1日に1,000歩多く歩くと死亡リスクが有意に低下 17件の報告のレビューで明らかに
1日の歩数を1,000歩増やすごとに、死亡リスクや心血管疾患リスクが有意に低下することが、過去70年間の論文のシステマティックレビューの結果として報告された。このメリットは、1日1万歩まで認められるという。
歩数は身体活動の最も簡便な指標であり、疾患発症リスク低下等の報告が多くなされている。今回紹介する研究では、Medline、Embase、CINAHL、Cochrane Libraryという文献データベースに収載されている最も古い報告から2019年8月1日までの報告を対象とするレビューが行われた。検索には、歩数に関連する用語と死亡率、心血管疾患(Cardiovascular disease: CVD)、および血糖異常(2型糖尿病、インスリン、血糖値、 HOMA、HbA1cなど)に関連する用語をキーワードとして用いた。適格基準は、毎日の歩数と死亡率またはCVD発症率(冠動脈性心疾患、虚血性心疾患、脳卒中、心不全、およびメタボリックシンドローム)、2型糖尿病の発症との関連を検討した英語で書かれている論文で、18歳以上を対象とした無作為化比較試験またはコホート研究とした。患者を対象とした研究は除外した。
解析対象となった研究は17件
1日の歩数の中央値は約6,000歩
検索の結果2,144件がヒットし、そのうち13件のコホート研究から17件の研究が適格と判断された。内訳は、全死亡との関連を検討したものが5件、CVDとの関連を検討したものが4件、血糖異常との関連を検討したものが8件。
対象者は米国、英国、オーストラリア、南アフリカ、中国、日本を含む、40カ国以上から研究に参加しており、サンプルサイズは47~1万6,741人、平均年齢は49.7~78.9歳で、追跡期間は3カ月~10年だった。
ベースラインにおける歩数は2,681~1万969歩で、中央値は約6,000歩だった。本検討では歩数とアウトカムの解析にあたり、すべて1日1,000歩あたりに換算して評価した。
歩数と全死亡の関係
全死亡との関連を検討した5件の研究は、サンプルサイズが201~1万6,741人(計2万1,118人)、追跡期間は4~10年(10万3,723人年)だった。
1件を除いてすべて、1日あたりの歩数と全死亡リスクの低下との間に有意な線形関係があることを報告していた。ベースラインの歩数が1,000/日多いごとの全死亡リスク低下率は、6~36%の範囲だった。
歩数とCVDとの関係
CVD発症率またはCVD死亡率との関連を検討した4件は、サンプルサイズが1,181~9,018人(計1万1,789人)、追跡期間は6カ月~6年(5万4,175人年)だった。
4件の研究のすべてが、1日あたりの歩数とCVDの発症率または死亡率の低下との間に有意な線形関係があることを報告していた。ベースラインの歩数が1,000/日多いごとのCVDの発症率または死亡率の低下率は、5~21%の範囲だった。
年齢や性別、体重、食習慣、喫煙などに関係なくメリットがある
上記のほかに解析された歩数と血糖異常との関係は、明確な傾向が示されなかった。著者らはその理由の一つに、検討された血糖関連バイオマーカーが複数あることなど、分析アプローチの不均一性を挙げている。
なお、年齢、性別、肥満の有無、健康状態、身体活動以外の生活習慣(飲酒、喫煙、食習慣)による層別化した解析からは、いずれの群間にも有意な交互作用は認められなかった。このことから著者らは結論を、「1日あたり1万歩未満の歩数においては、1,000歩多く歩くごとに、疾患のない成人の全死亡、CVD発症および死亡のリスクを下げるのに役立ち、健康上の利点は対象者の背景によらず一貫している」とまとめ、「このエビデンスは、公衆衛生ガイドラインの開発に役立つだろう」と述べている。
ただし、「用量反応関係は明確でなかった」として、「健康上のメリットを得るために必要な1日の歩数の閾値を特定するためにはデータが不足している」と、今後のさらなる研究の必要性にも触れている。
文献情報
原題のタイトルは、「Systematic review of the prospective association of daily step counts with risk of mortality, cardiovascular disease, and dysglycemia」。〔Int J Behav Nutr Phys Act. 2020 Jun 20;17(1):78〕
原文はこちら(Springer Nature)