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68カ国の12〜15歳18万人の調査で、食料不安とファストフード摂取量に有意な関連

12〜15歳の青年の食料不安とファストフード摂取量に有意な関連があることが報告された。低所得国から高所得国までを含む18万人以上を対象とする調査の結果。著者らは、フードバンクや学校給食制度の推進などの政策が求められると述べている。

68カ国の12〜15歳18万人の調査で、食料不安とファストフード摂取量に有意な関連

低所得国と高所得国で、食料不安とファストフード消費の関連は異なるのか

手軽に食欲を満たすことができるファストフードの消費は世界的に増加しており、とくに未成年の摂取量が大きく増えている。ファストフードは通常、エネルギー量、脂質、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、添加糖、ナトリウムが多く、食物繊維やビタミンが少ないことから、非健康的な食品とされる。実際、ファストフードの摂取量が多いほど、肥満やインスリン抵抗性、総コレステロールの上昇などの身体的健康リスクが上昇することが示されている。さらに、メンタルヘルスにも悪影響を与える可能性も報告されている。

一方、食料不安が高い人の摂取する食品は、エネルギー量が高く栄養価の低い食品にシフトする傾向がある。ファストフードのもう一つの特徴は比較的安価である点であり、この点が未成年や低所得国の食料不安が高い人々のファストフード摂取量増加の背景として考えられる。若年者の非健康的な食習慣は成人期に引き継がれ、生涯の健康リスクも高めることが懸念される。ただし、食料不安とファストフード摂取量の関連はほとんど研究されていない。

さまざまな所得水準の68カ国で調査

この研究は、Global School Health Survey(GSHS)に公開されているデータを用いて実施された。GSHSは、世界保健機関(WHO)と米国疾病対策センター(CDC)などが中心となり、非感染性疾患のリスク因子と保護因子を評価・定量化するために開発されたデータベース。そのデータベースから、68カ国の12〜15歳の青年、18万164人(年齢13.8±1.0歳、50.8%が男子)のデータを解析した。

68カ国の所得レベルの分布は以下のとおり。低所得国5カ国(1万2,462人)、低中所得国27カ国(6万7,333人)、高中所得国20カ国(7万2,861人)、高所得国14カ国(2万7,508人)。

食料不安とファストフードの消費傾向の把握方法

この研究では、「過去30日間、家に十分な食料がなかったために、どのくらいの頻度で空腹になったか?」という質問によって評価した。回答の選択肢は、「まったくない」、「まれに」、「時々」、「ほとんどの場合」、「常に」とし、後二者が選択された場合に、食料不安があると判定した。

ファストフードの消費傾向は、「過去7日間に、ファストフード店の食べ物を何日間食べたか?」という質問で評価した。過去7日間に少なくとも1日、ファストフードを摂取していた場合に、ファストフード消費者に該当すると判定した。

調査対象の半数が、週に1回以上、ファストフードを消費

ファストフードの消費者は全体の50.1%であることがわかった。また、食料不安に関しては、「時々」が24.5%、「ほとんどの場合」が3.5%、「常に」は2.7%だった。食料不安のある人の割合は、カタール85.9%、パキスタン21.0%、アフガニスタン17.1%、ベトナム0.9%など、幅広い範囲に分布していたが、低所得国でとくに高かった。

食糧不安が強いほどファストフード消費者が多い

食料不安のレベルとファストフード消費者の割合に有意な関連が認められた。

性別、年齢、BMIの影響を調整した多変量ロジスティック回帰分析により、食料不安がない場合に比較して、空腹が「ほとんどの場合」ではOR1.25(95%CI;1.09〜1.44)、「常に」ではOR1.31(95%CI;1.11〜1.54)と、ファストフード消費者に該当する確率が有意に高かった。なお、性別の交互作用は有意でなかった。

食糧不安のレベルの「ほとんどの場合」と「常に」を合計しファストフード消費との関連を全68カ国で検討すると、OR1.17(95%CI;1.08〜1.26)とやはり有意であり、中等度の不均一性が存在した(I2=50.2%)。

国民所得別にみると、低所得国はOR1.30(95%CI;1.05〜1.60)、低中所得国はOR1.15(95%CI;1.02〜1.29)、高中所得国はOR1.26(95%CI;1.07〜1.49)と有意である一方、高所得国ではOR1.04(95%CI;0.88〜1.23)であり、有意性は認められなかった。

食料不安によるファストフードの消費が親から子へ引き継がれる可能性

以上より著者らは、「あらゆる経済レベルの国々を代表する68カ国の青年を対象とする大規模調査の結果、高所得国以外では食料不安がファストフードの利用の多さと関連していた。食料不安とファストフード摂取の同時発生は公衆衛生上の重要な問題であり、この解決にはフードバンクの実施や無料の学校給食などの政策を推進する必要性が想定される。ただし、それらの政策が低所得国において実現可能であり実効性があるかを、今後の研究で検証する必要もある」と結論をまとめている。

なお、食料不安が未成年のファストフード消費の多さと関連する理由については、既報を基とする考察から、三つのポイントを指摘している。第一に、食料不安のある家庭はよりエネルギー密度の高い食品を選ぶ傾向があること、第二に、未成年が食料不安である世帯は、親が子ども時代に食料不安であったことが多くファストフードを頻繁に消費しており、その習慣が子どもに引き継がれていること、第三に、食料不安のある人々はメンタルヘルス状態が良くないことがあり、その状態が高カロリー食品への渇望を高めている可能性があるとしている。

この考察に基づき著者らは、「ファストフードの健康への悪影響に関する情報を、とくに食料不安のある世帯に伝えていくことが重要と考えられる」と付言している。

文献情報

原題のタイトルは、「Food insecurity (hunger) and fast-food consumption among 180,164 adolescents aged 12-15 years from 68 countries」。〔Br J Nutr. 2021 Apr 5;1-23〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

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