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非健康的な食習慣 vs 肥満 死亡リスクへの影響の強さはどちらが強い?

健康的な食習慣と普通体重を維持することは、どちらも長寿のために推奨されている。では、BMIが高いことによる死亡リスクの上昇を、健康的な食習慣を遵守することで抑制できるだろうか? 反対に、非健康的な食習慣だが体重は適切という場合、死亡リスクへの影響はどうなるのだろうか? これらの疑問の答となるエビデンスは、意外にもこれまで十分示されていなかった。約8万人を地中海食の遵守状況とBMIとでクロス分類し最大20年以上追跡し、全死亡と心血管死のリスクを解析した研究結果が最近報告された。

非健康的な食習慣 vs 肥満 死亡リスクへの影響の強さはどちらが強い?

スウェーデンの二つのコホートを統合し、137万人年追跡

この研究は、スウェーデンで実施された二つのコホート研究の参加者を統合して解析された。一つは女性を対象としたマンモグラフィコホート。1987~1990年に開始され、1914~1948年生まれの女性9万303人を対象とし、食事と生活習慣に関するアンケートが行われ、対象の74%が回答していた。1997年に2回目のアンケート調査が、存命している対象者5万6,030人に対して行われていた。

もう一つは、男性を対象としたコホートで、1918~1952年に生まれた10万303人が、1997年に登録された。これら二つの研究登録者は、年齢分布、教育歴、過体重・肥満の有病率、喫煙者率の点で、スウェーデンの人口とよく一致していた。

BMIカテゴリー

BMIは、1997年と2008年に自己申告による体重と身長に基づき、20~25未満を正常、25~30未満を過体重、30以上を肥満と判定した。体重・身長のデータがない人、および、ベースラインでBMI20未満の人(女性2,354人と男性872人)は、過体重や肥満の影響を調べるという本研究の意図から外れ、また何らかの疾患による低体重が含まれている可能性があるため、解析対象から除外した。

最終的なデータセットには、7万9,003人(女性44%、男性56%)が含まれた。対象の46%が正常、44%が過体重、10%が肥満と判定された。過体重群や肥満群は、正常群に比較し教育歴が短く、糖尿病の有病率が高く、身体活動量が少ないという有意差が存在した。

地中海食遵守状況

地中海食の遵守状況は、修正地中海食スコア(modified Mediterranean-like diet;mMED)で評価した。スコアが6~8点を高遵守群、4~6点未満を中等度遵守群、4点未満を低遵守群とした。それぞれの該当者率は、44%、48%、8%で、mMEDが高い人は、教育歴が長く、身体活動量、エネルギー摂取量が多く、配偶者との同居率が高かった。

死亡リスクはBMI中央値を底値にJカーブ

137万2,266人年の追跡(最大21年、平均17.4年)中に、3万389人(38%)が死亡した(1,000人年あたり22人)。

死亡リスクに影響を与え得る因子(年齢、教育歴、婚姻状況、身体活動量、身長、摂取エネルギー量、喫煙習慣、チャールソン併存疾患指数、糖尿病)で調整後、全死亡(すべての原因による死亡)と心血管死のハザード比(HR)は、BMIとJカーブの関連がみられた。全死亡のリスクの最下点は、BMI中央値とほぼ一致する約26だった。これを超える場合、BMIが1 増えるに従い、全死亡のHRが1.022(95%CI:1.017~1.027)ずつ上昇していた。

地中海食を遵守していること(mMEDスコアが高いこと)は、全死亡および心血管死のリスクと逆相関していた。mMEDスコアが1高いごとに、全死亡のHRは0.860(95%CI:0.849~0.871)ずつ低下していた。

全死亡リスクが最も低いのは、mMEDスコアの高い過体重群

次に、BMIカテゴリーの「正常」「過体重」「肥満」と、地中海食の「高遵守(mMEDスコアが高値)」「中等度遵守(mMEDスコアが中間)」「低遵守(mMEDスコアが低値)」で全体を六つの群に分類し、BMI正常かつmMEDスコア高値の群を基準として、他群の死亡リスクを比較検討した。

