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タンパク質をいつ摂るかにより心血管代謝因子への影響が異なる 米国民健康栄養調査の解析

米国の国民健康栄養調査のデータを解析した研究から、タンパク質を1日のどのタイミングで摂るかによって、血圧や血清脂質、インスリン抵抗性などへの影響が変化することが明らかになった。朝食時のタンパク質摂取量が多いことは心血管代謝リスクを下げ、夕食時のタンパク質摂取量が多いことはリスクを上げるとの解釈が可能な結果だ。

タンパク質をいつ摂るかにより心血管代謝因子への影響が異なる 米国民健康栄養調査の解析

タンパク質の摂取タイミングを変えると、心血管代謝マーカーが改善する?

体重あたりのタンパク質摂取量(g/kg)はウエスト周囲長と逆相関し、HDL-コレステロール(HDL-C)と正相関することが報告されている。つまりタンパク質摂取量が多いほど血圧が低く、善玉コレステロールは高いということで、心血管代謝リスクは低いことと関連している。

しかし、多くの人は夕食時に大量のタンパク質を摂取し、それ以外の食事では少ない。米国では夕食時にタンパク質を平均約35g摂取するのに対し、朝食では約15g、昼食では23g、軽食(三食以外の食事)として10g摂取している。これらのばらつきを変化させ、各食事の機会に摂取するタンパク質量を最適化することで、前述のタンパク質の摂取量が多いことによる心血管代謝リスクへのメリットを、より向上させられることも考えられる。

ただし、食事の機会ごとのタンパク質摂取量と心血管代謝マーカーと関連は、一般住民では検討されていない。そこで本論文の著者らは、米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey;NHANES)のデータを用いてこの関連を検討した。

解析対象は、2013~16年のNHANES参加者のうち19歳以上の1万112人。評価項目は、食事調査から把握した食事ごとのタンパク質摂取量と、BMI、ウエスト周囲長、収縮期/拡張期血圧、中性脂肪、総コレステロール、LDL-C、HDL-C、血糖値、インスリン値、インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)、およびフラミンガムリスクスコア(cardiovascular disease score;CVDスコア)。

各食事のタンパク質摂取量との関連性の相違

タンパク質の摂取量を十分位に群分けすると、朝食は第1十分位群(摂取量の少ない下位10分の1)は5.9±0.1g/日、第10十分位群(摂取量の多い上位10分の1)は22.6±0.3g/日だった。同様の順に、昼食では14.0±0.1、34.6±0.4g/日、夕食では24.3±0.3、46.8±0.2g/日であり、軽食は4.9±0.1、16.5±0.2g/日だった。

既報と同様にタンパク質摂取量は、夕食、昼食、朝食、軽食の順に多かった。また第1十分位群と第10十分位群のタンパク質量を比較すると、朝食は3.9倍の差があり、昼食は2.5倍、夕食は1.9倍、軽食は3.4倍の開きがあった。

タンパク質摂取量と心血管代謝マーカーの関連は、交絡因子(モデル1として、年齢、性別、人種/民族、身体活動量、所得、総摂取エネルギー量、総タンパク質摂取量。モデル2として、モデル1に加え、炭水化物摂取量、脂質摂取量、BMI)を統計的に調整した。

朝食でのタンパク質摂取量と心血管代謝マーカーとの関連

血圧との関連:
朝食時のタンパク質摂取量は、血圧と逆相関していた。具体的には、1分位ごとにモデル1で拡張期血圧が-0.39±0.10mmHg(p=0.0003)、モデル2で-0.29±0.08mmHg(p=0.0006)低下し、収縮期血圧はモデル1で-0.40±0.13mmHg(p=0.0038)、モデル2で-0.33±0.10mmHg(p=0.0032)低下していた。

線形回帰分析でもモデル1で拡張期血圧がβ=-0.14±0.05mmHg(p=0.0056)と有意に逆相関していた。ただし線形回帰分析では、モデル2での拡張期血圧、およびモデル1・2での収縮期血圧との関連は有意でなかった。

血清脂質との関連:
朝食時のタンパク質摂取量は、HDL-Cと正相関していた。具体的には、1分位ごとにモデル1でHDL-Cが0.75±0.16mg/dL(p=0.0001)、モデル2で0.51±0.17mg/dL(p=0.0044)増加していた。HDL-Cは線形回帰分析でも、モデル1でβ=0.40±0.07mg/dL(p<0.0001)、モデル2でβ=0.22±0.08mg/dL(p=0.0062)と有意に正相関していた。

また、LDL-Cとは、1分位ごとにモデル1で-0.75±0.30mg/dL(p=0.019)低下し、モデルでは-0.79±0.33mg/dL(p=0.0239)低下していた。ただし線形回帰分析では有意な関連は認められなかった。

糖代謝との関連:
朝食時のタンパク質摂取量とHOMA-IRは、モデル1では有意な関連がなかったものの、モデル2では1分位ごとに-0.08±0.03(p=0.016)、線形回帰分析でもβ=-0.09±0.03(p=0.0041)と有意に逆相関していた。

またインスリン値とは、線形回帰分析においてモデル1でβ=-0.23±0.07uU/mL(p<0.0037)、モデル2でβ=0.23±0.05uU/mL(p=0.0001)と有意に逆相関していた。

