職業別に健康関連指標を比較した結果、2~3倍のリスク差が明らかに
7万人以上の労働者の生活習慣を職業別に比較した研究結果が報告された。職種によって喫煙率や座位行動などに大きな差があり、疾患罹患ハイリスクグループが明確に示された。スウェーデンの医療サービスデータを解析したもの。研究者らは、効果的な疾病予防対策は、ハイリスクの特定された職業グループに重点を置いて行うべきと提言している。
9種類の職業の10項目の健康関連指標を比較
この研究は、スウェーデンの企業従業員に対する医療サービス(Health Profile Institute;HPI)のデータに基づくコホート研究として行われた。HPIには、労働者の職業と各人の健康関連指標データが記録されている。
2014年1月~2019年11月のデータ(n=10万7,170)から、職業が不明のものと18歳未満および75歳以上のデータを除外し、7万2,855人(女性41%)のデータを解析対象とした。職業を国際標準職業分類(ISCO)に基づき9種類の主要グループと8種類のサブグループに分類するとともに、職能(スキル)で高/低に二分した。健康関連指標は、身体活動習慣、仕事での身体活動、余暇の座位時間、仕事での座位時間、心肺機能(Cardiorespiratory fitness;CRF)、肥満、高血圧、喫煙習慣などの10項目を評価した。
ブルーカラーとホワイトカラー、ハイスキルとロースキルでの比較
まず、全体を職業でブルーカラーとホワイトカラーに分けると、ブルーカラーは男性が女性より有意に多かった(すべてのブルーカラーの職業で84%、高スキルのブルーカラー労働者で92%、低スキルのブルーカラー労働者で74%)。ブルーカラーおよびホワイトカラーのいずれにおいても、ハイスキルの労働者はロースキルの労働者に比較し、BMIが低く、収縮期/拡張期血圧が低く、CRFが高かった(すべてp<0.001)
喫煙率は職業により7倍以上の差
健康関連指標のリスクは、仕事での身体活動と余暇時間の座位行動を除いて、全般的にホワイトカラーのハイスキル群で最も低く、ブルーカラーのロースキル群で高かった。
職業によって大きな差がみられた健康関連指標として、喫煙習慣(オッズ比〈OR〉が0.68~5.12に分布)、厳しい肉体労働(同0.55~45.74)、および仕事中の座位行動(0.04~1.86)が挙げられた。なお、これらのオッズ比は、管理職者(マネージャー職)を基準に比較している。
喫煙者率のオッズ比をより詳しくみると、オッズ比が最も低い職業は、科学および工学の専門職者でOR0.68(95%CI:0.54~0.86)、それに対し喫煙者率が最も高い職業は、単純作業でOR5.12(4.26~6.16)であり、約7.5倍の開きがある。
ロースキルのホワイトカラーとハイスキルのブルーワーカーは同レベル
ハイスキルのホワイトワーカーの健康リスクを基準に他群の健康リスクを比較すると、ロースキルのホワイトカラーの健康リスクはOR2.00(95%CI:1.88~2.13)であり、ちょうど2倍のリスクと判定された。また、ハイスキルのブルーワーカーはOR1.98(1.86~2.12)であり、ロースキルのホワイトカラーとほぼ同等のリスクと判定された。
ロースキルのブルーワーカーはOR2.32(2.17~2.48)で、最もハイリスクだった。
各健康指標と職業の関連
管理職者(マネージャー職)を基準に比較した健康リスクをより細かくみた結果は以下のとおり。
- 管理職と有意差がない職業
- 専門職の合計OR1.00、ヘルスケアの専門職OR1.02、その他(科学・工学、ヘルスケア、教育以外)の専門職OR1.03
- 管理職より健康リスクが低い職業
- 科学・工学の専門職OR0.78
- 管理職より健康リスクが高い職業
- 専門職者の補助OR1.96、カスタマーサービスOR1.96、販売業OR2.40、農林業OR1.62、建築・製造OR2.19、工場勤務・運輸OR2.52、単純作業OR2.65
職業と疾患罹患率の前向き研究が必要
本研究により、職業によって健康リスクが大きく異なることが明らかになった。全般的に高いスキルを必要とする職業は、ホワイトカラー、ブルーカラーいずれにおいても、健康リスクが低かった。しかしホワイトカラーよりはブルーカラー、ハイスキルよりはロースキルで健康リスクが高く、その差は2〜3倍に及んだ。
著者らは一連の結果について、「今後の健康介入の対象とすべき職業グループに関するガイダンスとなり得る結果だ。職業による労働安全衛生の格差と生活習慣の関連について、さらに明確なデータを得るために、健康リスク因子と慢性疾患罹患率を評価指標に含む、前向き縦断研究が求められる」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Lifestyle-associated health risk indicators across a wide range of occupational groups: a cross-sectional analysis in 72,855 workers」。〔BMC Public Health. 2020 Nov 4;20(1):1656〕
原文はこちら(Springer Nature)