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男子バレーボール選手は摂取エネルギー不足の可能性 膝の痛みも食行動に関係

エリート男子バレーボール選手の摂取エネルギー量が不足している可能性を指摘するデータが報告された。検討対象となった選手の8割近くが、アスリートの食事摂取基準(dietary reference intake;DRI)を満たしておらず、とくに炭水化物の摂取量が少ないという。また、膝の症状と食行動の関連性も示されている。

男子バレーボール選手は摂取エネルギー不足の可能性 膝の痛みも食行動に関係

膝の痛みにも着目してバレーボール選手の食行動を検討

この研究は、エリート男子バレーボール選手の食事摂取量をアスリート対象のDRIと比較すること、および、体格特性や膝の健康に対する認知・感情と食行動との潜在的な関連性を検討することを目的として実施された。  

エリート集団では感情的な食行動が摂取エネルギー量や体脂肪の変動と関連していることが知られている。ただし、エリートアスリートを対象に、痛みの症状の食事行動や体重、体組成への影響を検討した研究はほとんどないとのことだ。

国際大会出場のエリート選手22名で検討

研究の対象は、18歳以上の22名のエリート男性バレーボール選手。2019年に政府からスポーツ助成金が給付されたアスリートをエリートとして判定し、すべての選手が国際バレーボール世界選手権またはオリンピックに出場など国際大会の経験を有していた。

栄養摂取状況は、4日間の食事記録から把握した。食行動は「3因子摂食質問票(The three-factor eating questionnaire–R18;TFEQ-R18)で評価した。TFEQ-R18では、制限された摂食(体重コントロールまたは減量のための意図的な摂取制限)、制御されていない摂食(主観的空腹感に基づく摂取量の増加など)、および感情的な摂食を評価する指標であり、一般集団およびアスリート集団の双方で、感情と摂食行動の関連の評価に用いられている。

膝の症状については、「Victorian Institute of Sport Assessment-patellar tendon(VISA-P)」という指標で評価した。VISA-Pは、膝蓋骨腱炎に臨床的重症度を判定するために開発された指標で、本研究では4日間の食事摂取記録を開始する1日前に実施された。

8割前後の選手が、エネルギー、炭水化物のDRIを満たしていない

検討対象となった22名は、年齢25.8±3.2歳、BMI24.0±1.2、体脂肪率17.0±2.2%、安静時代謝量2,419±393kcalで、VISA-Pスコア80.8±14.6だった。

摂取エネルギー量は、33±15kcal/kg/日であり、22名中の14名(78%)と8割近くがDRIを下回っていた。さらに炭水化物摂取量は3.5±1.3g/kg/日であり、15人 (83%)と8割以上がDRIを下回っていた。また、食物繊維は40±17g/日で11人(61)がDRI未満だった。

一方、タンパク質の摂取量は1.7±0.4g/kg/日で、DRIを下回っていたのは6人(33%)であり、脂質に関しては35±7g/kg/日と、全員がDRIを満たしていた。

微量栄養素に関しては、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンD、チアミン、葉酸、ビタミンE、カルシウム、マグネシウム、亜鉛がDRIを下回っていた。

このほか、血液検査により14%のアスリートにビタミンD不足が認められた。

膝の症状の強さと摂食行動やBMIなどとの有意な関連が認められる

摂食行動と膝の症状(VISA-P)スコアとの間に、一部に有意な関連が認められた。例えば、VISA-Pスコアが高いことは、感情的な食行動と有意な負の相関があった(スピアマンの相関係数〈rS〉=-0.48,p<0.05)。また、VISA-Pスコアの高さは、BMI(rS=-0.37)および除脂肪指数(fat free mass Index;FFMI.rS=-0.48)とも有意な負の相関がみられた(いずれもp<0.05)。

エリート男性バレーボール選手のLEA有病率の検討が必要

著者らは本研究について、いくつかの限界点を挙げている。

例えば、食事記録をとる期間を4日間に限定した。これはオリンピック予選の準備期間中に本研究を実施したため、選手への負担を最小限なものにするという配慮に基づくものだが、 観察期間を7日間とする場合に比べて、摂取量の推定値の分散が増加するリスクがある。また、アスリートは一般に、食事摂取量を過少報告するという問題もあるという。

これらの理由により、「本研究の結果は予備的なものとみなし、追試が求められる」と述べたうえで、「エリート男性バレーボール選手は、スポーツに必要とされる十分なエネルギーと炭水化物を摂取していないリスクが存在する。これによって最適なトレーニング効果を得られなくなる可能性がある。さらに、制限的な摂食行動をしているアスリートは、利用可能なエネルギー不足(low energy availability:LEA)や主要/微量栄養素の摂取不足に関連する怪我やパフォーマンス障害のリスクにつながりかねない。今後の研究では、エリート男性バレーボール選手のLEAの有病率を明らかにし、健康とパフォーマンスへの影響を調査する必要がある」と結論と展望をまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Elite Male Volleyball Players Are at Risk of Insufficient Energy and Carbohydrate Intake」。〔Nutrients. 2021 Apr 24;13(5):1435〕 原文はこちら(MDPI)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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