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アスリートへの栄養教育、その有効性をシステマティックレビューで検討

アスリートを対象とする栄養教育は、栄養に関する知識とパフォーマンスの向上、および健康増進などを目的として行われる。既報の中には、栄養知識に自信をもっているアスリートは、トレーニング量に見合った適切な栄養を摂取しているとする報告もみられる。ただし、栄養教育が個々のアスリートの栄養摂取状況に、どの程度影響を与えているのかという点は、十分には検討されていない。本論文は、システマティックレビューによりこの点を明らかにすることを試みた研究の報告。

アスリートへの栄養教育、その有効性をシステマティックレビューで検討

文献検索で22件の報告を抽出

2019年6月までに発表された論文を対象とし、栄養、食品、教育、カウンセラーなどのキーワードを用いて文献検索を施行。12~65歳のアスリートを対象とした研究で、英語で発表されていて、介入前後での食事摂取量の変化を評価している論文を22件抽出した。必要に応じて著者に連絡をとり、データを入手し補足した。これらの工程は、PRISMA(preferred reporting items for systematic reviews.システマティックレビューとメタ解析のための優先報告事項)に従い行われた。

食事摂取量の妥当性は、報告された各国のガイドラインの推奨(recommended dietary intake;RDI、recommended daily allowance;RDA)に基づいて評価した。摂取エネルギー量については、各ガイドラインの「活動的」または「極めて活動的」に該当する値を基準とした。

報告されている研究の対象や栄養教育介入法について

22件の研究の検討対象者数は7~210名に分布し、合計は974名、平均年齢19.8歳で、女性が71.9%を占めていた。介入群単独で介入前後の変化を評価した研究が12件(対象者の合計241名)、比較対照群を置いた研究が10件(同689名)だった。

その他、検討対象者の競技種目、レベル、介入法、評価法等は以下のとおり。

競技種目やレベル

アスリートの競技種目は、チーム競技についてはバレーボールが3件、サッカー、野球、ソフトボール、ハンドボールが各1件、個人競技では水泳、陸上、レスリング、カヌー、バレエが各1件で、9件の研究は複数の競技を対象とし、2件は障害者アスリートを対象としていた。

競技レベルについては、高校生を対象とする研究が3件、大学生が4件、州レベルが1件、国内レベルが10件、国際レベルが4件。研究が実施された国は、米国が14件、欧州が5件、イラン、マレーシア、ブラジルが各1件だった。

栄養教育の内容・時間・担当者と介入効果の評価法

栄養教育のスタイルは、対面によるグループ講義が8件、個別栄養カウンセリングが6件で、その他、資料の配布、ワークショップ、およびそれらの組み合わせが用いられていた。

教育内容は、エネルギー量、栄養素、水分補給などのテーマを組み合わせたものが11件と、全体の半数を占めた。その他、食事の頻度とタイミング、サプリメントの使用、鉄分摂取、地中海食、栄養計画、体重管理などがテーマとして取り上げられていた。また、アスリートが食事を変えることをサポートする自己効力感を高める内容、認知行動理論の概念なども、22件中6件で実施されていた。

介入にあてられた期間は2〜39週に分布し、2件の研究は介入終了後も6〜16週追跡していた。セッション数は、3コマが3件、4~7コマが13件、7コマ以上が6件で、1セッションの時間は10~120分、合計時間は60~720分だった。

教育担当者は、22件中17件で専門職または有資格者で、その内訳は、10件が栄養士(dietitian)、4件がスポーツ栄養士(sports or performance nutritionist/dietitian)、2件が栄養専門家(nutrition specialist/professional nutritionist)など。

介入の効果については、介入前後での3日間または7日間の食事記録、24時間または72時間思い出し法などが用いられていた。1件の研究は地中海食の順守をKIDMEDスコア(地中海食品質指数)で評価していた。

結果の概要

上記の検討に基づき、論文では、エネルギー摂取量、主要栄養素、微量栄養素の介入前後での摂取量の変化をまとめている。その一部を紹介する。

摂取エネルギー量への介入効果

摂取エネルギー量への介入効果は9件の研究で検討されていた。

介入前の摂取エネルギー量が推定エネルギー必要量(estimated energy requirement;EER)を満たしていなかった7件の研究のうち、6件は介入後に摂取量が有意に増加していた(効果量0.4〜2.3、p<0.05)。他の1件は、介入後にもEERを大きく下回っていた(効果量-0.2、p=0.05)。

介入前の摂取エネルギー量がEERを満たしていた2件の研究では、介入後に有意でないながら摂取量が減少し、EERを下回った(効果量-0.4 〜 -0.5)。

炭水化物摂取量への介入効果

炭水化物摂取量への介入効果は12件の研究で検討され、そのうち10件が介入群のみで検討されていた。

10件中2件では介入前の時点で、炭水化物摂取量は適切と判定された(摂取エネルギーの50%以上、または6~10g/kg/日)。この2件では、介入による摂取量の有意な変化は認められなかった。

他の8件は、介入前の炭水化物摂取量は過少と判定された(3.1~5.2g/kg/日)。介入によって3.8〜7.0g/kg/日に増加し、うち4件では有意に増加したが(効果量0.7〜2.4、p<0.05)、依然として推奨量を下回っていた。

蛋白質摂取量への介入効果

蛋白質摂取量への介入効果は12件の研究で検討され、そのうち10件が介入群のみで検討されていた。

10件中5件では介入前の時点で、蛋白質摂取量は十分と判定された(1.1〜1.7g/kg/日)。このうち4件では介入後にも適切な摂取量(0.9~1.7g/kg/日)が維持されていたが、1件の研究では介入後に推奨値の下限(1.0g/kg/日)までの大幅な減少が報告されていた(効果量-0.8)。

介入前の蛋白質摂取量が不十分であると判定された5件の研究のうち、3件は介入後の摂取量も少なく(1.1~1.6g/kg/日)、他の2つの研究では1.2~2.1g/kg/日への増加が認められた(効果量0.2〜0.8)。

脂質摂取量への介入効果

脂質摂取量への介入効果は12件の研究で検討され、そのうち9件が介入群のみで検討されていた。

9件中5件では介入前の時点で脂質摂取量が過剰と判定され(摂取エネルギー量の20~30%以上)。他の4件は推奨範囲内にあった(同23~28%)。

介入前の脂質摂取量が過剰と判定された5件の研究のうち3件では、介入によって有意ではないが摂取量が減少し、推奨範囲内(同20~30%)となったが、他の2件では依然として30%を超えていた。

栄養介入効果を検証する高品質の研究が必要

これらのほかに論文では、鉄やカルシウム、野菜の摂取量への介入効果などを検討している。それらの検討も含め、著者らは結論を以下のようにまとめている。

「アスリートへの栄養教育介入の有効性に関する研究は限られている。利用可能なデータは質が高いとは言えず、結果のばらつきが大きい。栄養教育はアスリートの食事戦略を強化するために重要であり、スポーツ界全体では大きな投資がなされていることから、最良の結果を得るために、より精度の高い研究が求められる」。

文献情報

原題のタイトルは、「The effectiveness of nutrition education programs on improving dietary intake in athletes: A Systematic Review」。〔Br J Nutr. 2020 Sep 22;1-36〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

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