究を、横断研究での摂食速度、摂食頻度、縦断研究での摂食速度と摂食頻度、および介入研究での摂食速度と摂食頻度とグループ化し、未成年と成人に分けて考察している。

横断研究

摂食速度

未成年対象

未成年を対象に摂食速度の違いの影響を検討した横断研究は4件だった。そのうち2件は日本からの報告だった。

摂食速度が速いことは肥満(OR2.71,95%CI;2.10~3.48)と過体重・肥満 (β=0.70,95%CI;0.33~1.08)と有意に関連し、遅いことは過体重(OR0.61,95%CI;0.41~0.92)と逆相関することが報告されていた。

成人対象

成人を対象に摂食速度の違いの影響を検討した横断研究は9件だった。そのうち5件は日本からの報告だった。

複数の研究が、自己報告による摂食速度と腹部肥満の有病率の有意な相関を報告していた。摂食速度が最も速い群は最も遅い群より高中性脂肪血症のリスクが 59%有意に高いとの報告もみられた。

摂食頻度

未成年対象

未成年を対象に摂食頻度の違いの影響を検討した横断研究は9件だった。

摂食頻度とBMIの有意な逆相関の報告が4件存在した。また、摂食頻度は、体重(β=-0.78)、腹部肥満(OR0.73,95%CI;0.63~0.85)のリスク低下と関連が報告されていた。摂食頻度が高い米国とフィンランドの男児は、中性脂肪値が有意に低かった(OR0.48,95%CI;0.26~0.89)

成人対象

成人を対象に摂食頻度の違いの影響を検討した横断研究は15件だった。このうち11件の横断研究で、成人の摂食頻度と肥満との関連が調査されており、摂食頻度の多さが体重、BMIの低値と有意に関連していた。

間食の頻度の影響をBMIで層別化し検討した研究では、男性ではBMI25未満の場合に間食頻度が腹囲長と負の関連(β=-0.52,95%CI;-0.90~-0.14)があるが、女性では有意な関連が認められないという。また女性はBMI25以上では、間食頻度と腹囲長が正相関するとのことだ。

縦断研究

摂食速度

未成年対象

未成年を対象に摂食速度の違いの影響を検討した縦断研究は、日本から報告された1件のみだった。1年間の追跡で、摂食速度と過体重または肥満との間に正の相関が認められたという(β=0.67,95%CI;0.24~1.10)。

成人対象

成人を対象に摂食速度の違いの影響を検討した縦断研究は4件であり、そのうち3件が日本からの報告で、他の1件はニュージーランドからだった。日本からの報告では摂食速度と過体重の間に有意な相関が認められるが、ニュージーランドで実施された研究では非有意だった。日本からの報告では摂食速度が速いことで腹囲長の増加(HR1.35,95%CI;1.10~1.66)、低HDL-C血症(HR1.37,95%CI;1.12~1.67)、Met-S発症(HR1.30,95%CI;1.05~1.60)が有意に増加していた。

摂食頻度

未成年対象

未成年を対象に摂食頻度の違いの影響を検討した縦断研究は3件だった。

10年追跡した2件の研究では、摂食頻度が腹囲長、BMIと有意に逆相関することが示された。一方、米国の思春期の女性を対象とする研究では、摂食頻度が多いほどBMIが高くなると報告していた。

成人対象

成人を対象に摂食頻度の違いの影響を検討した縦断研究は2件だった。

7年追跡した研究では、摂食頻度とBMIの変化に正の相関が認められた(β=0.04,95%CI;0.02~0.06)。一方、6年の追跡で、BMI(β=-0.14,95%CI;-0.27~0.00) や腹囲長(β=-0.49,95%CI;-0.99~0.00)と逆相関を認めたとする報告も存在した。

介入研究

摂食速度

未成年対象

未成年を対象に摂食速度の違いの影響を検討した介入研究は、米国から報告された1件のみだった。4~8歳の24人を対象とするもので、介入群の参加者は摂食速度を遅くすることをテーマとする双方向性の指導に参加し、食事の際にタイマーを使用することなどを薦めた。8週間の介入で摂食速度が低下し、BMIの有意な低下がみられた。

成人対象

成人を対象に摂食速度の違いの影響を検討した介入研究は抽出されなかった。

摂食頻度

未成年対象

未成年を対象に摂食頻度の違いの影響を検討した介入研究は抽出されなかった。

成人対象

成人を対象に摂食頻度の違いの影響を検討した介入研究は6件だった。

米国成人を対象にクロスオーバー法により検討した研究では、1日1食に比較し1日3食の条件で体重が有意に大きく増加した。ただし同じ米国から、またはトルコから、摂食頻度の違いは有意な変化を生じさせないとする研究報告もなされている。

摂食頻度とMet-S構成因子との関連を検討した介入試験では、摂食頻度を増やすことで血圧とHDL-Cが有意に低下することが報告されていた。18週間介入した研究では、1日1食に比較して1日3食では空腹時血糖が有意に低下していた。

これらの総括として著者らは、「エビデンスは限られているが、摂食速度が速いことは肥満やMet-S発症のリスク増大と関連していることが示唆される。また摂食頻度が多いことは、肥満やMet-Sリスクの低下と関連している。ただしこれらの関連性と心血管代謝アウトカムへの影響を明らかにするためには、長期的な介入試験が必要である。その研究の結果次第では、幼少期の摂食速度や摂食頻度に焦点を当てた介入戦略が推奨されることになるだろう」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Eating Speed, Eating Frequency, and Their Relationships with Diet Quality, Adiposity, and Metabolic Syndrome, or Its Components」。〔Nutrients. 2021 May 15;13(5):1687〕
原文はこちら(MDPI)

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