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屋外&団体スポーツの女性アスリートは、エネルギー・栄養素が1日479kcalも不足

女性アスリートは摂取エネルギー・栄養素が不足していることを指摘する新たな研究結果が報告された。これまでの研究報告のシステマティックレビューの結果であり、消費エネルギーと摂取エネルギー量の差の平均が479kcal/日だったという。

屋外&団体スポーツの女性アスリートは、エネルギー・栄養素が1日479kcalも不足

屋外でのチームスポーツはエネルギー需要が高い

屋外でのチームスポーツ、例えばサッカーやフィールドホッケー、ラクロス、アメリカンフットボール、ラグビーなどはいずれも持久力を必要とし、パワーが重要な競技もある。有酸素系と無酸素系、双方のパフォーマンスが要求され、筋グリコーゲンの枯渇が生じやすい。そのため、グリコーゲン貯蓄を促し、回復を促進するための栄養戦略が推奨されている。それにもかかわらず、フィールチームスポーツ選手の摂取エネルギー量が不足しているとする報告が少なくない。ただしそれらの報告の検討対象に占める女性の割合は必ずしも高いとは言えず、男性アスリートで検討したものが多い。

女性の摂取エネルギー不足は、月経機能不全、骨粗鬆症、受傷などのリスクを高めるため、エネルギーバランスの評価と必要に応じた対策が欠かせない。そこで本論文の著者らは、これまでの複数の報告から確からしい結論を得るため、PRISMA(システマティックレビューとメタ解析のための優先報告事項。preferred reporting items for systematic reviews)」に準拠し文献レビューを行った。

フィールドチームスポーツの女性選手のみの研究報告を抽出

文献検索には、PubMed、Web of Science、SPORTDiscus、OpenGreyなどのデータベースを用い、各データベースに収載されている最も古い報告から2020年7月までの報告を検索対象とした。検索キーワードは、「栄養所要量」「食事摂取量」「スポーツ栄養」「食事日記」「食事の頻度」「フィールドスポーツ」「チームスポーツ」などを使用。

適格条件は、横断的、観察的、または無作為化によるオリジナル研究であること、英語論文であること、検討対象がフィールドベースの女性チームスポーツ選手であること、競技会参加以上のレベルであること、ベースライン時または習慣的な食事摂取量が記されていること、定量的評価が行われていること。除外基準は、レビューなどのオリジナル研究でないもの、英語以外で書かれている論文、検討対象が男性、またはフィールドチームスポーツ選手以外のもの、レクリエーションレベルのもの、定性的評価のみのもの。

20件、計462人の女性アスリートのデータをメタ解析

1名の研究者が上記の条件で検索した結果、2,999件がヒット。重複を削除後、2名の研究者が論文タイトルに基づくスクリーニングを行い154件に絞り込み、さらにアブストラクトのスクリーニングで38件を抽出。それらの全文レビューによって最終的に20件の研究をメタ解析の対象とした。20件の研究の品質はすべて「中」と判定され、品質評価の結果から除外すべきものはなかった。

研究の手法や対象者の参加スポーツなどについて

20件の研究のうち、14件は横断研究、5件は縦断研究、1件は無作為化比較試験だった。研究対象者の合計は462人で、米国が105人、ドイツ56人、オーストラリア52人、英国45人、ポーランド41人、カナダ33人、スペイン28人、ブラジル21人、日本17人、オランダ16人、イラ 8人。競技種目は、サッカー288人、ラクロス57人、オーストラリアンフットボール52人、7人制ラグビー29人、フィールドホッケー20人、タッチラグビー16人。競技レベルは、351人が国際戦またはプロレベル、111人が地域代表または大学レベル。

成人と未成年で分けると、成人は338人で21.1±2.4 歳、未成年は124人で15.6±2.0歳。BMI 22.6±1.3、除脂肪体重46.9±1.7kg、体脂肪率19.9±5.6%。

食習慣については、12件はシーズン中に評価、7件はシーズン前、5件はシーズン後に評価していた。すべての研究で、総エネルギーと主要栄養素の摂取量を調査し、10件は微量栄養素も評価していた。また11件は加速度計等により消費エネルギー量も計測していた。

大半のアスリートはエネルギー不足

それでは、メタ解析の結果をみていこう。

摂取エネルギー量は2,064±309kcal/日、消費エネルギー量は2,543±301kcal/日

摂取エネルギー量は1,426~3,122kcal/日の範囲にあり、平均2,064±309kcal/日だった。20件中12件はエネルギー需要を満たすのに不十分であると見なしており、十分であるとした研究は3件、他の5件は妥当性についてコメントしていなかった。なお、7件の研究は推定消費エネルギー量と比較でバランスを評価し、他の研究は推奨値との比較で評価していた。

消費エネルギー量を調査していた11件の研究から、消費エネルギー量は1,744~3,131kcal/日の範囲にあり、平均2,543±301kcal/日だった。平均摂取エネルギー量は平均消費エネルギー量に対して479kcal/日少なく、出納バランスは負だった。

サブグループでの比較

競技レベル別の検討

検討項目国際戦/プロレベル大学レベル
摂取エネルギー量2,121±356
kcal/日
2,011±258
kcal/日
炭水化物4.4
g/kg/日
4.3±1.0
g/kg/日
タンパク質1.5±0.3
g/kg/日
1.3±0.3
g/kg/日
脂質(エネルギー比率)30.6±3.9 %31.8±2.9 %

成人/未成年別の検討

検討項目成人アスリート未成年アスリート
摂取エネルギー量2,018±257
kcal/日
2,304±470
kcal/日
炭水化物4.1±1.0
g/kg/日
5.4±1.7
g/kg/日
タンパク質1.4±0.3
g/kg/日
1.4±0.1
g/kg/日
脂質(エネルギー比率)31.4±3.7 %30.4±0.8 %

シーズン前/シーズン中/シーズン後での検討

検討項目シーズン前シーズン中シーズン後
摂取エネルギー量2,120±211
kcal/日
2,077±360
kcal/日
1,919±284
kcal/日
炭水化物4.6±1.6
g/kg/日
4.3±1.3
g/kg/日
4.1±0.8
g/kg/日
タンパク質1.6±0.3
g/kg/日
1.4±0.3
g/kg/日
1.0±0.1
g/kg/日
脂質(エネルギー比率)30.8±2.8 %31.3±4.3 %30.9±0.5 %

論文では上記のほかに、主要栄養素、微量栄養素についても詳細な検討を加えている。それらのうえで著者らは、「女性のフィールドベースチームスポーツ選手は、全体的にエネルギー、炭水化物、鉄の摂取量が不十分な食生活であることが示された。エネルギー可用性の低さによる健康への影響が懸念される。今後の研究では、これらの食習慣の背後にある理由を明らかにし、潜在的な健康への悪影響とパフォーマンスの低下を防ぐための介入が推奨される」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「How Does the Dietary Intake of Female Field-Based Team Sport Athletes Compare to Dietary Recommendations for Health and Performance? A Systematic Literature Review」。〔Nutrients. 2021 Apr 9;13(4):1235〕
原文はこちら(MDPI)

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