全死亡のハザード比低下は、主に身体活動量によってもたらされる

全死亡リスクが最も低いのは、mMEDスコアが高く過体重の群だった(HR0.94,95%CI:0.90~0.98)。また、mMEDスコア高値群では肥満でも、死亡ハザード比は有意水準以下だった。一方、mMEDスコア低値群ではBMIが正常であっても、死亡ハザード比が有意に高かった。そして、BMIが正常でmMEDスコア低値の群は、肥満でmMEDスコア高値の群よりも有意に死亡リスクが高かった。

つまり、食習慣が健康的であれば肥満の悪影響を抑制できる可能性があり、反対に、BMIが低いだけでは食習慣が非健康的であることの悪影響を十分に抑制できない可能性が示された。

なお、多変量調整時に、死亡リスクの低下に最も強い影響を及ぼしたのは、身体活動量だった。

各群のハザード比は以下のとおり。

  • mMEDスコア高値、かつ、BMI正常:1.00(基準)
  • mMEDスコア高値、かつ、過体重:0.94(0.90~0.98)
  • mMEDスコア高値、かつ、肥満:1.03(0.96~1.11)
  • mMEDスコア中等度、かつ、BMI正常:1.38(1.32~1.43)
  • mMEDスコア中等度、かつ、過体重:1.20(1.15~1.25)
  • mMEDスコア中等度、かつ、肥満:1.32(1.25~1.39)
  • mMEDスコア低値、かつ、BMI正常:1.60(1.46~1.74)
  • mMEDスコア低値、かつ、過体重:1.36(1.26~1.48)
  • mMEDスコア低値、かつ、肥満:1.48(1.32~1.67)

心血管死との関係もほぼ同様

心血管死についても、全死亡とほほ同様の結果だった。

若干の相違点の一つは、心血管死リスクが最も低い群は、mMEDスコアが高くBMIが正常または過体重の群だった。また、mMEDスコアが高いことは心血管死リスクが低いことと関連していたが、肥満者ではmMEDが高スコアでも、有意なリスク上昇が認められた。

BMIが正常でmMED低値の群と、肥満でmMED高値の群とで比較し場合に、心血管死のリスクは有意差がみられなかった。

なお、全死亡、心血管死ともに、性別に解析した結果も、ほぼ同様だった。

心血管死の各群のハザード比は以下のとおり。

  • mMEDスコア高値、かつ、BMI正常:1.00(基準)
  • mMEDスコア高値、かつ、過体重:1.01(0.94~1.10)
  • mMEDスコア高値、かつ、肥満:1.29(1.16~1.44)
  • mMEDスコア中等度、かつ、BMI正常:1.47(1.36~1.58)
  • mMEDスコア中等度、かつ、過体重:1.35(1.25~1.45)
  • mMEDスコア中等度、かつ、肥満:1.61(1.46~1.76)
  • mMEDスコア低値、かつ、BMI正常:1.76(1.55~1.99)
  • mMEDスコア低値、かつ、過体重:1.53(1.35~1.75)
  • mMEDスコア低値、かつ、肥満:1.86(1.54~2.23)

この研究からわかること

以上の結果から、著者らは結論を以下のように述べている。

「この縦断的コホート研究の結果は、女性と男性の双方にとって、BMIと死亡率との関連を食習慣が変え得ることを示している。地中海式食習慣を遵守している肥満の人は、BMIが正常な人と比較して死亡リスクは増加していなかった。対照的に、BMIが正常であることは、非健康的な食習慣の影響を相殺していない。ただし、心血管死のリスクに関しては、健康的な食習慣であっても、肥満によるリスク上昇を完全には抑制できないようだ」。

文献情報

原題のタイトルは、「Combined associations of body mass index and adherence to a Mediterranean-like diet with all-cause and cardiovascular mortality: A cohort study」。〔PLoS Med. 2020 Sep 17;17(9):e1003331〕
原文はこちら(PLOS)

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