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精製穀物の摂取量と全死亡・心血管死リスクが相関 21カ国14万人を10年追跡した結果

2021年03月06日

21カ国の約14万人を10年近く追跡した研究から、精製穀物の摂取量が多い人ほど全死亡や心血管イベントなどのリスクが高いという有意な関連が明らかになった。ただし、データによると、全粒穀物や白米の接種量が多いからといって、これらのリスクが有意に高くなることはないようだ。

精製穀物の摂取量と全死亡・心血管死リスクが相関 21カ国14万人を10年追跡した結果

21カ国の14万人を10年間追跡して、穀物摂取量と健康リスクの関連を解析

この研究は、北米、南米、欧州、アフリカ、中東、南アジア、東南アジアおよび中国を含む21カ国で行われた、「前向き都市農村疫学調査(Prospective Urban Rural Epidemiology;PURE)」のデータを利用したコホート研究として行われた。PURE研究は、2003年1月から募集された都市および農村の一般住民14万8,858人を2019年7月まで追跡した、非常に大規模な疫学研究。

データ解析の対象はPURE研究参加者のうち、ベースライン時(研究参加登録時)に心血管疾患の既往が記録されていた人を除外した13万1,370人。平均年齢は50.1±9.9歳、男性41.6%。

ベースライン時の栄養摂取状況は、摂取エネルギー量が2,155±819kcal、精製穀物の摂取量(中央値)116g/日(四分位範囲46~226)、全粒穀物の摂取量35g/日(同2~143)、白米摂取量129g/日(同38~401)だった。本研究では、これらの摂取量と、追跡期間中に発生した全死亡および主要心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、脳卒中、心不全)で定義される複合エンドポイント発生率、および血清脂質、血圧との関係を検討した。

穀物の摂取量と各エンドポイント発生率の関係

追跡期間9.5年(中央値)における複合エンドポイント発生率は9.2%(1万2,668人)、全死亡は5.7%(7,821人)、主要心血管イベントは5.0%(6,898人)だった。また心血管死は2.0%(2,777人)、非心血管死は3.9%(5,406人)であり、心筋梗塞は2.2%(2,999人)、脳卒中は2.4%(3,227人)、心不全は0.5%(656人)に発生した。

精製穀物、全粒穀物、白米それぞれの摂取量と、エンドポイント発生リスクの解析にあたっては、結果に影響を与える可能性のある因子(年齢、性別のほか、喫煙・身体活動習慣、摂取エネルギー量、野菜・果物・乳製品・赤肉の摂取量、糖尿病、ウエスト/ヒップ比、所得、スタチン・降圧薬の使用など)で調整した。精製穀物、全粒穀物、白米の摂取量ごとのエンドポイント発生率との関係は以下のとおり。

精製穀物の摂取量とエンドポイント発生率

精製穀物の摂取量が最も少ない(50g/日未満)群を基準に、エンドポイント発生率を比較すると、精製穀物の摂取量が多いことと種々のイベントリスクが高いことの、有意な関連が明らかになった。有意性が示された項目をピックアップすると、そのハザード比(HR)は以下のとおり。

複合エンドポイント(全死亡および主要心血管イベント〈心血管死、非致死性心筋梗塞、脳卒中、心不全〉)発生リスクは、精製穀物摂取量50~150g/日未満でHR1.08(95%CI:1.01~1.15)、摂取量150~250g/日未満でHR1.12(1.03~1.21)、250~350g/日未満でHR1.18(1.06~1.30)、350g/日以上でHR1.29(1.16~1.43)、傾向性p<0.001。

全死亡リスクは、精製穀物摂取量350g/日以上でHR1.28(1.11~1.47)、傾向性p=0.003。

主要心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、脳卒中、心不全)リスクは、精製穀物摂取量50~150g/日未満でHR1.11(1.02~1.21)、150~250g/日未満でHR1.14(1.03~1.27)、250~350g/日未満でHR1.27(1.12~1.45)、350g/日以上でHR1.34(1.17~1.53)、傾向性p<0.001。

脳卒中リスクは、精製穀物摂取量250~350g/日未満でHR1.30(1.09~1.56)、350g/日以上でHR1.47(1.22~1.78)、傾向性p<0.001。

非心血管死リスクは、精製穀物摂取量350g/日以上でHR1.31(1.11~1.56)、傾向性p=0.003。

このほかに、精製穀物の摂取量が多いほど、収縮期/拡張期血圧が高いという関連が認められた。血清脂質については、穀物摂取量との関連は認められなかった。また、心血管死、心筋梗塞、心不全のリスクは、精製穀物摂取量との関連が有意でなかった。

全粒穀物、白米の摂取量とエンドポイント発生率

全粒穀物の摂取量と各種エンドポイントの発生率との間に有意性が認められた関係はなかった。

白米の摂取量との関連では、白米摂取量が50g/日未満の群に比し450g/日以上の群の非心血管死リスクがHR0.82(95%CI:0.69~0.98)と有意に低いという関連が認められた(傾向性p=0.05)以外、有意な関連が認められた項目はなかった。

血圧と血清脂質についても、全粒穀物や白米の摂取量との有意な関連は認められなかった。

精製穀物は健康リスクを高めるのに、白米はリスクを高めない理由は?

著者らは本研究を、「5大陸21カ国のデータが使用されており、1カ国で実施された研究よりも結果を一般化できる可能性が高い」としたうえで、「精製穀物の摂取量が多いほど、全死亡率と主要心血管イベントリスクが高く、全粒穀物または白米の摂取量と臨床転帰との間に有意な関連は観察されなかった。全粒穀物の摂取量を増やしながら、精製小麦製品の摂取量を減らすことを奨励すべき」とまとめている。

なお、精製穀物と白米とで観察された結果が異なることの理由については、「明らかでない」と述べつつ、「精製された小麦は均一かつ迅速に消化され血糖値を上昇させ、食物繊維がもつ健康上のメリットも失われる。その一方で、白米は精製小麦製品よりも血糖変動面でのメリットと全般的な栄養上のメリットの双方を兼ね備えている可能性がある」と考察している。また、「米を摂取する食文化では、非健康的な食品の摂取量が少ない可能性も考えられる」と付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Associations of cereal grains intake with cardiovascular disease and mortality across 21 countries in Prospective Urban and Rural Epidemiology study: prospective cohort study」。〔BMJ. 2021 Feb 3;372:m4948〕
原文はこちら(BMJ Publishing)

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