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女性の長時間のテレビ視聴は社会経済的因子と有意に関連 NIPPON DATA2010の解析

収入や学歴などの社会経済的因子と長時間のテレビ視聴との関連について、日本人を対象に検討した結果が報告された。男性では就業状況以外の関連がない一方、女性ではいくつかの因子と有意な関連が認められるという。同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科の栁田昌彦氏らが、NIPPON DATA2010のデータを解析して明らかになったもので、「Environmental Health and Preventive Medicine」に論文が掲載された。

女性の長時間のテレビ視聴は社会経済的因子と有意に関連 NIPPON DATA2010の解析

NIPPON DATA2010から、テレビ視聴時間が長い人の背景因子を探る

現代人は覚醒している時間の約60%を座位行動で過ごしていると報告されている。そのような長時間の座位行動による健康への影響が懸念されており、例えば世界保健機関(World Health Organization;WHO)は昨年、『身体活動と座位行動に関するガイドライン2020』を公開し、座位行動を減らすことを推奨している。

座位行動の中でもとくにテレビの視聴時間の長さが、2型糖尿病や心血管疾患、全死亡のリスクであることが示されている。さらに収入や学歴などの社会経済的因子がテレビ視聴時間と関連することも明らかになっている。ただしこれらのデータの多くは海外発のものだ。国内では高齢者の座位行動の45.5%をテレビ視聴時間が占めるといった報告があるが、社会経済的因子との関連を検討した大規模な研究は行われていない。

このような背景のもと栁田氏らは、大規模コホート研究である「NIPPON DATA2010」のデータを用いて詳細な検討を行った。「NIPPON DATA」は国民健康・栄養調査や循環器疾患基礎調査の参加者を対象に実施されている追跡研究で、滋賀医科大学公衆衛生学部門が中心となって1980年にスタート。そこから得られた知見は疾患ガイドラインのリスク評価指標として採用されるなど、信頼性の高い研究として知られている。

1日4時間以上を「長時間の視聴」と定義して、関連因子を検討

今回の研究では、20歳以上のNIPPON DATA2010参加者2,898人から、データ解析に必要な情報が欠落している人などを除外し、2,752人(男性1,172人、女性1,580人)を対象とした。

テレビ視聴時間については、1日4時間を超えると全死亡リスクが有意に上昇するとの既報に基づき、それに該当する場合を「長時間のテレビ視聴」と定義した。社会経済的因子については、雇用状況、教育歴、同居家族の有無、および世帯支出を評価した。そのほかの共変量として、喫煙・飲酒・運動習慣、心血管疾患の既往を把握した。

女性でのみ、教育歴が長時間テレビ視聴と有意に関連

統計解析は、男性と女性、および、60歳未満と以上に分けて行った。年齢を60歳で分けたのは、有職者と定年退職者とでは生活スタイルが大きく異なると考えられるため。

約3割が長時間テレビ視聴者。高齢者層ほど視聴時間が長い

対象全体のテレビ視聴時間は平均2.92時間だった。年齢層別にみると男性・女性ともに30代の視聴時間が最短で、男性は2.00時間、女性は1.75時間。反対に最も長いのは80代で、男性4.49時間、女性3.58時間。40代と60代、70代については、男性より女性の視聴時間のほうが有意に長かった。

長時間のテレビ視聴に該当するのは全体の約3割(29.4%)だった。長時間テレビ視聴者の平均視聴時間は5.61時間で、一方、それに該当しない人の平均視聴時間は1.81時間だった。

職に就いていないことは、長時間テレビ視聴と関連

多重ロジスティック回帰分析により、テレビ視聴時間に影響を与え得る因子(前述の共変量)を調整後、定職を有さないこと(学生、退職者、失業者)は、男性と女性、および60歳未満と以上のすべてのカテゴリーで、長時間テレビ視聴の有意な関連因子として抽出された。定職を有さない場合に長時間テレビ視聴に該当するオッズ比(OR)は以下のとおり。60歳未満の男性OR3.37(95%CI;1.50~7.56)、60歳以上の男性OR4.77(95%CI;3.31~6.88)、60歳未満の女性OR3.77(95%CI;2.43~5.84)、60歳以上の女性OR4.21(95%CI;2.65~6.70)。

就業状況のほかに女性では、教育歴とも有意な関連がみられた。具体的には、教育歴が13年以上を基準とした場合、60歳未満では教育歴10~12年でOR1.72(95%CI;1.09~2.71)、10年未満はOR2.63(95%CI;1.21~5.69)、60歳以上では同順にOR2.00(95%CI;1.15~3.49)、OR2.34(95%CI;1.32~4.16)だった。また60歳未満の女性では、配偶者と同居している人に比較し配偶者以外の家族と同居している人〔OR1.95(95%CI;1.11~3.41)〕、60歳以上の女性では独居者〔OR1.84(95%CI;1.22~2.75)〕も、長時間テレビ視聴者が多かった。

一方、男性では就業状況以外に長時間テレビ視聴と有意に関連する因子はみつからなかった。世帯支出に関しては、男性と女性、60歳未満と以上のいずれのカテゴリーでも、長時間テレビ視聴と有意な関連がなかった。

これら一連の結果を総括して著者らは、「年齢が高くなるほどテレビ視聴時間は長くなることがわかった。高齢者は意識的にテレビ視聴時間を短縮する必要がある。また就業状況は性別や年齢に関係なく、テレビ視聴時間が長いことと関連していた。ただし教育歴との関連には性差が存在する。テレビ視聴時間を短縮するための介入において、これらの因子を考慮する必要がある」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association between socioeconomic status and prolonged television viewing time in a general Japanese population: NIPPON DATA2010」。〔Environ Health Prev Med. 2021 May 7;26(1):57〕
原文はこちら(Springer Nature)

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