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子どもの運動能力を予測でき、介入も可能な因子は何? 前向きコホート研究の結果から

基礎的な運動能力は5歳までに発達すると言われるが、その発達を促す方法はあるのだろうか。また、運動能力の発達を予測できる因子はあるのだろうか。これらの疑問を明らかにするため、生後4カ月~5歳の乳幼児とその保護者を対象に、オーストラリアで行われた前向きコホート研究の結果を紹介する。

子どもの運動能力を予測でき、介入も可能な因子は何? 前向きコホート研究の結果から

生後4カ月から追跡を始め、5歳時点で運動能力を評価

子どもの運動能力の発達には、横断研究からは家庭環境が重要であることが示されているが、どのような環境が最も適しているのかはほとんど理解されていない。そこでこの研究のために著者らは、メルボルンで実施された「乳児の食事・身体活動・栄養トライアル(Infant Feeding, Activity and Nutrition Trial;InFANT)」のデータを用いた。

InFANTは、初産の親と生後4~19か月の乳児を対象に、2008~10年に行われた15カ月間の肥満予防介入試験。乳児の食事、身体活動、座位行動に関する親への教育・支援を目的とし介入し、子どもが3歳半および5歳時点で追跡調査が行われた。InFANTに参加したのは542組の親子で、このうち480組(89%)が介入を終了した。

母親の回答に基づく子どもの行動の評価項目

今回の研究では、InFANTの5時点(子どもが4カ月、9カ月、19カ月、3歳半)の母親の回答データを解析に利用した。評価項目は以下のとおり。

母親が子どもと過ごす時間、tummy time(うつ伏せ遊び)の時間、床を歩き回る時間、同じ年齢の子どもと過ごす時間、年長の子どもと過ごす時間、外で過ごす時間。以上は三分位に群分けして評価。

子どもの身体活動についての母親の知識、子どもの身体活動に対する母親の考え方、子どもの身体活動に対しての母親の楽観的な捉え方、身体活動に関する母親の自信、床遊びの安全性への母親の懸念。以上は0~3点のスコアで評価。

その他、母親自身の身体活動、家庭内にある身体活動に適した機器の数など。

子どもの運動能力の評価

子どもの運動能力は5歳時点に「粗大運動発達テスト 第2版(Test of Gross Motor Development-2nd Edition;TGMD-2)」を用いて評価した。TGMD-2は、移動運動として、走る、片足跳び、立ち幅跳びなどの6項目、操作運動として、ドリブル、キャッチ、キックなど6項目、合計12項目で評価する内容。

それぞれ2回実施し、経験の豊富な研究者が、正しくできたかそうでないかを判定した。

解析対象となった子どもと母親の特徴

解析対象の子どもは51.6%が男児、這い歩きを始めたのは8.2±1.7カ月、歩き始めたのは13±1.7カ月だった。

母親は年齢が32.4±4.1歳で、59.8%が学士(大学卒)以上の学歴をもち、83.2%がオーストラリア出身だった。

支持的な環境下で自由に移動できるようにすることが大切

それでは、子どもの5歳時点のTGMD-2の評価と、4カ月~3歳半の状況との関連をみてみる。

子どもの移動運動と関連する因子

まず、TGMD-2のうち移動運動の評価に目を向けると、有意な関連がみられた因子として、以下の項目が該当した。

4カ月時点:
子どもの身体活動に対する母親の楽観的な捉え方と正相関(β=2.43,95%CI:0.12~4.75)
9カ月時点:
  • 家庭内の身体活動機器の数と正相関(β=0.82,95%CI:0.05~1.59)
  • 母親の身体活動(分/週)と逆相関(β=−0.01,95%CI:-0.01~-0.00)
  • 子どもが外で過ごす時間(第1三分位群のスコアに対し):第2三分位群2.50(95%CI:0.39~4.62)、第3三分位群2.86(95%CI:0.47~5.26)
19カ月時点:
子どもが床を歩き回る時間(第1三分位群のスコアに対し):第3三分位群2.41(95%CI:0.02~4.80)
3歳半時点:
年長の子どもと過ごす時間(第1三分位群のスコアに対し):第2三分位群3.15(95%CI:0.72~5.59)、第3三分位群3.00(95%CI:0.09~5.91)

子どもの操作運動と関連する因子

続いて、TGMD-2のうち操作運動の評価に目を向けると、有意な関連がみられた因子として、以下の項目が該当した。

4カ月時点:
年長の子どもと過ごす時間(第1三分位群のスコアに対し):第3三分位群2.27(95%CI:0.21~4.33)
9カ月時点:
家庭内の身体活動機器の数と正相関(β=0.83,95%CI:0.16~1.51)
19カ月時点:
  • 子どもが床を歩き回る時間(第1三分位群のスコアに対し):第2三分位群2.55(95%CI:0.34~4.76)、第3三分位群2.47(95%CI:0.25~4.70)
  • 年長の子どもと過ごす時間(第1三分位群のスコアに対し):第2三分位群2.97(95%CI:0.28~5.66)
3歳半時点:
  • 子どもの身体活動についての母親の知識と逆相関(β=-3.05,95%CI:-5.91~-0.19)
  • 家庭内の身体活動機器の数と正相関(β=0.17,95%CI:0.06~0.28)

これらの結果をもとに著者らは、以下のような結論をまとめている。

家庭環境は子どもの運動能力に違いをもたらす可能性があり、身体活動を促すためのおもちゃ、設備を備えたスペースを確保し、子どもが自由に動き回れる時間を長くとり、年長の子どもと外で過ごさせることが、運動能力の発達につながる。また、本研究では、運動能力に影響を与える因子が、子どもの成長とともに変動することが明らかになった。今後、これらの要因をより詳細に調査することで、子どもたちがより確実に運動能力を身につけるための最善の方法を確立できる可能性がある。

文献情報

原題のタイトルは、「Modifiable factors which predict children's gross motor competence: a prospective cohort study」。〔Int J Behav Nutr Phys Act. 2019 Dec 11;16(1):129〕
原文はこちら(Springer Nature)

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