自宅周辺の外食環境が子どものウエストサイズと有意に相関する
自宅周辺の外食環境と子どもの食事摂取量や健康レベル、BMI、ウエスト周囲長などとの関連を調べた研究結果が、米国から報告された。外食の環境が良いと判定された地域の子どもは、そうでない地域の子どもに比較して、ウエスト周囲長が有意に細いことがわかったという。
米国の2つの地域で調査
外食産業は世界的に盛んで、子どもが外食をする機会も増えている。外食は一般的にエネルギー密度が高く、栄養価が低いことが多くて健康的とは言えない。また、自宅周辺に外食店が多いほど、子どものころから外食に慣れ親しむことになりやすく、健康面に悪影響が及ぶことが懸念される。とは言っても、地域の外食環境と子どもの健康レベルとの関係を調査した研究はほとんどない。
今回報告された研究は、米国ワシントン州キング郡とカリフォルニア州サンディエゴ郡の6~12歳の小児を対象として、肥満と関連する環境因子を縦断的に調査したコホート研究「Neighborhood Impact on Kids(NIK)」研究のベースラインデータ(2007~09年に登録)を用いた横断研究として実施された。
研究参加基準は、中等強度の身体活動の実行に支障がなく、摂食障害の既往や医学的に処方された食事療法の必要性がないこと。なお、身長と体重が年齢・性別カテゴリーの10パーセンタイル未満の小児は除外された。また、1世帯につき参加できる子どもを1人に限った。
外食環境は3つの指標で評価
外食の環境は、(1)自宅から1km以内の外食店の数、(2)栄養環境調査の指標である「Nutrition Environment Measures Survey in Restaurants;NEMS-R」による評価、および、(3)NEMS-Rを基に、子どもの外食店訪問頻度(親からの聞き取りで把握)した過重NEMS-Rという3つの指標で評価した。
統計解析では、対象者をこれら3つの指標に基づき三分位に群分けし、以下の健康関連指標との関連を検討した。なお、NEMS-Rは数値が高い群ほど(第1分位群、第2分位群、第3分位群の順に)、良好な外食環境であることを表す。
健康関連指標は、摂取エネルギー量、HEIスコア、BMI、ウエスト周囲長などを評価
子どもの健康レベルは、摂取エネルギー量、BMI、ウエスト周囲長のほかに、「Healthy Eating Index(HEI)-2010」スコアを指標として用いた。
HEIは米国の食事ガイドラインの遵守状況を評価する指標で、疫学的研究に頻用されている。なお、摂取エネルギー量や摂取している食品は、訓練されたスタッフにより、無作為に3回実施された24時間思い出し法により把握した。
外食環境の最も良好な地域の子どもはウエスト周囲長が有意に細い
解析対象世帯数(子どもの人数)は733世帯(人)で、子どもは平均約9歳であり、8割以上は白人だった。なお、自宅周辺に存在する外食店のNEMS-Rデータの有無等によって統計解析対象世帯数が異なり、(1)の外食店の数での解析対象は392人、(2)のNEMS-Rを利用した解析対象は302人、加重NEMS-Rでの解析対象は317人。
研究デザインの解説が長くなったが、それでは結果をみていこう。まずは、自宅周辺の外食店の店舗数と、子どもの健康関連指標の関連について。
外食店の店舗数は子どもの健康レベルと関連なし
自宅周辺の外食店の店舗数で三分位に分けて、子どもの摂取エネルギー量、HEIスコア、BMI、ウエスト周囲長との関連を検討した結果、有意な関連はみられなかった。子どもの性別、年齢、親の教育歴やBMI等で調整しても、この結果は変わらなかった。
NEMS-Rの第1三分位群はHEIスコアが最も高く他群と有意差
次に、NEMS-Rで三分位に分けた場合、子どもの摂取エネルギー量、BMI、ウエスト周囲長との有意な関連は認められず、前記の因子で調整後も結果は同様だった。
ただし、HEIスコアに関しては、第1三分位群、第3三分位群、第2三分位群の順に高値であり、第1三分位群と第2三分位群に有意な群間差が認められた。つまり、自宅周辺の外食環境が最も悪い地域の子どものふだんの食事スタイルが、最も良いと判定された。
この結果について著者らは、「予想外の結果である。第1三分位群と第3三分位群の間に有意な関連がなく、生物学的にも妥当性がないことから、真の関連ではないと考えられる」と考察している。
加重NEMS-Rの第3三分位群はウエスト周囲長が有意に細い
最後に、加重NEMS-Rで三分位に分けた場合、子どもの摂取エネルギー量、HEIスコア、BMIとの有意な関連は認められず、これらの指標に関しては、前記の因子で調整後も結果は同様だった。
ところが、ウエスト周囲長に関しては、有意な群間差が認められた。前記の因子で調整後、加重NEMS-Rの第1三分位群(外食環境が最も悪い群)の地域の子どものウエスト周囲長は65.5cm(95%CI;64.0~67.1)、第2三分位群は62.8cm(95%CI;61.0~64.6)であり、外食環境が最も良い第3三分位群は62.7cm(95%CI;61.1~64.3)であり、第1三分位群と第3三分位群の群間差は有意だった。
この結果を基に著者らは、子どものウエスト周囲長が外食環境の良さを評価する有望な指標である可能性があると述べている。
一方、本研究の限界点としては、子どもたちの外食頻度自体がそれほど高くはなかったこと、および、NEMS-Rの臨床的に意味のあるカットオフ値が確立されておらず、本解析でも第3三分位群の範囲が広く解釈の妨げとなったことなどを挙げている。そのうえで今後の研究では、より頻繁に外食をするコミュニティーでの調査を行い、健康関連指標に影響を及ぼす可能性のある学校環境などについても解析を加える必要があると指摘している。
文献情報
原題のタイトルは、「Examining the consumer restaurant environment and dietary intake in children」。〔Prev Med Rep. 2020 Dec 2;20:101274〕
原文はこちら(Elsevier)