サッカー選手への栄養教育の効果 中国のエリート男子ユース選手での検討
サッカー選手は、長い試合時間中の激しい運動によるエネルギー消費を満たす食事摂取が必要。しかし、実際の選手のエネルギー摂取量は少ないことが多く、ビタミンやミネラルといった微量栄養素も不足していることが、複数の報告で示されている。これに対して、栄養バランス指標を用いた4週間の介入で、エリートユース選手の栄養摂取に一定の成果が認められたことが報告された。
中国のエリートサッカーアスリートに栄養指導介入
この研究には、30名の若い中国人サッカー選手(SP Being Yicheng BTV Sangao所属)が登録された。被験者は無作為に各群15名の2群に分けられ、1群はテキストを供給し、週に1回30分、4週間にわたる講義を行う「講義群」とし、別の1群はテキストを渡すのみの「非講義群」とした。講義群は年齢16.7±1.8歳で身長173.9±9.0cm、体重62.4±13.0kg、トレーニング歴5.6±2.7年、非講義グループは16.8±1.7歳、175.4±7.9cm、62.5±12.3kg、6.2±3.3年だった。
KAPモデル(Knowledge〈知識〉の習得でAttitude〈態度〉が変化しPractice〈習慣〉が変容するという理論)に基づく質問票によって、一般的栄養知識、スポーツ栄養知識、食事行動、食事態度などを、介入前後で評価した。また、実際に3日間にわたる食事調査も介入前後に行った。食事調査には、選手が選んだ食事を、間食や飲料も含めて、すべて計量する手法が用いられた。
栄養バランス指標(DBI-07)
栄養バランスは、「dietary balance index;DBI-07」という指標を用いて評価した。その評価は、中国のアスリートの食物摂取量、および若いサッカー選手のエネルギー摂取量を考慮して、1日のエネルギー摂取量が調整された。
調整後の推奨摂取量は、穀類が350~600g、野菜・果物が1,050~1,100g、牛乳500g、豆類50g、家畜・家禽肉100~365g、魚介類70~150g、卵50〜100g、食用油45~65g、塩10g、飲料1,000mL。
介入による微量栄養素の摂取量が増加
介入前の講義群と非講義群では、食事の質に関するスコアは同等で有意差はなかったが(p=1.000)、介入後はKAP食事アンケートスコアの、一般的な栄養知識(p<0.01)、スポーツ栄養知識(p<0.05)、および合計スコア(p<0.01)に有意差がみられ、講義群が有意に高かった。栄養態度や食事行動に有意差はなかった。
実際の食事状況を比較した結果、摂取エネルギー量および蛋白質、脂質、炭水化物の摂取量に、介入前後および群間での有意差は認められなかった。しかし、ビタミンA、C、カルシウム、および亜鉛の摂取量は、介入後に有意に増加していた。それらの群間差は非有意だった。
著者らは、本検討に栄養バランスの指標として「DBI-07」用いた背景を以下のように述べている。「従来、サッカー選手の食事栄養に関する研究は、主に単一の栄養素または生化学的指標の評価に基づいていた。これらの方法は容易ではあるが、栄養素間の相互作用を評価できず、食事パターンの評価も困難。これに対して栄養バランス評価指標は、食事の行動、状態、態度を統合的に把握できるという利点がある。DBIは、アスリートの食事の質と栄養教育を評価するための新しい効果的なツールであると考えられる」。
このような研究背景を述べたうえで、本検討の結果を、「若いサッカー選手への4週間の栄養教育によって、ビタミンA、ビタミンC、カルシウム、鉄、亜鉛の摂取量が増加した。また、栄養バランスの変化や間食、脂質摂取量の減少傾向がみられたことも心強い」とまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「Evaluation for the effects of nutritional education on Chinese elite male young soccer players: The application of adjusted dietary balance index (DBI)」。〔J Exerc Sci Fit. 2020 Jan;18(1):1-6〕
原文はこちら(Elsevier)