ビタミンD皮膚合成量は10歳ごとに13%低下 ただし高齢者でも重要な供給源
ビタミンD欠乏症は、心血管疾患、2型糖尿病、免疫能低下、神経精神疾患など、さまざまな慢性疾患の発症・進行に関連しているというエビデンスが蓄積されてきている。ビタミンDは経口摂取されるほかに皮膚で日光曝露により合成されるが、その合成量は加齢とともに低下することが報告されている。ただしそれらの報告の多くは、ex vivo研究または、異なる条件下での研究による。本研究の著者らは、同一条件下で若年成人と高齢者の皮膚ビタミンD合成量を比較検討した。
若年成人と高齢者で、同一条件のもと比較検討
この研究の対象者は、比較的若年のボランティア(19〜39歳)と、比較的高齢の地域住民(50〜70歳)。皮膚のタイプは、フィッツパトリックのスキンタイプ(Fitzpatrick skin typing)のII(紫外線を浴びると容易に火傷し赤くなり、日焼けしない)とタイプIII (紫外線を浴びると軽く火傷しある程度赤くなり、中程度に日焼けする)に該当することを条件とし、除外基準は、過去1カ月以内のビタミンD補給、光線過敏症、過去3カ月以内の日照条件が異なる地域への転居など。募集に応募した若年成人51名、高齢者45名から、適格基準を満たした者、それぞれ18名、12名を対象とした。
日光への曝露は、北緯41.3°、標高2,194mの地点で、11時30分~13時の間に、体の腹側と背側を各15分間、計30分間露出するという条件。男性はショートパンツのみ、女性はショートパンツとスポーツブラのみで、仰臥位と伏臥位で行った。
日光曝露前と、曝露から24時間後、48時間後、72時間に全参加者、および高齢者群には168時間後も採血し、血清ビタミンD値を測定した。ベースライン時で、若年者群と高齢者群とで、過去3カ月間のビタミンD摂取量と、日光曝露時間などに有意差はなかった。
血清ビタミンD3、25(OH)D に対する日光曝露の影響
血清ビタミンDレベルは有意に上昇
日光暴露後24〜48時間で、血清ビタミンD3レベルは有意に増加した(時間効果;p<0.002)。若年者群と高齢者群との比較では、ピークが若年者でやや高かったが、有意差はなかった。
ベースラインからの増加幅は、24時間後が76.4±83.7%、48時間後が88.1%±73.3%、72時間が54.1±52.5%であり、すべて有意だった。若年者群は日光曝露24時間後にピークに達した一方、高齢者群は48時間にピークに到達した。
なお、日光曝露24時間後に、若年者群の1名に、紅斑が観察された。
25(OH)Dレベルは変化せず
血清ビタミンD 3レベルは上昇したが、血清25(OH)Dレベルは日光曝露後、変化しなかった。ベースラインと72時間後(p=0.561)、および168時間(p=0.237)でともに有意でなかった。
血清ビタミンD3産生の予測因子
血清ビタミンD3産生レベルをlog変換した値を従属変数、ベースラインの血清D3レベル、年齢、除脂肪体重、ビタミンD摂取量、日光曝露歴を独立変数として、反復測定分散分析を行った結果、血清ビタミンD3産生レベルの最大の予測因子は年齢だった(r2=0.238)。
年齢は、ビタミンD3産生レベルの差異の20%を説明していた。また、10歳ごとにビタミンD3産生量が13%ずつ低下することがわかった。
著者らは、「若年、高齢にかかわらず、屋外での日光曝露に応じて血清D3レベルが大幅に増加した。加齢により皮膚のビタミンD合成が減弱する可能性があるが、それでも日光曝露はビタミンD3の重要な供給源である」と結論している。
文献情報
原題のタイトルは、「Vitamin D Synthesis Following a Single Bout of Sun Exposure in Older and Younger Men and Women」。〔Nutrients. 2020 Jul 27;12(8):E2237〕
原文はこちら(MDPI)