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米国の運動ガイドラインの推奨レベルを守っている人は、死亡リスクが最大4割低い

米国の保健福祉省が推奨する「身体活動に関するガイドライン 2018年版」の推奨運動量を満たす運動を行っている米国人は、死亡リスクが最大4割低いことが、医学雑誌「BMJ」に掲載された。有酸素運動、筋力トレーニングのいずれも効果が認められるが、有酸素運動の推奨量を満たしていことの方が、リスク比の低下幅はより大きいようだ。

米国の運動ガイドラインの推奨レベルを守っている人は、死亡リスクが最大4割低い

米国人47万9,856人を9年弱追跡

米国の「身体活動ガイドライン 2018年版」では、成人に対して1週間に150分以上の中等強度の有酸素運動、または75分以上の高強度の有酸素運動、および、週に2日以上の中等強度以上の筋力トレーニングを推奨している。本論文の著者らは、米国国民健康栄養調査の一部として実施されている健康に関する世帯調査(National Health Interview Survey)のデータを解析し、この運動推奨量を遵守している場合としていない場合とで、死亡リスクが異なるか否かを検討した。

解析対象は、1997~2014年調査の18~85歳の成人47万9,856人。まず、この対象全体を以下の4群に分類した。ガイドラインの有酸素運動と筋力トレーニングの推奨量をいずれも満たしていなかった群(26万8,193人、55.9%)、有酸素運動の推奨量のみを満たしていた群(11万3,851人、23.7%)、筋力トレーニングの推奨量のみを満たしていた群(2万1,428人、4.5%)、有酸素運動と筋力トレーニング双方の推奨量を満たしていた群(7万6,384人、15.9%)。

評価した死因は、全死亡のほか、以下の疾患による死亡。がん、心血管疾患、慢性下気道疾患、事故・傷害、糖尿病、アルツハイマー病、インフルエンザ・肺炎、腎炎・ネフローゼ・ネフローゼ症候群。

有酸素運動と筋力トレーニングを比較すると...

8.75年(中央値)の追跡期間中に、5万9,819人が死亡していた。個別に集計した死因の中では、がん死が最も多く1万4,375人、続いて2位が心血管疾患死が1万3,509人、3位が慢性下気道疾患による死亡で3,188人、以下、事故・傷害2,477人、糖尿病1,803人、アルツハイマー病1,470人、インフルエンザ・肺炎1,135人、腎炎・ネフローゼ・ネフローゼ症候群1,129人と続いた。

ガイドラインの推奨量を満たしていなかった群を基準として、他の群の全死因による死亡リスクを、年齢、性別、人種/民族、BMI、喫煙・飲酒習慣、婚姻状況、教育歴で調整後に比較した。

結果について、まず、有酸素運動の推奨量のみを満たしていた群の死亡リスクをみると、HR0.71(95%CI:0.69-0.72)であり、約3割有意にリスクが低かった。次に、筋力トレーニングの推奨量のみを満たしていた群の死亡リスクは、HR0.89(95%CI:0.85-0.94)と、約1割有意にリスクが低かった。

また、有酸素運動の推奨量のみを満たしていた群では、評価したすべての死因において、有意な死亡リスクの低下が認められた。その一方で、筋力トレーニングの推奨量のみを満たしていた群では、がん、心血管疾患、慢性下気道疾患という3疾患による死亡リスクのみ、有意な低下が認められた。

なお、有酸素運動の推奨量と筋力トレーニングの推奨量を双方満たしていた群は、HR0.60(95%CI:0 .57~0.62)であり、4割の死亡リスク低下が認められ、評価したすべての死因の死亡リスクが有意に低かった。

有酸素運動は、週に中等強度で150分以上か、それとも高強度で75分以上か

前述のように、米国の「身体活動ガイドライン 2018年版」における有酸素運動の推奨量は、中等強度で1週間に150分以上、もしくは高強度で同75分以上としている。そこで、本論文の著者らは、有酸素運動を中等強度で週に150分以上の行った場合と、高強度で75分以上の行った場合とで、死亡リスクを比較している。

結果は、前者では運動量が150分未満の群に対しHR0.79(95%信頼区間:0.77-0.81)、後者は75分未満の群に対しHR0.69(95%信頼区間:0.67-0.71)であり、ともに有意なリスク低下が認められるが、有酸素運動は高強度で集中的に行ったほうが、死亡リスク抑制効果がやや高かった。

慢性疾患のある人でも運動は有用

このほか著者らは、高血圧や心疾患、脳卒中、がん、糖尿病といった慢性疾患がある人が、ガイドラインの推奨量を満たす運動を行った場合に有害か有益かを検討している。

結果は評価したすべての慢性疾患患者で、運動の種類や強度にかかわらず、運動推奨量を満たすことによる有意な死亡リスク低下が認められた。

この結果から、著者らは以下のように結論をまとめている。

「2018年の身体活動ガイドラインで推奨されているレベルで余暇時間に有酸素運動と筋力トレーニングを行うことは、すべての原因による死亡と、特定の原因による死亡リスクの統計的な有意な低下と関連していた。さらに慢性疾患のある成人における生存率のメリットもみられた。この研究結果は、米国人の身体活動に関するガイドラインで推奨されている運動量が、生存期間延長という利益を享受につながることを支持している。さらに、ガイドラインの推奨に従い、最小推奨量よりも多くの身体活動を行うことで、より大きな健康上のメリットを得られる可能性がある」。

文献情報

原題のタイトルは、「Recommended physical activity and all cause and cause specific mortality in US adults: prospective cohort study」。〔BMJ. 2020 Jul 1;370:m2031〕
原文はこちら(BMJ Publishing)

関連情報

米国保健福祉省/身体活動ガイドライン 2018年版

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