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80歳以上の高齢者の半数以上がタンパク質不足、その有病率と修正可能な因子は?

80歳以上の高齢者の半数以上は推奨されるタンパク質摂取量を満たしていないことが報告された。また、口渇や疼痛に介入することが、その是正につながる可能性も明らかになった。デンマークの都市部住民を対象とする横断研究の結果だ。

80歳以上の高齢者の半数以上がタンパク質不足、その有病率と修正可能な因子は?

80歳以上の人口が世界的に増加している

日本では高齢者人口の割合が増え、社会にさまざまな影響が生じ、多くの制度や慣習に変化が求められている。しかしそれは日本だけのことでない。世界で最も急速に増加している年齢層は、80歳以上の高齢者層だ。

80歳以上の年齢層の主要な健康リスク因子の一つとして、栄養不良が挙げられる。とくにタンパク質摂取量が少ないことは、除脂肪体重の減少の加速、身体活動量低下につながり、フレイルの増加と関連している。

欧州臨床栄養代謝学会(European Society for Clinical Nutrition and Metabolism;ESPEN)のガイドラインでは、高齢者のタンパク質摂取量として1.0g/kg/日を推奨するとしている。65歳以上の高齢者全体では、この推奨を満たしていない人の割合が、女性23%、男性27%との報告があるが、より高齢でハイリスクと考えられる80歳以上の人口におけるタンパク質摂取不足の実態は明らかになっていない。本研究の著者らは、それを明らかにするとともに、タンパク質摂取不足に対し修正可能な因子の特定を試みた。

80歳以上の地域住民126人を対象とする横断研究

研究の対象は、デンマークのオーデンス(人口規模で同国第3位の都市)の80歳以上の住民で、介護サービス利用者や認知機能の低下が認められる人を除いた366人。このうち、食事や身体活動量などに関する調査を完了した126人を対象にデータ解析が行われた。

解析対象者の年齢は86±3.6歳で、63.5%が女性であり、68.8%が独居だった。タンパク質摂取量は0.99±0.28g/kg/日で、摂取エネルギー量は27±8kcal/kg/日、BMI26.4±4.1であり、10.3%は前月に意図しない体重減少があったと回答した。

加速度計による身体活動量は1,949.9±582.5CPM(Counts Per Minutes)で、起床時間の64.9%を座位行動で過ごしており、11.9%に嚥下障害のリスクがみられ、診断が確定している疾患数は3.5±2.1だった。

過半数がタンパク質摂取不足

前述のESPENのガイドラインに従いタンパク質摂取量1.0g/kg/日未満をタンパク質摂取不足と定義すると、その該当者率は54%だった。また対象の50.8%は、総摂取エネルギー量に占めるタンパク質の割合が15%未満だった。

タンパク質摂取量が推奨を満たしている群と満たしていない群の比較

タンパク質摂取量がガイドラインの推奨である1.0g/kg/日を満たしている58名と、満たしていない68名とで比較すると、以下のような違いが認められた。

まず、タンパク質摂取量は、推奨を満たしている群が1.2g/kg/日、79.3g/日、摂取エネルギー比16.2%に対し、推奨を満たしていない群は0.79g/kg/日、58.0g/日、摂取エルギー比14.4%だった。推奨を満たしていない群は、朝食・昼食・夕食からのタンパク質摂取量が少なく、一方で間食からの摂取量は群間差がなかった。

このほか、推奨を満たしていない群は高齢で(85.2 vs 86.6歳)、身体機能(Short Physical Performance Battery;SPPB)が低下していた(11 vs 10)。

他方、BMIは推奨を満たしていない群のほうが高かった(25.1 vs 27.1)。

性別の分布や独居者の割合、診断された疾患の数、意図しない体重減少、身体活動量、座位時間については、群間差がなかった。

食事パターンとタンパク質摂取量の関係

タンパク質摂取推奨量を満たしていない群は、食事ごと、および日ごとの、タンパク質摂取量の変動が大きいことがわかった。一方、摂取エネルギー量の変動性は、群間差がなかった。

ロジスティック回帰分析で、年齢、性別、BMI、疾患数を調整すると、日ごとのタンパク質摂取量の変動が大きいことが、タンパク質摂取量が少ないことに有意に関連している因子として抽出され(OR2.50,95%CI;1.14~5.48,p=0.02)、食事ごとの変動はわずかに有意でなかった(OR1.02,0.99~1.04,p=0.05)。

タンパク質摂取量の低下の修正可能な危険因子は?

タンパク質摂取推奨量を満たしていない群は、満たしている群に比較して、吐き気(1.7 vs 11.8%)、下痢(3.4 vs 14.7%)、口渇(27.6 vs 52.9%)などの有訴者率が有意に高かった。また、食欲が低く(SNAQ〈Simplified Nutritional Appetite Questionnaire〉が14点以下の割合が3.4 vs 10.3%) 、疼痛の有訴者率が高い傾向があった(29.3 vs 39.7%)。

他方、嚥下障害の有病率や歯の状態には、群間差がなかった。

交絡因子で調整後、タンパク質摂取量が推奨を満たしていないことに有意に関連する因子として、食欲不振(OR3.06,95%CI;1.23~7.63,p=0.02)、口渇(OR3.41,95%CI;1.51~7.70,p=0.003)、および、疼痛(OR1.54,95%CI;1.00~2.36,p=0.05)という三つの因子が抽出された。

著者は、「この三つの因子に介入し改善することで、タンパク質摂取量が増加し、高齢者のフレイル等の健康障害を予防し得る可能性がある」とまとめ、「その効果を検証するための前向き研究が求められる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Prevalence of low protein intake in 80+ year-old community-dwelling adults and association with dietary patterns and modifiable risk factors– a cross-sectional study」。〔Br J Nutr. 2021 Mar 8;1-29〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

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