健康に良くない食品の組み合わせが明らかに 英国での約12万人の前向きコホート研究
栄養素の摂取量と健康の関連については膨大な研究報告がある。しかし人々は「栄養素」を口にしているのではない。食べているのはあくまで「食品」である。このような当たり前とも言える視点に立ち返り、摂取している食品の組み合わせと健康との関連を検討した研究が行われた。英国で行われている中年成人対象の大規模前向きコホート研究「UK Biobank」のデータを解析した研究だ。
11万7千人のデータを前向きに解析
この研究の対象は、UK Biobankに2006~2010年に登録された人のうち、食事摂取状況に関するオンライン調査に2回以上回答した、37~73歳の成人11万6,806人。
健康に良くない食品の組み合わせ二つのパターンを特定
食事調査の情報に基づきRRR(Relative Risk Reduction)という統計学的手法により、健康に良くない食品の組み合わせのパターンが二つ特定された。
パターン1
健康に良くない食べ合わせのパターン1は、- チョコレートと菓子、バターと他の動物性脂肪食品、および食物繊維の少ないパンの摂取量が多く、
- 新鮮な果物、野菜、および食物繊維の豊富な穀物の摂取量が少ない
という食事パターン。この食事パターン1で、検討した健康アウトカム(致死性/非致死性心血管イベントと全死亡)への食事による影響の43%を説明可能。
パターン2
パターン2は、- 高脂肪のチーズやバターなどの摂取量は少ないものの、
- 加糖飲料やフルーツジュース、テーブルシュガーの摂取量が多い
という食事パターン。食事パターン2で、健康アウトカムへの影響の20%を説明可能。
各食事パターンに該当する人の傾向
解析対象全員の食事パターンを、上記二つの食事パターンに近いものか否かで五分位に分類。すると、パターン1の第5五分位群(最もパターン1らしい食事をしている上位20%)は、若年男性、現喫煙者、肥満・高血圧患者が多く、身体活動量が少なく、タウンゼント剥奪指数が高い人が多いという特徴がみられた。また、BMIと収縮期血圧が高く、HDL-Cは低かった。
一方、食事パターン2の第5五分位群は、肥満・高血圧・糖尿病、高コレステロール血症患者が多く、身体活動が少ない人が多いという特徴がみられた。パターン2に関しては、BMIに有意な違いは認められなかった。
健康アウトカムの発生状況と交絡因子の調整
90万7,431人年の追跡(研究登録から中央値7.8年、最後の食事調査から4.9年)で、心血管イベントが4,245件、うち致死性心血管イベントが838件、全死亡が3,629件発生した。これらの健康アウトカムに影響を及ぼし得る交絡因子(年齢、性別、地域、民族、社会経済状況、健康関連行動リスク因子、摂取エネルギー量、更年期障害)の影響を調整した多変量Cox比例ハザードモデルにより、全死亡、致死性または非致死性心血管イベントとの関連を検討した。
食事パターンとイベントリスクの関連
それでは食事パターン1・2とイベントリスクとの関連をみてみよう。
食事パターン1との関連
食事パターン1のスコアが高いほど総心血管疾患イベント(HR1.07〈95%CI;1.04~1.09〉)、致命性心血管イベント(HR1.07〈95%CI;1.02~1.13〉)、および全死亡(HR1.08〈95%CI;1.05~1.11〉)のリスクが高いという有意な関連がみつかった。
この関連は、五分位で分けて検討した場合も有意だった。具体的には、第1五分位群を基準とすると、総心血管イベントは第2五分位群HR1.17(95%CI;1.09~1.25)、第3五分位群HR1.14(95%CI;1.07~1.22)、第4五分位群HR1.17(95%CI;1.09~1.25)、第5五分位群HR1.40(95%CI;1.31~1.50)と、第2五分位群からすべて有意にリスクが高く、用量反応性も有意だった(傾向性p=0.002)。
致死性心血管イベントについては、第4五分位群HR1.21(95%CI;1.04~1.39)、第5五分位群HR1.29(95%CI;1.11~1.51)が有意にハイリスクであり、用量反応性も有意だった(傾向性p=0.001)。
全死亡については、第3五分位群HR1.10(95%CI;1.03~1.19)、第4五分位群HR1.19(95%CI;1.11~1.28)、第5五分位群HR1.37(95%CI;1.27~1.47)が有意にハイリスクであり、用量反応性も有意だった(傾向性p=0.001)。
食事パターン2との関連
食事パターン2についても、スコアが高いほど総心血管疾患イベント(HR1.02〈95%CI;1.01~1.03〉)、致命性心血管イベント(HR1.02〈95%CI;1.01~1.04〉)、および全死亡(HR1.01〈95%CI;1.00~1.04〉)のリスクが高いという有意な関連がみつかった。
この関連は、五分位で分けて検討した場合も有意だった。具体的には、第1五分位群を基準とすると、総心血管イベントは第5五分位群HR1.14(95%CI;1.07~1.22)が有意にハイリスクであり、用量反応性も有意だった(傾向性p=0.001)。致死性心血管イベントについても第5五分位群HR1.18(95%CI;1.02~1.36)は有意にハイリスクであり、用量反応性も有意だった(傾向性p=0.031)。
全死亡については、第4五分位群HR1.11(95%CI;1.03~1.19)と、第5五分位群HR1.11(95%CI;1.03~1.19)が有意にハイリスクであり、傾向性p値は0.05だった。
食品の組み合わせが健康リスクに及ぼすメカニズムの解明を
この結果に基づき、「チョコレート菓子、バター、精製パン、テーブルシュガーとジャムの摂取量が多く、新鮮な果物、野菜、全粒穀物食品の摂取量が少ないことは、心血管疾患のリスクの増加とすべての原因による死亡に関連していることが示された」と著者らは結論をまとめている。また、「食事パターン1で認められたBMI高値や、食事パターン2で認められた加糖飲料、フルーツジュース、テーブルシュガー、ジャムの摂取量が多いことは、早期死亡の独立した危険因子と考えられる」とし、「この関連の根底あるメカニズムの研究が必要」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Associations between dietary patterns and the incidence of total and fatal cardiovascular disease and all-cause mortality in 116,806 individuals from the UK Biobank: a prospective cohort study」。〔BMC MedBMC Med. 2021 Apr 22;19(1):83. 2021 Apr 22;19(1):83〕
原文はこちら(Springer Nature)