すべての人に運動習慣を! WHOが『身体活動と座位行動に関するガイドライン2020』を公開、主なポイントをご紹介
世界保健機関(World Health Organization;WHO)の「身体活動と座位行動に関するガイドライン」が改訂され、先ごろ2020年版として公開された。
新ガイドラインは、小児から青年、成人、高齢者、および妊産褥婦、慢性疾患や障害のある人への具体的な推奨事項をまとめている。すべての成人に対し、150~300分/週の中等強度の身体活動、75~150分/週の高強度の身体活動、または両者の組み合わせを推奨し、小児、青年には平均60分/日の中等度~高強度の有酸素運動が健康上の利点をもたらすとしている。また、「性別、文化的背景、社会経済的地位に関係なく、5歳以上の年齢層のすべての人々を対象としており、慢性的な疾患や障害のある人、妊産褥婦は、可能な限り、これらの推奨事項を満たすように努める必要がある」と述べている。
身体活動と座位行動について、対象ごとに推奨事項を推奨レベルとともにまとめられており、主なポイントは以下のとおり。
小児および青年(5〜17歳)
身体活動
- 少なくとも1日平均60分の中等度~高強度の主として有酸素運動を週を通して行う(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- 筋肉と骨を強化するため、高強度の有酸素運動を少なくとも週に3日組み込む(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
座位行動
- 座位時間、とくにスクリーンタイム(スマホやゲーム、テレビ等の視聴時間)などのレクリエーション時間を制限する(推奨度;強、エビデンスレベル;低)
成人(18〜64歳)
身体活動
- 定期的な身体活動を行う必要がある(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- 少なくとも150~300分/週の中等強度有酸素運動、または、75~150分の高強度有酸素運動、またはそれら両者の組み合わせ(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- 少なくとも週2回の中等強度以上での筋力運動(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- より高いメリットを期待するため:300分/週の中等度有酸素運動、または150分/週の高強度有酸素運動、またはそれら両者の組み合わせを行う(推奨度;条件付き推奨、エビデンスレベル;中)
座位行動
- 座位時間を制限する。座位行動を何らかの強度(軽強度も含む)の身体活動に置き換えることは、健康上のメリットにつながる(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
高齢者(18〜64歳)
身体活動
- 定期的な身体活動を行う必要がある(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
座位行動
- 座位時間を制限する。座位行動を何らかの強度(軽強度も含む)の身体活動に置き換えることは、健康上のメリットにつながる(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
妊娠中および産後の女性
身体活動
- 妊娠中および産後を通して定期的な身体活動を行う(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- 少なくとも150分/週の中等強度の有酸素運動(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- さまざまな有酸素運動および筋力運動を取り入れ、軽いストレッチの追加が有益の可能性がある(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- 妊娠前に高強度有酸素運動を習慣的に行っていた女性、または身体活動を行っていた女性は、妊娠中および産後、それらの活動を継続して良い(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
座位行動
- 座位時間を制限する。座位行動を何らかの強度(軽強度も含む)の身体活動に置き換えることは、健康上のメリットにつながる(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
慢性疾患のある成人(18歳以上)および高齢者
身体活動
- 少なくとも150〜300分/週の中等強度有酸素運動、または、75~150分の高強度有酸素運動、またはそれら両者の組み合わせ(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- より高いメリットを期待するために:少なくとも週2回の中等強度以上での筋力運動を行う(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- 機能的能力を高め転倒を防ぐために、週に3日以上、中等強度以上での筋力運動とバランスを鍛える多面的身体活動を行う(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- 禁忌でない場合、週に300分/週の中等度有酸素運動、または150分/週の高強度有酸素運動、またはそれら両者の組み合わせを行う(推奨度;条件付き推奨、エビデンスレベル;中)
座位行動
- 座位時間を制限する。座位行動を何らかの強度(軽強度も含む)の身体活動に置き換えることは、健康上のメリットにつながる(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
障害のある小児および青年(5〜17歳)
身体活動
- 少なくとも60分/日の中等強度~高強度の主として有酸素運動を、週を通して行う(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- 筋肉と骨を強化するため、高強度の有酸素運動を少なくとも週に3日組み込む(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
座位行動
- 座位時間、とくにスクリーンタイム(スマホやゲーム、テレビ等の視聴時間)などのレクリエーション時間を制限する(推奨度;強、エビデンスレベル;低)
障害のある成人(18歳以上)
身体活動
- 定期的な身体活動を行う必要がある(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- 少なくとも150~300分/週の中等強度有酸素運動、または、75~150分の高強度有酸素運動、またはそれら両者の組み合わせ(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- より高いメリットを期待するために:少なくとも週2回の中等強度以上での筋力運動を行う(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- 機能的能力を高め転倒を防ぐために、週に3日以上、中等強度以上での筋力運動とバランスを鍛える多面的身体活動を行う(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
- 週に300分/週の中等度有酸素運動、または150分/週の高強度有酸素運動、またはそれら両者の組み合わせを行う(推奨度;条件付き推奨、エビデンスレベル;中)
座位行動
- 座位時間を制限する。座位行動を何らかの強度(軽強度も含む)の身体活動に置き換えることは、健康上のメリットにつながる(推奨度;強、エビデンスレベル;中)
主な改訂ポイント
新ガイドライン発行にあわせて、英国スポーツ運動医学会の「BMJ Open Sport Exerc Med」に掲載された論文によると、従来のガイドラインからの主な改訂点は以下のとおり。
身体活動は少なくとも10分間は継続するべきであるという規定が削除された。成人向けに少なくとも150分/週の中等強度の運動の推奨に加え、150~300分/週の中等強度の運動や75~150分/週の高強度運動の目標も設定された。高齢者に対する機能的能力を高め転倒を防ぐためのバランスと筋力トレーニングを強化する多面的身体活動が、運動能力の低い人ではなく、すべての高齢者に推奨された。
それ以外にも、小児に対する中等強度運動の推奨時間を、毎日60分から少なくとも平均60分に変更された。
関連情報
ガイドライン本文(PDF):WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour
ガイドラインの紹介:「World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour」。〔Br J Sports Med. 2020 Dec;54(24):1451-1462〕