その他のマーカーとの関連:
朝食でのタンパク質摂取量と、CVDスコア、血糖値、HOMA-IR、総コレステロール、中性脂肪、ウエスト周囲長との有意な関連はみられなかった。

また、BMIとはモデル1では有意な関連がなかったものの、モデル2において1分位ごとに-0.10±0.05(p=0.049)低下し、線形回帰分析ではβ=-0.06±0.02(p=0.015)と、有意な逆相関が認められた。

昼食でのタンパク質摂取量と心血管代謝マーカーとの関連

昼食時のタンパク質摂取量と収縮期血圧は線形回帰分析の結果、モデル1でβ=0.24±0.09mmHg(p=0.013)、モデル2の線形回帰分析でβ=0.22±0.08mmHg(p=0.010)と有意に正相関していた。ただし拡張期血圧とは有意な関連がなかった。

また、昼食時のタンパク質摂取量と総コレステロールは、モデル1では有意な関連がなかったものの、モデル2の線形回帰分析でβ=0.53±0.19mg/dL(p=0.011)と有意に正相関していた。その他の心血管代謝マーカーと昼食でのタンパク質摂取量との間に、有意な関連は認められなかった。

夕食でのタンパク質摂取量と心血管代謝マーカーとの関連

糖代謝との関連:
夕食時のタンパク質摂取量は、HOMA-IRと正相関していた。具体的には、1分位ごとにモデル1で0.32±0.09(p=0.007)、モデル2で0.23±0.08(p=0.0078)上昇していた。線形回帰分析でもモデル1でβ=0.11±0.03(p=0.0023)、モデル2でβ=0.07±0.03(p=0.018)と有意な正相関が認められた。

同様に、夕食時のタンパク質摂取量はインスリン値と正相関しており、1分位ごとにモデル1で0.77±0.23uU/mL(p=0.0025)、モデル2で0.50±0.19uU/mL(p=0.013)上昇し、線形回帰分析ではモデル1でβ=0.27±0.09(p=0.0055)、モデル2ではβ=0.15±0.07(p=0.046)と有意だった。

その他のマーカーとの関連:
夕食でのタンパク質摂取量と、血圧、血糖値、HDL-C、LDL-C、総コレステロール、中性脂肪との有意な関連はみられなかった。

なお、BMIとはモデル1では有意な正相関が認められたものの、モデル2では非有意だった。またCVDリスクスコアとは、1分位ごとにモデル1で-0.002±0.001(p=0.041)低下していたが、線形回帰分析およびモデル2では非有意だった。ウエスト周囲長も同様に、モデル1では有意な正相関が認められたが、BMIで調整したモデル2では有意性が消失した。

軽食でのタンパク質摂取量と心血管代謝マーカーとの関連

血圧との関連:
軽食時のタンパク質摂取量は、血圧と逆相関していた。具体的には、1分位ごとにモデル1で拡張期血圧が-0.41±0.08mmHg(p<0.0001)、モデル2で-0.27±0.09mmHg(p=0.0042)低下し、収縮期血圧はモデル1で-0.39±0.14mmHg(p=0.0084)低下していた。

線形回帰分析でもモデル1で拡張期血圧がβ=-0.29±0.06(p=0.0001)、モデル2でβ=-0.19±0.06(p=0.0051)と有意に逆相関していた。ただし、収縮期血圧に関しては、モデル2では関連が有意でなかった。

血清脂質との関連:
軽食時のタンパク質摂取量とHDL-Cとの関連は、モデル1では非有意だった。しかしBMIで補正したモデル2では有意に正相関していた。具体的には、1分位ごとにモデル1でHDL-Cが0.68±0.20mg/dL(p=0.0023)上昇し、線形回帰分析でもβ=0.43±0.12mg/dL(p=0.0015)と有意に正相関していた。

その他のマーカーとの関連:
軽食でのタンパク質摂取量と、BMI、血糖値、HOMA-IR、インスリン、LDL-C、総コレステロール、中性脂肪、ウエスト周囲長との有意な関連はみられなかった。

健康アウトカムとの関連の検討が必要

以上の結果から重要性の高い関連を、以下の3点にまとめることができる。 まず、朝食時のタンパク質摂取量は、拡張期/収縮期血圧、HOMA-IR、およびインスリン値と逆相関し、HDL-Cと正相関する。次に、軽食時のタンパク質摂取量は、拡張期/収縮期血圧、およびCVDリスクスコアと逆相関する。これらは心血管保護的に働いている可能性がある。一方、夕食時のタンパク質摂取量は、HOMA-IRおよびインスリン値と正相関する。これは心血管疾患のリスクと関連する可能性がある。

著者は、「本研究により、タンパク質の摂取タイミングによって心血管代謝リスクへの影響が異なることが明らかになった。今後はこれらの相違が健康転帰に及ぼす影響を検討する必要がある」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Greater protein intake at breakfast or as snacks and less at dinner is associated with cardiometabolic health in adults」。〔Clin Nutr. 2021 Jan 23;S0261-5614(21)00028-5〕
原文はこちら(Elsevier)

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