親の健康リテラシーが、子どもの食事・運動習慣に影響 ドイツでの横断調査
ドイツの小中学校で行われた横断調査で、子どもをもつ親の健康リテラシーの高さと子どもの健康行動が有意に相関するというデータが報告された。親の健康リテラシーが低いことは、子どもの栄養の偏りや運動不足につながる可能性があるという。
調査の対象と手法
この調査は、親へのアンケート調査、その子どもへのアンケート調査からなり、調査対象はドイツの社会人口学的背景を考慮し、年齢、性別、経済社会的地位が一致するよう調整された。
親へのアンケートは4,217人に対して行われ、有効回答数は3,980件だった。子どもへのアンケートは、6~10歳の1,518人と11歳以上の2,776人に対して行われ、前者は親が回答し、後者は子ども自身が回答した。
回答者の背景
親の年齢、経済社会的地位など
回答した親は、母親が3,259人(77.1%)、父親が675人(16.0%)で、その他、祖父母などが44人(1.0%)。248人(5.9%)は、子どもとの関係に関する情報に回答しなかった。親の年齢は19~76歳(祖父母などを含む)で、平均年齢は38.1歳だった。
子どもの人数は2人が最多で1,901人(45.0%)、1人が1,052人(24.9%)、3人が738人(17.5%)、4人が256人(6.1%)、5人が64人(1.5%)で、251人は子どもの数に関する情報を回答しなかった(5.1%)。
353人(8.4%)は、自分の子どもが慢性的な疾患や障害を抱えていることを示した。
経済社会的地位に関する質問に回答した3,189世帯のうち、1,047世帯(32.8%)はその地位が高く、1,358世帯(42.6%)は中程度、784世帯(24.6%)は低いと判定された。
子どもの年齢、居住地域など
子どもの有効回答者数は2,773人で、平均年齢は14.2歳。51.7%が女子、48.3%が男子だった。
全体の32.7%が人口10万人以上の都市の学校に通っており、37.3%は人口2万~10万人の都市の学校に通学。人口が1万人未満の地域の学校に通っていた子どもは10%未満だった。
また、54.0%は旧西ドイツ、46.0%は旧東ドイツの世帯だった。
親の健康リテラシー
3,980人の親の健康リテラシーは、592人(14.9%)が優れている、1,564人(39.3%)は十分である、1,342人(33.7%)は問題がある、482人(12.1%)は不十分と判定された。
親の健康リテラシーの決定要因
親の健康リテラシーの高さの主な決定要因は、経済社会的地位の高さ(r=0.088,95%CI:0.052-0.124,p<0.001)、旧西ドイツの世帯(r=0.064,95%CI:0.032-0.096.p<0.001)、年齢(r=0.057,95%CI:0.024-0.090.p<0.01)の三つが有意な因子だった。性別(父親か母親か)、子どもの人数、居住地区の都市の規模、子どもの慢性疾患・障害の有無は、有意な因子でなかった。
多変量解析の結果、経済社会的地位のみが、親の健康リテラシーを決定する有意な因子として抽出された。
健康リテラシーが高いと主観的健康感や生活満足度が高い
親の健康リテラシーの高さは、主観的健康感の高さや(r=0.111,95%CI:0.079-0.143.p<0.001)、生活満足度の高さと(r=0.136,95%CI:0.104-0.168.p<0.001)、有意な関連が認められた。
親の健康リテラシーの子どもへの影響
親の健康リテラシーと子どもの健康行動の間には、以下のような相関が認められた。
6~10歳の子どもでは、食事摂取や身体活動などへ好影響
健康リテラシーの高い親の11歳未満の子どもは、野菜やサラダの摂取量が多く(r=0.100,95%CI:0.047-0.153.p<0.001)、果物の摂取量も多かった(r=0.086,95%CI:0.032-0.139.p<0.01)。
また、身体活動を行う頻度が高く(r=0.079,95%CI:0.025-0.132.p<0.01)、定期的に歯を磨く割合が高かった(r=0.055,95%CI:0.001-0.108.p<0.05)。そして、両親は自分の子どもを、健康であると判断する割合が高かった(r=0.144,95%CI:0.091-0.196.p<0.001)。
ただし、親の健康リテラシーと子どものBMI、チョコレートやその他の菓子の摂取量、コーラやその他の甘味飲料の摂取量、学校の欠席日数とは、有意な関連がみられなかった。
11歳以上の子どもでは、身体活動への好影響がみられなくなる
健康リテラシーの高い親の11歳以上の子どもも、11歳未満と同様に、野菜やサラダの摂取量が多く(r=0.163,95%CI:0.115-0.211.p<0.05)、定期的に歯を磨く割合が高かった(r =0.058,95%CI:0.008-0.107.p<0.05)。また、コーラやその他の甘味飲料の摂取量が少なかった(r=-0.096,95%CI:-0.145--0.0477.p<0.001)。
ただし、11歳未満の子どもにみられた身体活動への有意な好影響は、11歳以上の子どもには認められなかった。同様に、11歳未満の子どもにみられた果物の摂取量の有意な好影響は、11歳以上の子どもには認められなかった。チョコレートやその他の菓子の摂取量やBMI、学校の欠席日数と有意な関連がみられないことは、11歳未満と同様だった。
そのほか、親の健康リテラシーと、子どものアルコール摂取、喫煙、無防備な性行動との有意な関連は認められなかった。
親への介入が、子どもの将来を変える
この横断研究の結果は、親の健康リテラシーが低いことが、経済社会的地域の低いことに起因し、かつ、子どもの栄養の低下や運動不足など、健康に悪影響を及ぼす可能性のある行動と関連することを示している。このことから、著者らは「両親の健康に関する知識と能力を強化することは、栄養、運動、口腔衛生の面で、子どもの将来的な転帰の改善に貢献するかもしれない」とまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「Parental health literacy and health knowledge, behaviours and outcomes in children: a cross-sectional survey」。〔BMC Public Health. 2020 Jul 13;20(1):1096〕
原文はこちら(Springer Nature)