順天堂大学女性スポーツ研究センターが、女性アスリートの運動参加前健康評価ツールを開発
女性アスリートの怪我や病気を予防し、健康な身体で運動に参加できるよう、Web上でセルフチェックできるツールが登場した。順天堂大学女性スポーツ研究センターが開設したもので、誰でも自由に利用できる。同研究センターでは、「シーズン前後に必ずPPEを利用して健康チェックしてほしい」と、積極的な利用を呼び掛けている。
PPE for female athletesとは
このたびオープンしたツールは、「PPE for female athletes(Pre-participation Physical Evaluation;女性アスリートの運動参加前健康評価)」と呼ばれ、女性アスリート・パラアスリートの健康と安全の維持を支援するため、研究エビデンスに基づき開発された、女性アスリートのためのオンラインの健康チェックツールである。
国内の女性アスリート・パラアスリートの競技力は年々向上している。その一方で、ハイレベルなパフォーマンスを求めるあまり、自身の健康を顧みずに頑張りすぎることで、健康を害している傾向もみられる。また、コーチングの現場においても、女性アスリート・パラアスリートの過去の病歴・受傷歴(メディカルヒストリー)や現在の健康状態を常に正確に把握することは困難であり、どの程度の練習を課すことが可能なのかはコーチの経験に委ねられているのが現状。つまり、女性アスリートの定期的かつ明確な健康評価と、それに基づく指針がない。その結果として、健康障害が発生するまで運動をし続けているケースが存在する。
42項目の質問に答えると、心臓や骨の健康、FATなどのリスクがその場でわかる
とくに女性アスリートが陥りやすい三つの障害「Female Athlete Triad;FAT」(利用可能エネルギー不足、視床下部性無月経、骨粗鬆症)の予防は早期発見が有効であり、兆候がみられたら、できるだけ早く医師の診察を受けることが重要。
公開されたツールは全部で42項目の質問が設定されており、それらに回答すると、FATのリスクのほか、心疾患リスク、骨・筋肉・腱の健康のリスク、脳振盪のリスク、その他の一般的疾患(呼吸器疾患やアレルギーなど)のリスクが、A(低リスク)~C(高リスク)の3段階で表示され、リスクに対してどのようなアクションを起こすべきかが示される。
同研究センターでは、2019~2020年度のスポーツ庁委託事業 女性アスリートの育成・支援プロジェクト「女性アスリートの戦略的強化に向けた調査研究」として、このシステムの開発に取り組んでいた。
まずは、メールアドレスの登録からスタート
利用にあたり、最初に氏名や出生年、メールアドレスなどを登録する。これをすませれば、自由に利用可能。
質問項目は、行っている自身の競技種目、運動の負荷量に対する主観的評価、トレーニングの頻度・時間、身長、体重、体格に対する自身の評価、欠食習慣の有無、疾患既往歴、受傷歴、月経頻度などで構成されている。最後に、「判定結果を見る」をクリックすると、前述のように、五つの項目に対するリスクが3段階で表示される。Cの高リスクとの判定では、医師の診察を受けるよう勧奨するメッセージがともに示される。
質問に対する回答は基本的に、選択肢の中から選んで回答するため、短時間でチェック可能。サインアウトしない限り、途中まで入力した情報が記録されているのも便利。また、過去の結果を見返すこともできる。自分は健康だと思っている人も、一度は試してみてほしい。健康に影響を及ぼすリスクの意外な盲点を見つけることができるかもしれない。
アスリートはシーズン前後に必ずチェック。スタッフも活用を
このようなシステムの必要性について同研究センターでは、「一般の人が1年に1回、健診を受けるのと同じように、アスリートには“アスリート専用の健康チェック”が必要。プレシーズに入る少なくとも6週間前にPPEを実施し、見つかった注意点について医師に相談し、必要なら治療にあてる時間を確保してほしい」と解説している。
また、「アスリートをサポートする指導者やサポートスタッフにとっても、国際的に活躍できる女性アスリート育成の推進につながる」としている。
関連情報
順天堂大学 女性スポーツ研究センター
PPE紹介ページ
PPE for female athletes