非健康的な食品の消費量を抑えるには? 小売店での販売方法への介入で効果あり
一般市民の健康的な食生活を推進するポピュレーションアプローチとして、小売店での食品の販売方法に介入し、その効果を確認するという実証実験が行われた。例えば、レジカウンターの横に飲食物を置かない、清涼飲料を冷蔵庫内に入れて冷やした状態にしておかないといった方法だ。これらの対策によって、実際に遊離糖(単糖類や二糖類)を用いた商品の販売量が有意に減少し、小売店のビジネスにも悪影響は生じなかったという。
オーストラリアの先住民コミュニティーで研究
この研究はオーストラリアの先住民(アボリジニ)のコミュニティーで行われた。アボリジニは植民地化政策の影響を受け、過剰栄養摂取に関連する疾患(2型糖尿病、心血管疾患、腎臓病など)の有病率が高いことで知られる。
アボリジニの居住区域に存在する小売店20店舗を、10店舗ずつ無作為に2群に分類。1群を介入群、他方を対照群とした。3カ月間にわたる研究期間中、対照群は通常の営業スタイルを継続。一方、介入群は、非健康的な食品の割引などのプロモーション活動を実施しない、食品や飲料に関する誤解を招く宣伝活動をしない、レジカウンターや通路などの手に取りやすい場所に非健康的な食品を配置しない、容量600mLを超える清涼飲料は冷蔵庫内に置かない、などの制限を設けた。
介入の効果は、遊離糖が用いられている検討対象商品(テーブルシュガー、加糖飲料、ビスケット、菓子)の販売量と、販売された全食品に占める遊離糖の割合で評価した。
遊離糖の販売量が有意に減少
遊離糖を使った飲食品販売量の変化
まず、遊離糖の販売量をみると、ベースラインにおいて飲食物の総販売量に占める遊離糖の割合は、対照群と介入群で同等だった(14.3±1.3g vs 14.7±1.2g/MJ)。しかし研究終了時点までの変化量を比較すると、介入群で有意に少なくなっていた(相対変化率-2.8%g/MJ,95%CI:-4.9~-0.7)。
飲食物を細分化してみると、飲料としての遊離糖の販売量は有意に減少していた(同-6.8%,-10.9~-2.6)。また菓子としての遊離糖の販売量も有意に減少していた(同-7・5%,-14.3~-0.2)。
一方、テーブルシュガー(-2.3%,-8.6~4.5)や、ビスケット(4.7%,-3.0~12.5)の変化量に統計的有意差はなかった。
介入によって販売量が最も大きく減少した商品は、清涼飲料だった(-13.4%,-18.7~-7.7)。
遊離糖を使った飲食品販売額の変化
次に介入の影響を販売額で検討すると、消費者の飲食品に対する総支出額は介入群で相対変化率3.3%(95%CI:-1.4~8.3)増加したが、統計的に非有意だった。
飲食物を細分化してみると、遊離糖を用いた飲食品はビスケット(相対変化率0.9,95CI:-5.8~7.9)を除いて、すべて支出額が有意に減少していた。例えば飲料は同-3.4%(-6.7~-0.1)、ショ糖は-4.9(-11.7~-1.3)、菓子は-2.2(-8.8~-4.8)だった。
介入によって販売額が最も大きく減少した商品は、清涼飲料だった(-5.7%,-10.0~-1.3)。
規制対象外の飲食品の販売量や販売額の変化
一方、規制の対象とならない飲食品の販売額の変化に目を向けると、飲料は10.9%(6.8~15.2)有意に増加していた。ただし食品については有意な変化はなかった(-1.0%,-3.3~1.4)。
これらの変化の結果として、小売店の食品および飲料製品からの粗利益は、統計的に有意に増加し(5.3%,0.3~10.5)、消費者の健康を優先した販売戦略による経営への悪影響は認められなかった。
以上のデータから著者らは、「不健康な食品や飲料を制限するマーケティング戦略は、公衆衛生とビジネスの双方にとってメリットとなる」と結論している。
文献情報
原題のタイトルは、「Effect of restricted retail merchandising of discretionary food and beverages on population diet: a pragmatic randomised controlled trial」。〔Lancet Planet Health. 2020 Oct;4(10):e463-e473〕
原文はこちら(Elsevier Inc)