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トレーニングを行っている視覚障害アスリートの睡眠の質は、健常アスリートと同等

2021年01月07日

視覚障害者は睡眠障害の頻度が高いことが知られているが、視覚障害パラアスリートの睡眠の質は視覚障害のない(晴眼)アスリートと同レベルであることを示唆する研究結果が発表された。一方で、睡眠障害に関連する因子については、晴眼アスリートとの差異がみつかった。筑波大学の研究者らの報告で、「Sleep Medicine」に論文が掲載されるとともに、同大学のサイトにニュースリリースが掲載された。

トレーニングを行っている視覚障害アスリートの睡眠の質は、健常アスリートと同等

研究の概要:これまでほとんどわかっていなかった、視覚障害アスリートの睡眠

アスリートのパフォーマンスの維持に、適切な睡眠は不可欠。これまでに、アスリートの睡眠障害がパフォーマンスに及ぼす影響の研究は進められてきているが、パラアスリート、中でも視覚障害のあるアスリートの睡眠障害の実態と、それによる影響はほとんど解明されていない。

この研究では、パラリンピックの競技種目である、マラソン、ゴールボール、水泳、ブラインドサッカー、柔道の各競技団体に所属する視覚障害アスリート81名のデータから、睡眠障害の実態とその関連因子(生活習慣・競技活動・競技ストレッサー・メンタルヘルス)が検討された。その結果、視覚障害アスリートの約3割に睡眠障害がみられた。この頻度は晴眼アスリートとほぼ変わらない水準という。

一般に、視覚障害者は晴眼者に比べて睡眠障害が多いことが報告されている。しかし本研究から、日常的にスポーツ活動を行っている視覚障害アスリートの睡眠の質は、晴眼アスリートとほぼ変わらない可能性が示された。

また本研究からは、「午前7時台以降の起床」および「競技活動上の人間関係ストレッサー(ストレスを起こす要因)」が、睡眠障害に強く関連していることが明らかになった。この点は、これまでの晴眼アスリートでの研究で示されていた、「午前7時台以前の起床」「競技活動の意欲喪失ストレッサー」「メンタルヘルス」などの睡眠障害関連因子とは異なる傾向という。

研究の対象と手法、結果

この研究の対象は、パラリンピック種目(マラソン、ゴールボール、水泳、ブラインドサッカー、柔道)の各競技団体に所属する視覚障害アスリート99名。2017年10月~2018年10月に自記式質問紙調査を実施し、完全回答を得た81名(有効回答率81.8%)を解析対象とした。

対象者の平均年齢は32.5±12.0歳で、7割が男性。6割が日本代表選手で、視覚障害の程度(競技クラス)注1の内訳は、B1が4割、B2が3割、B3が3割。競技活動平均日数は5日/週だった。

注1 競技クラス:障害アスリートが競技する際、障害状況が競技成績に影響しないように、障害の程度をもとにクラス分けを行う。視覚障害は、B1(視力0.0025未満)、B2(視力0.0025~0.032まで、または視野直径10度未満)、B3(視力0.04~0.1まで、または視野直径10度以上40度未満)の3クラスに分かれている。

睡眠障害の頻度

睡眠障害注2の実態について検討した結果、32.1%(26名)が「睡眠障害あり」と判定された。これは日本代表の晴眼アスリートとほぼ変わらない水準(図1)。

注2 睡眠障害:「ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index;PSQI)日本語版」により測定した。睡眠の質、入眠時間、睡眠時間、睡眠効率、睡眠困難、眠剤の使用、日中覚醒困難の7因子で評価し、不眠症の最適カットオフ値である5.5点を基準に、5.5点未満を睡眠障害なし、5.5点以上を睡眠障害ありとした。

図1 視覚障害アスリートの睡眠障害の実態

視覚障害アスリートの睡眠障害の実態

(出典:筑波大学)

睡眠障害の関連因子

また睡眠障害の関連因子について、本研究グループが晴眼アスリートに関する研究で用いたものと同じ変数を用いて、属性(年齢、性別、BMI、視覚障害の発症時期、障害の程度に基づく競技クラス)を調整した多重ロジスティック回帰分析により検討した。なお、晴眼アスリートに関する研究で用いた変数とは、生活習慣(就寝時刻、起床時刻、飲酒、食事、アルバイト、消灯後の電子機器使用、競技活動(週あたりの練習時間、週あたりの朝練習〈午前9時以前〉と夜練習〈午後9時以降〉の頻度、競技ストレッサー注3、メンタルヘルス状態。

注3 競技ストレッサー:人間関係、競技成績、周囲からの評価、他者からの期待・プレッシャー、意欲喪失の5因子28項目で構成される「競技ストレッサー尺度」により測定した。得点が高いほどストレッサーが高いことを示す。

その結果、睡眠障害と強い関係がみられたのは、「起床時刻」と「競技活動上の人間関係ストレッサー」だった(図2)。

図2 視覚障害アスリートの睡眠障害のリスク要因

視覚障害アスリートの睡眠障害のリスク要因

(出典:筑波大学)

起床時刻が午前6時台の者と比べ午前7時台以降の者は「睡眠障害あり」の調整オッズ比(aOR)が5.50(95%CI:1.04~29.06,p<0.05)、競技活動上の人間関係ストレッサーが少ない者と比べ多い者では「睡眠障害あり」のaOR9.42(95%CI:1.50~59.23,p<0.05)となった。

つまり、視覚障害アスリートの睡眠障害には、午前7時台以降の遅めの起床と、「競技活動の友人の悩みやトラブルにかかわった」「競技活動で友人に裏切られた感じがした」「競技活動の友人や仲間から批判されたり誤解されたりした」などの競技活動上の人間関係ストレッサーが関連していることが明らかとなった。

晴眼アスリートに関するこれまでの研究からは、「午前7時台以前の起床」「競技活動の意欲喪失ストレッサー」「メンタルヘルス」などが睡眠障害に関連することが明らかにされている。今回の研究結果は、これらの傾向とは異なっており、視覚障害アスリートの睡眠コンディショニングのカギとなるポイントが示された。

今後の展開

視覚障害者は晴眼者よりも睡眠障害が多いとされている。しかし本研究から、視覚障害アスリートの睡眠障害の頻度は、晴眼アスリートとほぼ変わらないことが示唆された。日常的にスポーツ活動を実施することが睡眠の質に良い影響を及ぼしている可能性が考えられる。

一方で、睡眠障害の関連要因は晴眼アスリートの傾向とは異なり、競技活動上の人間関係ストレッサーや午前7時台以降の遅めの起床であることから、視覚障害アスリートの睡眠コンディショニングには、とくに競技活動に関わる人間関係ストレッサーの低減と起床時刻の調整を中心とした対策が望まれる。

なお、本研究はスポーツ庁による「スポーツ研究イノベーション拠点形成プロジェクト(SRIP)」委託事業の一環として実施された。

関連情報

視覚障がいアスリートの睡眠の質 〜起床時刻と人間関係ストレッサーが関係する〜(筑波大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Prevalence and risk factors of sleep disorders in visually impaired athletes」。〔Sleep Med. 2020 Nov 13;S1389-9457(20)30503-7〕
原文はこちら(Elsevier)

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