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アスリートは汗の量を少なく見積る傾向があり、発汗量が多いほど過小評価する

スポーツに伴う発汗は脱水の原因となる一方、過剰な水分補給によって低ナトリウム血症を招くことがある。発汗量に見合った水分摂取が理想とされるが、それには自分が汗をどのくらいかいたのかを推測する必要がある。では果たして、どの程度正確な推測が可能なのだろうか。

アスリートは汗の量を少なく見積る傾向があり、発汗量が多いほど過小評価する

これまでの論文をレビューした結果が報告され、それによるとアスリートは発汗量を少なく見積りがちで、とくに発汗量が多いときにその差が大きくなるという。

9件の研究、243名での検討

文献検索によって、これまでに発汗量の推測の精度を報告した9件の論文が見つかった。本論文の著者らはそれら9件の著者に連絡をとり、対象者の背景などの詳細なデータを入手。それを基に新たなデータベースを作成して解析を行った。発汗量は体重減少幅と等しいと仮定して評価した。

9件の研究の被験者数は合計243名で(男性127名、女性116名)、すべて18歳以上で平均26.8±9.7歳であり、レクリエーションスポーツからプロのアスリートまで、幅広い背景をもっていた。スポーツの種類は、ランニング、ラグビー、バスケットボール、クロスフィット、あるいはホットヨガなど。トレーニング時間は75±36分だった。

実際の発汗量に対する推定量は女性55%、男性62%

実際の発汗量は女性1.072±0.473L、男性1.778±0.907Lで、体重あたりでは女性1.64±0.71%、男性2.04±0.92%で、男性のほうが有意に多かった(いずれもp<0.001)。

これに対する本人の推定量をみると、女性は0.481±0.372Lで推定精度は55.2±51.5%と、約半分に少なく見積っていた。男性は0.908±0.666Lで精度は62.4±54.5%、やはり6割程度に少なく見積っていた。

つまり、女性も男性も、本人が考えているよりも約2倍近く、多く汗をかいていることになる。なお、推定精度に有意な性差はなかった。

実際の発汗量が多いほど過小評価する傾向

この結果を実際の発汗量で層別化して検討すると、発汗量が多いほど少なく見積りがちな傾向が見てとれた。

具体的には、実際の発汗量が1L未満の場合に推定量が同じく1L未満だった割合は91.1%で、8.9%は1L以上に過大評価していた。発汗量が1~2Lの場合に推定量が同じく1~2Lだった割合は15.0%で、83.0%は1L未満と過小評価し、2.0%は2L以上に過大評価していた。発汗量が2~3Lの場合に推定量が同じく2~3Lだった割合は9.3%で、88.4%は2L未満と過小評価し、2.3%は3L以上に過大評価していた。

そして発汗量が3L以上の場合には、推定量が同じく3L以上だった被検者はおらず(0.0%)、全員(100%)が過小評価していた。

プロかアマか、尿比色を利用しているか否かでも、結果は変わらず

発汗量の推定精度は、プロのアスリートを対象とした研究とレクリエーションまたは大学生アスリートを対象とした研究とで、明確な差はみられなかった。

また、トレーニングに際して水分補給モニタリングをしていたか否かでも、差はなかった。なお、水分補給のモニタリング方法として、78%は尿比色を利用したと報告し、体重の変化を用いたと報告したアスリートはいなかった。尿比色は一般的に、暑熱下長時間運動に伴う脱水の程度を判断する指標となり得るが、発汗量の定量的な評価は困難とされている。

この研究の結果から、アスリートは性別や競技種目にかかわらず、発汗量を大きく過小評価することが明らかになった。著者らは、アスリートが正確な発汗量を認識し得た場合に水分摂取戦略を変更するという確証はないこと、プロアスリートを対象とした研究データがわずかであったことなどの留意点を述べたうえで、「これらの発見が、今後の水分補給ガイドライン開発につながることを望む」と結んでいる。

文献情報

原題のタイトルは、「Post-Exercise Sweat Loss Estimation Accuracy of Athletes and Physically Active Adults: A Review」。〔Sports (Basel). 2020 Aug 11;8(8):E113〕
原文はこちら(MDPI)

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