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競技人口が急拡大 クライマーの食事摂取量や身体組成の調査結果報告

近年、クライミングの人気は世界各国で高まっている。その人気拡大は、東京2020の競技種目として新たに追加されたことにも表れている。人気拡大が急であるために、クライマーの食事摂取量に関する調査、とくに女性クライマー対象の調査はほとんど行われていない。その現状を背景として、本論文の著者らは、パフォーマンスレベルの異なる男性・女性クライマーの食事やサプリメントの摂取状況、体組成、および鉄代謝状態を調査した。

競技人口が急拡大。クライマーの食事摂取量や身体組成の調査結果が報告される

研究対象者のBMIは21.6±1.7。4人に1人は菜食主義者

対象は、参加者は英国内からソーシャルメディアやクライミングセンターでの告知を通じて募集されたボランティア40名(女性と男性各20名)。適格条件は、18歳以上で2年以上の登山経験があり、登山または登山のトレーニングを週に2回以上実施していて、食事摂取に影響のある疾患のない者。

主な背景は、年齢30.3±6.7歳、登山経験8.8±6.6年。ロッククライミングの国際組織(International Rock Climbing Research Association;IRCRA)のスケールで評価したクライミング力は22.2±3.7であり、19名(47.5%)は中~上級レベルに分類され、21名(52.5%)はエリートレベルだった。主要クライミング分野として、27名はボルダリング、13名はスポーツクライミングと報告した。

栄養摂取状況は、3日間の食事日誌から把握した。全体の4分の1(27.5%)が、ビーガン(5名)、またはベジタリアン(6名)であった。

体重や身長とクライミング力が、男性では有意に関連

平均BMIは21.6±1.7で、1名の女性は18.5未満であり、やせに該当した。

男性では、IRCRAスコアと体重(R2=0.506,p=0.02)、および身長(R2=0.478,p=0.03)に、中程度の有意な相関がみられた。

摂取エネルギー量が不足しているクライマーが少なくない

摂取エネルギー量は平均2,154.6±450kcal/日(41.4±9kcal/kg除脂肪体重/日)。除脂肪体重あたりの摂取エネルギー量を性別にみると、男性は37.2±9.0kcal/kg除脂肪体重/日、女性45.6±7.0kcal/kg除脂肪体重/日で、女性のほうが有意に高かった(p<0.01)。

6名の男性(30%)と1名の女性(7%)は、安静時代謝率(Resting Metabolic Rate)を満たさず、全体の77.5%は、適度な身体活動に必要とされる摂取量(男性2,640.1±143.5kcal/日、女性2,130.2±129.2kcal/日)を満たしていなかった。

蛋白質摂取量とクライミング力が、女性では有意に関連

続いて主要栄養素の摂取状況をみてみると、炭水化物は3.7±0.9g/kg/日、蛋白質は1.6±0.5g/kg/日、脂質は1.4±0.4g/kg/日で、体重あたりに換算した場合、性別による差は有意でなかった。

クライミング力のグレードで層別化しても、炭水化物や蛋白質の摂取量に差はなかった。ただし、性別に解析した場合、女性においてIRCRAスコアと蛋白質摂取量に有意な相関が認められた(R2=0.452,p=0.045)。

アルコールを摂取していたのは17.5%だった。

クライマーの鉄不足が明らかに

鉄の平均摂取量は13.7±6mg/日で、性別による有意差はなかったが、4名の男性(21%)と16名の女性(80%)は、一般集団対象の食事摂取基準(dietary reference intake;DRI)を満たしていなかった。なお、鉄摂取量と血清フェリチンに有意な相関は認められなかった。男性1名は鉄サプリメントを摂取したため、上記の解析から除外された。

サプリメントの使用状況

男性10名と女性8名(全体の45%)が、1種類以上のサプリメントを使用していた。最も一般的なものはプロテインパウダー(11名)であり、続いて、ビタミンD(7名)、マルチビタミン(5名)、魚油カプセル(3名)のほか、クレアチン、ベータアラニン、プロバイオティクス、ビタミンC、BCAAなどが報告された。

サプリメント利用率は、エリート/ハイエリートレベル(38.1%)に比較し、中~上級レベル(57.9%)のほうが高かった。ビーガン/ベジタリアンの利用率(36.4%)は、非採食主義者(35.9%)と同等だった。

プロテインパウダー利用者は、非利用者より蛋白質摂取量が有意に多かった(124.0±30.9 vs 94.4±31.0g/日.p=0.016)。

クライマーの摂取エネルギー不足と鉄不足の背景因子の特定を

以上一連の結果から、著者らは「経験が豊かなクライマーの多くが、摂取エネルギー量が少なく鉄欠乏のリスクがあり、栄養状態の定期的な評価が必要」とまとめ、また「クライマーのエネルギー利用可用性の低下や鉄欠乏に陥りやすくなる因子の探索が求められる」と、今後の研究の方向性を示している。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary Intake, Body Composition and Iron Status in Experienced and Elite Climbers」。〔Front Nutr. 2020 Aug 5;7:122.〕
原文はこちら(Frontiers Media)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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