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週に150分の運動が片頭痛の引き金を抑制する可能性 米国神経学会での報告

2021年04月12日

片頭痛発作のトリガー(引き金)を、運動習慣によって抑制できる可能性を示唆する研究報告が米国神経学会で発表されるとともに、同学会のサイトにニュースリリースが掲載された。ただ、その一方で、片頭痛のある人の3分の2以上は、十分な運動習慣がないこともわかった。

週に150分の運動が片頭痛の引き金を抑制する可能性 米国神経学会での報告

研究の背景と対象者の特性

これまでの報告から、運動が一部の片頭痛患者の発作予防になり得ることがされているが、どの程度の運動量が適切なのかや、運動が発作を抑制するメカニズムは明らかになっていない。この研究は、ワシントン大学の頭痛診療の三次医療施設で片頭痛と診断された患者の運動量を定量化する目的で行われた。

研究対象は4,879名で、すべて同院に紹介受診した患者。詳細な患者アンケートにより、1週間あたりの運動量、頭痛の特徴、睡眠、うつ、不安、ストレスレベルについて評価した。なお、ストレスやうつ病、睡眠障害などは、片頭痛発作のトリガーであることが知られている。

頭痛のタイプは、対象の約4分の3にあたる74.7%(3,644名)が、月に15以上の頭痛発作が現れる「慢性頭痛」で、他の約4分の1にあたる25.3%(1,235名)は、発作頻度が月に14回以下だった。

運動関連のアンケートには患者の95%(4,647名)が回答した。世界保健機関(World Health Organization;WHO)が一般成人に推奨している、週あたり150分以上の中強度~高強度の運動(ジョギング、早歩き、スポーツ、大掃除、サイクリングなど)を行っていたのは、対象の約4人に1人、27%(1,270人)にとどまった。

運動習慣の有無で片頭痛発作のトリガーの保有率が異なる

WHOの推奨量を満たす運動を行っていた群と、そうでない群を比較すると、前者のほうがうつや不安のレベルが高い人の割合や、睡眠障害の有病率が低かった。

具体的には、中強度~高強度の週あたりの運動時間に基づいて参加者を、その運動をほとんどしていなかった群、1~30分していた群、31~90分の群、91~150分の群、150分以上の群の5群に分類。150分以上運動している群に比較し、他の4群は、うつや不安レベルが高く、睡眠障害の有病率が高かった。

より詳しくみると、うつに関しては、運動をほとんどしていなかった群(806名)の47%(377名)がうつレベルが高いと判定され、反対に最も運動していた群(1,270名)でうつレベルが高いと判定されたのは25%(318名)だった。

次に不安に関しては、運動をほとんどしていなかった群の39%が不安レベルが高いと判定され、反対に最も運動していた群で不安レベルが高いと判定されたのは28%だった。

睡眠障害の有病率は、運動をほとんどしていなかった群の77%、最も運動していた群の61%だった。

運動習慣の有無で片頭痛の発作頻度も異なる

さらに、発作のトリガーにとどまらず、頭痛発作の頻度も運動習慣の有無で差異が認められた。運動をほとんどしない群では、月あたりの発作頻度が0~4日と少ない人は5%にとどまる一方で、月あたりの発作頻度が25日以上と多い人が48%存在した。

反対に最も運動していた群では、月あたりの発作頻度が0~4日の人は10%であるのに対し、月あたりの発作頻度が25日以上の人は28%にとどまっていた。

本研究は観察研究であるため、因果関係に言及することはできない。この研究の発表者は学会のニュースリリースの中で、想定されるメカニズムについて、「運動はエンドルフィンと呼ばれる自然な鎮痛剤を放出し、人々がよりよく眠れるようにし、ストレスを軽減する」と解説したうえで、「定期的な運動は、一部の片頭痛の頻度と強度を減らす効果的な方法かもしれない」との考察を述べている。

また研究者らは、片頭痛患者のなかで十分な運動習慣のある人の割合が少なかったことに関連し、「片頭痛のある人が運動していない場合、これらの利点を享受できていない可能性がある。片頭痛には新規の治療法が開発されつつあるが、それらは非常に高価だ。片頭痛のある人にとって、片頭痛に伴うことが多い、うつや不安、睡眠障害といった、いくつかの問題をコントロールする安全で低コストな方法が、運動である可能性がある」と述べている。

プレスリリース

DO PEOPLE WITH MIGRAINE GET ENOUGH EXERCISE?(米国神経学会)

文献情報

原題のタイトルは、「Exercised Brain in Pain: Quantification of Exercise in Migraine Patients Seen at a Large Tertiary Headache Center」。〔American Academy of Neurology 73rd Annual Meeting.February 23, 2021〕
原文はこちら(American Academy of Neurology)

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