子どもと保護者への健康教育の効果がどのくらい持続するのか ~スナック摂取量を減らす講義で検証
子どもの体重管理を目的として、医療従事者が子どもと親に対して講義形式で健康教育を行うと、その後の数日間は間食の摂取量が減るというデータがスペインから報告された。逆に言えば、効果は数日間しか期待できないということだ。論文の著者は「今後の研究では、講義を定期的に繰り返すことによる効果を検討することを勧める」と述べている。
6歳児の毎日のスナックの摂取量を減らすアプローチの模索
先進諸国では子どもの肥満傾向が多かれ少なかれ問題になっている。それに対してさまざまなアプローチがなされているが、さまざまなアプローチが行われていること自体が、決定的な介入効果の認められる方法が確立されていないことを表しているとも言える。
そのような現状を背景として、この論文の著者らは、小児科医療、栄養、運動の各専門家による講義形式での教育が、どの程度の効果を発揮し得るかを検討した。スペインの初等教育の1年生(平均6歳)の学童50名とその保護者が研究対象。ひとクラス25名のクラスのうち1クラスを介入群、他方を対照群とした。
子どもと保護者へ、3名の専門家が1日教育
まず、両群ともに1カ月間にわたり、毎日摂取するスナック類を記録してもらった。それらのスナックのうち、製品ラベルに栄養価が示されているものはその情報を基に、スナックからの栄養摂取量を把握した。栄養価の示されていないものはスペインの食品成分データベースを参照し、栄養摂取量を把握した。
1カ月後、介入群の25名に対しては、子どもとその保護者に対して、小児科医および栄養学、運動の計3名の専門家が、講義形式での教育を行った。この教育は保護者の参加を容易にするため、1日に集中して実施。講義時間は40分で内容は主として保護者を対象としたものであり、講義終了後には個別の質問にも応じた。対照群には、とくに教育を行わなかった。
教育介入から1カ月間、引き続きスナックの摂取状況を記録してもらい、前記と同様の手法で栄養摂取量を把握した。
介入前の有意な群間差が教育介入により非有意に
結果について、まず介入前のスナックの摂取状況をみると、最も摂取されていたのはチョコレートチップ入りクッキーで、子どもの21%が摂取していた。続いてサンドイッチを18%が摂取していた。これが介入群では、介入後にそれぞれ15%、10%に低下していた。
次に、介入前の栄養摂取状況を比較すると、全般的に介入群のほうがスナックからの栄養摂取が多い傾向が認められた。教育後にはその差が縮小し、介入前に有意差があった項目の有意差が消失したものが多かった。
例えば、総摂取エネルギー量、炭水化物、脂質および塩の摂取量は、介入前は群間差が有意だったが、教育介入により非有意になった。具体的な変化は以下のとおり。
教育介入から5日目に、対照群とスナック摂取量が逆転
この変化を経時的に追うと、教育後5日間にかけて、介入群ではスナックからの摂取エネルギー量が漸減していき、5日目には対照群と逆転するという効果が認められた。しかし、6日目以降のスナックからの摂取エネルギー量は上昇に転じ、8日目には介入前のレベルとなり、以降は上下動があるものの、総じて対照群よりも高い状態で推移していた。 著者らはこの現象を、「教育された内容を意図せずに忘れてしまったか、もしくは意図的に再びスナックを多く食べるようになったと考えられる」としている。
効果の持続する介入法の模索はまだ続く
結論として著者は、「教育介入の肯定的な影響は、数日間の栄養の質の改善によって確認された。ただし、その影響は数日後に消失した。教育後の数日間は、脂質と炭水化物の割合が低く、健康的なスナックを選択することが意識されていたように見えるが、統計的に有意とならない場合が多い」とまとめている。また、「将来の研究において、研究者は継続的な講演によって生み出される影響を検討することを勧める」と付記し、介入効果を定着させるアプローチの模索の必要性を指摘している。
文献情報
原題のタイトルは、「Impact of a Series of Educational Talks Taught by Health Professionals to Promote Healthy Snack Choices among Children」。〔Children (Basel). 2021 Mar 8;8(3):203〕
原文はこちら(MDPI)