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日本人アスリート向けに特化した初の食物摂取頻度質問票が完成し、良好な再現性を確認

使用対象を日本人アスリートに限定した食物摂取頻度質問票が開発された。66項目からなり、妥当性や再現性の検証結果は良好という。東京農業大学応用生物科学部栄養科学科の髙田和子氏らの研究によるもので、「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に論文が掲載された。

日本人アスリート向けに特化した初の食物摂取頻度質問票が完成し、良好な再現性を確認

66項目からなる日本人アスリート対象FFQの開発

アスリートの健康増進やパフォーマンスの最大化には、適切な栄養摂取が欠かせない。適切な栄養摂取に導く介入の第一歩は、アスリートの栄養摂取状況を把握することであり、その手段として食物摂取頻度調査(food frequency questionnaire;FFQ)が用いられる。

食習慣は民族・文化的背景などによって大きく異なるため、FFQもそれらにあわせて個別化されたものを開発・使用することで、高い精度での評価が可能になる。さらにアスリートと一般生活者とではエネルギー摂取量を含む摂食パターンが異なるため、アスリート専用のFFQが必要。しかし、これまでは,一般人を対象として作成されたFFQをアスリートで妥当性検討しているのみであった。

このような背景から髙田氏らは、日本人アスリートの集団から得たデータを基に、日本人アスリート専用FFQ「food frequency questionnaire for Japanese athletes;FFQJA」を開発。かつ、そのFFQJAを別の日本人アスリート集団を対象に試行して、妥当性を検証するという一連の研究を行った。

FFQJAの開発プロセス

15~28歳、440人の日本人アスリートの食事記録を分析

FFQJAの開発には、以前に実施した食事研究の参加者440人のデータを用いた。

参加者は全員が日本人アスリートであり、年齢15~28歳、男性220人、女性220人で、BMI中央値は男性23.8(四分位範囲22.3~26.1)、女性22.2(同20.8~24.3)。競技種目は、陸上、水泳、サッカー、ボート,バレーボール、ラグビー、アメリカンフットボール、バスケットボール、ハンドボール、野球、ソフトボール、バドミントン、ラクロス、自転車、柔道、体操、ウェイトリフティング、ボクシング、フェンシング、カヌー、チアリーディングなど多岐にわたる。

参加者は3~7日間にわたり、摂取したすべての飲食物を記録し、また、定規とともにデジタルカメラで撮影。加えて、栄養成分表示ラベルのある食品を摂取した場合は、それを保存した。それらの記録から、参加者1人につき1日分のデータを無作為に選択。トレーニングされた管理栄養士が『日本食品標準成分表』と栄養素計算ソフトを用いて、栄養素摂取量を算出した。摂取エネルギー量と主要栄養素の中央値と四分位範囲は以下のとおり。

摂取エネルギー量2,834(2,178~3,553)kcal、タンパク質94.5(74.2~118.8)g、脂質85.7(65.0~112.0)g、炭水化物383.9(294.9~508.2)g。調査票では,これらのほか、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、ビタミンA(レチノール活性当量;RAE)、ビタミンB1、B2、ビタミンC、および食物繊維について評価している。トレーニングスケジュールによる食事摂取量の変化を評価できるように、2週間の平均摂取量を調査するようにした。

1,220品目の食品を66項目に分類し、摂取頻度は4段階で評価

参加者440人の食事記録には、1,220品目の食品が記録されていた。これらをまず103のグループに分類し、それらを説明変数、各栄養素の総摂取量を目的変数とする重回帰分析により、参加者全体の90%の栄養素摂取量を説明し得る、摂取頻度の高い食品を抽出したところ、66種類の食品が特定された。

これら66項目から、自分自身で調理しない限り摂取量を把握しにくい、砂糖や醤油などの調味料を除外し、一方、ナッツやシロップ、アルコールなどを追加して、合計66項目をFFQJAの評価対象食品とした。

それらの食品の摂取頻度は、「ほぼ毎日」「週に3~4回」「週に1~2回」「めったに摂取しない(週に1回未満)」の4つのカテゴリーに分類し評価することとした。摂取量は,基準量に対して何倍食べているかを問うようにした。

FFQJAの検証

質問項目の妥当性の検証:食事記録との中程度の相関を確認

開発されたFFQJAについて、新たに募集された日本人アスリート集団を対象として、妥当性が検証された。この検証の参加者は高校と大学各1校で募集された15~21歳の92人。定められた14日間の食事記録の一部の情報が欠落していた人や、競技会前の減量期間に差し掛かり摂取量が大きく変化した人などを除き、78人のデータを検証に用いた。BMI中央値は男性22.7(四分位範囲21.6~24.0)、女性21.9(20.7~23.9)。参加競技は、陸上、アイスホッケー、ウエイトリフティング、自転車、柔道、水泳、スキー、スケート、卓球、バレーボール、バスケットボール、野球、ラクロス、レスリングなど。

食事記録から把握された栄養素摂取量とFFQJAによる評価結果の相関係数(未調整のスピアマン順位相関係数)は、最も低い食物繊維が0.222、最も高い炭水化物は0.555で、中央値は0.407だった。摂取エネルギー量で調整すると、最低が脂質の0.270、最高がCaの0.584で、中央値は0.478だった。

また、四分位数で群分けすると、全体の39%は食事記録とFFQJAの評価結果が同一四分位群に分類され、70%は同一または隣接する四分位群に分類された。分類の一致率が最も低いのはビタミンB1で、隣接四分位群を含めた一致率は65%、最も一致率が高いのはFeで、隣接四分位群を含めた一致率は86%だった。

再現性の検証:2回の評価結果の中程度の相関を確認

続いて、再現性の検証が行われた。

再現性の検証は、前記の妥当性の検証に参加したアスリートのうち36人。1回目のFFQJAの評価に続き、14日間の食事記録期間を経て、その終了から1週間以内に2回目のFFQJA評価を実施。1回目と2回目の相関を検討するという手法を用いた。

その結果、栄養素ベースでは、未調整のスピアマン順位相関係数の中央値が0.654であり、摂取エネルギー量で調整すると0.614となった。栄養素別で最も級内相関が弱いのは炭水化物の0.588であり、最も高い相関は食物繊維の0.755だった。

食品ベースでは、未調整の係数中央値が0.553、摂取エネルギー量で調整後は0.601であり、級内相関が最も弱いのは肉類の0.417、最も高い級内相関は砂糖の0.903だった。

他の集団でも同様の手法でFFQを開発できる可能性

著者らは本研究の限界点として、食事機会ごとの評価がなされていないこと、バイオマーカーとの相関が検討されていないことなどを挙げ、それらを今後の研究の課題としている。そのうえで、「新たに開発された質問票は、食事ごとに摂取量を評価しており,日本人アスリートの栄養評価や指導に役立つと考えられる。また、食事ごとに評価する方法は他の国でも応用できるのではないか」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Development and validation of a food frequency questionnaire for Japanese athletes (FFQJA)」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2021 May 10;18(1):34〕
原文はこちら(Springer Nature)

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