持久力トレーニングをしている高齢者で、β-アラニン、カフェインなどがプラス効果
β-アラニンやカフェインは、高齢者の健康に良い影響を与える可能性が、文献レビューの結果から示された。さらに女性では重炭酸塩やβ-ヒドロキシエチル酪酸(HMB)、リジン、アルギニンの摂取が運動パフォーマンスにプラスの効果が認められるという。
加齢による身体的・生理学的な変化は、日常的な身体活動によって抑制される。ただし高齢者では、栄養摂取が最適化されていないことが少なくない。そこで本論文の著者らは、持久力トレーニングを行っている高齢者の身体組成とパフォーマンスに対する、栄養戦略の影響をシステマティックレビューによって検討した。
PRISMAガイドラインに則した文献レビュー
この研究は、「システマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告項目(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses;PRISMA)」に則した手順で行われ、2名の独立した研究者が、PubMed、Web of Science、SPORTDiscusという三つのデータベースを利用し、文献検索を行った。検索キーワードは、'older people''older adults''elderly''aged'と、'endurance'および'nutrition'または'diet'とした。
適格基準は、無作為化臨床試験の結果であり、英語またはスペイン語で書かれており、持久力スポーツやトレーニングを行っている高齢者を対象とした研究であることとした。2019年10月に最終検索を行った。
PubMedで734件、Web of Scienceで1,611件、SPORTDiscusで164件、計2,509件の論文がヒットし、そこから適格基準を満たした8件の論文が抽出された。このうち7件は2004~2014年に報告されたもので、他の1件は1995年の報告だった。米国の研究が3件、フィンランドが2件、英国、デンマーク、ベルギーが各1件で、検討対象者数は 19~113名だった。
主な結果と結論
8件の研究のうち4件は男性と女性双方を対象とし、3件は女性のみ、1件は男性のみを対象としていた。
重炭酸塩、カリウム、塩化ナトリウムによる介入を行った試験では、女性ではプラス効果が報告されていた。ただし男性では有意な効果は報告されていない。ビタミンDによる介入を行った試験では、有意な結果が示されなかった。
β-ヒドロキシエチル酪酸(HMB)、リジン、アルギニンの複合体を用いて高齢女性に介入を行った検討からは有益な結果が報告され、体組成に大きな変化を認めた研究もある。ある研究では除脂肪体重および筋肉量の増加が報告されていた。
男性に対してのみ行われた唯一の研究では、特定の運動介入は行われなかったが、すべてがトレーニングされた被験者だった。ユビキノン(コエンザイムQ10)による介入効果をエルゴメーターの持久力テストで検証したものだが、有意な結果は報告されていない。
そして、β-アラニン、カフェインの摂取、および高蛋白質サプリメントの摂取は、女性・男性いずれにおいても持久力運動をしている高齢者に有益であることが示された。
これらの検討のまとめとして、著者らは以下のように結論を述べている。
「持久力トレーニングを受けている高齢者で研究された報告のレビューから、栄養戦略を検討した結果、β-アラニンやカフェインを含む高蛋白質サプリメントなど、有効なサプリメントが認められた。高齢女性では、重炭酸塩、HMB、リジン、およびアルギニンの補給も運動パフォーマンスにプラスの効果を示している。医療者はこれらの戦略を認識し、さまざまな補助的介入を検討する必要がある」。
文献情報
原題のタイトルは、「Effect of Supplements on Endurance Exercise in the Older Population: Systematic Review」。〔Int J Environ Res Public Health. 2020 Jul 20;17(14):E5224〕
原文はこちら(MDPI)