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チョコレートをたくさん食べる人ほどやせている!? 米国の国民健康栄養調査から

2020年10月22日

チョコレートと聞くと「からだに悪い」とイメージされるのではないだろうか。実際には、ダークチョコレートを毎日食べると神経成長因子のレベルが上昇し認知機能が向上するという日本人対象の研究もあるなど、脳にとっては良い面がある。ただ、今回取り上げる論文は、'アタマ'の話ではなく'カラダ'の話だ。

チョコレートをたくさん食べる人ほどやせている!? 米国の国民健康栄養調査から

と言っても、「チョコレートは肥満を招くから控えるべき」という月並みな話題や、「チョコレートに含まれるフラボノイドは血管保護作用があり、心血管疾患を抑制する」という最近のトピックでもない。もっと端的な話で、チョコレートの摂取量がBMIやウエスト周囲長と逆相関する、つまり、チョコレートをたくさん食べている人ほどやせているという意外なデータを、「American Journal of Medicine」に掲載された論文から紹介したい。

5回にわたる米国国民健康栄養調査のデータを解析

2015~16年に、世界中で約730万トンのチョコレート菓子が消費され、その量はさらに増加している。なかでも米国では1人あたり年平均4.4kgのチョコレートを消費する。このように大量に消費される菓子は、身体的健康に対してどのような影響を及ぼすのか。

本論文の著者らは、米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey;NHANES)から、チョコレートの摂取量と肥満関連指標との関連を検討した。用いたデータは、2005-06年~2013-14年の5回にわたるNHANESの記録(日本の国民健康・栄養調査は毎年実施されているが、米国のNHANESは2年単位)。

20歳以上の成人計2万125人のチョコレートの摂取量、BMI、およびウエスト周囲長のデータが収集され、共変量データの欠落(3,677人)、糖尿病(2,518人)、低体重(304人)を除外し、1万3,626人のデータを最終解析に用いた。

チョコレートの摂取量は、24時間思い出し法を2回(3~10日間隔)実施して評価した。

BMIもウエスト周囲長も、チョコレートの摂取量と有意な逆相関

解析対象者の背景は、平均年齢46.5歳で、男性が47.8%だった。BMIカテゴリー別の該当者数は、普通体重(18.5~24.9)が3,996人(29.3%)、過体重(25.0~29.9)が4,744人(34.8%)、肥満(30以上)が4,886人(35.9%)だった。

BMIカテゴリー別の摂取エネルギー量、チョコレート摂取量

摂取エネルギー量は、普通体重群2,133.7±20.7kcal/日、過体重群2,145.7±15.5kcal/日、肥満群2,103.9±16.2kcal/日で、群間の関連は有意でなかった(p=0.262)。飲酒習慣のある人の割合は、同順に、41.2%、39.3%、29.9%で、BMIが低い群ほど飲酒者率が高いという有意な関係があった(p<0.001)。

そして、肝心のチョコレートだが、まず、チョコレートを摂取した人は、解析対象者数の11.1%にあたる1,332人だった。チョコレート摂取量をBMIカテゴリー別にみると、普通体重群94.3g/日、過体重群87.4/日、肥満群86.4/日となり、BMIが低い群ほどチョコレート摂取量が多かった。ただし、この粗摂取量では、BMIとの関連は有意でなかった(p=0.141)。

チョコレート摂取量とBMIの関連

次に、チョコレートを摂取しなかった人を基準にBMIを比較すると、チョコレートを摂取していた人のほうが、有意にBMIが低かった(-1.19,95%CI:-1.63~-0.74)。さらに、BMIに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、エネルギー摂取量、砂糖摂取量、喫煙・飲酒・身体活動習慣、世帯収入、人種、教育歴、併存疾患数など)で調整後もチョコレートを摂取していた人のほうが、有意にBMIが低かった(-0.92,95%CI:-1.32~-0.53)。

続いて、チョコレート摂取量を四分位に群分けし、チョコレートを摂取しなかった人を基準に、前記の因子で調整のうえBMIを比較すると、第1四分位群から第3四分位群は有意にBMI低値であり、チョコレート摂取量が多いほどBMIが低いという有意な関連が認められた(傾向性p=0.003)。

チョコレート摂取量とウエスト周囲長の関連

続いて、ウエスト周囲長についても上記と同様の解析を行った。

結果は同様であり、チョコレートを摂取しない人より摂取する人のほうがウエスト周囲長が小さく(-2.07cm,95%CI:―2.92~―1.22)、チョコレート摂取量が多いほどウエスト周囲長が小さいという有意な関連が認められた(傾向性p=0.001)。

結果のポイントと今後の課題

結論として著者らは、「米国成人の大規模なサンプルの解析で、チョコレート摂取を報告した人は報告しなかった人よりも、平均してBMIが0.92低く、ウエスト周囲長が2.07cm小さかった。さらにチョコレート摂取量が多いほどBMIとウエスト周囲長が小さくなることがわかった」と結論し、「重要な点は、これらの関連が摂取エネルギー量などの潜在的な交絡因子とは独立して認められたことだ」と述べている。

チョコレート摂取が良好な肥満関連指標と関連するメカニズムについては、文献的考察から以下のように推測している。まず、チョコレートの摂取量が多い人は食事からの脂質摂取量が少ない可能性がある。第二にチョコレートに含まれる砂糖が満腹感を満たし、総摂取エネルギー量を減らすように働くことが考えられる。ただしこの点については、本検討の共変量に摂取エネルギー量を採用しているため否定的。第三のメカニズムは、チョコレート中のフラボノイドの影響だ。

なお、著者らは、本研究が横断研究であり因果関係には言及できないこと、報告バイアスの可能性、チョコレート摂取量を2時点のみで評価していることを研究の限界点として挙げ、今後は縦断的または実験的デザインを使用し、チョコレート摂取量を長期的に把握して、因果関係の解明に迫る研究の必要性に触れている

文献情報

原題のタイトルは、「Chocolate Consumption and Indicators of Adiposity in US Adults」。〔Am J Med. 2020 Sep;133(9):1082-1087〕
原文はこちら(Elsevier)

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