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長距離用厚底シューズ「ヴェイパーフライ」はなぜ速い? 科学的根拠を探る

2020年02月01日

国内外でいま話題の長距離ランナー用シューズといえば、ナイキ社が開発した「ヴェイパーフライ」シリーズだ。ヴェイパーフライを着用した選手には好記録が続出し、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)や箱根駅伝などの有名なレースでは、多くのトップ選手がこの魔法の厚底シューズを使用したことで一躍その名が広まった。しかし、東京2020オリンピック開幕を間近に控えた現在、その速すぎる性能が世界の陸上界でさまざまな議論を巻き起こしている。

長距離用厚底シューズ「ヴェイパーフライ」はなぜ速い? 科学的根拠を探る

ヴェイパーフライの速さの科学的根拠とは何か? 2019年に発表された2本の論文から紐解いてみたい。いずれもヴェイパーフライを生み出したナイキ社発祥の国、米国から報告された。

接地時間の短縮効果を上回るランニングエコノミーの向上

1報目はナイキ「ヴェイパーフライ(Vaporfly)」と他の2種類のマラソンシューズ(同様に一般消費者が購入可能なもの)のランニングエコノミーを比較した研究だ。ランニングエコノミーは、より少ないエネルギー消費でいかに効率よく走行できるかという、言わば自動車の"燃費"に相当する指標。

19人の被験者が試験第1日目に、アディダス「Adios Boost」、ナイキ「Zoom Streak」、および同「Vaporfly」をランダムな順序で着用し、4.44m/秒の速度で5分間のランニングを2回行った。ランニング中には酸素摂取量を記録した。

試験2日目には、各シューズを着用して3分間のトライアルを行った。各種の評価パラメーターは、各条件でのテストの最後の30秒間に収集した。

以上の試験の結果、Vaporfly着用時の酸素摂取量は、Adios Boost着用時に比較して2.8%少なく、Zoom Streakと比較しても1.9%少なかった。また、歩幅や足関節底屈速度、垂直方向の重心動揺については、Vaporfly装着時の評価が有意に優れていた。Adios BoostとVaporflyの比較では、足底接地時間の差も関与している可能性が示唆された。

これらの結果は、Vaporflyを使用すると他のシューズ使用時と比較し走行時の力学的な負荷が軽減され、そのことが一部関与してランニングエコノミーが改善することを示している。Vaporfly使用のメリットとして注目されることの多い接地時間への影響は、ランニングエコノミーの改善に対し部分的な説明にとどまるようだ。

文献情報

原題のタイトルは、「Running economy, mechanics, and marathon racing shoes」。〔J Sports Sci. 2019 Oct;37(20):2367-2373〕

原文はこちら(J Sports Sci)

ロードレースだけでなくトラック競技にも威力を発揮する可能性

2報目もやはりランニングエコノミーに着目した研究だ。

Vaporflyは道路でのマラソン競技用に設計されており、他のマラソンシューズと比較してランニングエコノミーを最大4%向上させることが示されている。しかしトラック競技においては、中距離ランナーは以前からスパイクプレートを備えた非常に軽いシューズを着用している。よってトラック競技でもVaporflyが優位性を発揮できるか否かは明らかでない。

この研究では、既に評価が確立されているトラック競技用スパイクであるナイキ「Zoom Matumbo 3」と、マラソン競技用シューズのアディダス「Adizero Adios 3」と比較した場合にも、NVFシューズがランニングエコノミーを改善するか否か、およびその程度を評価した。

24人の高度なトレーニングを受けたランナー(男性と女性各12名)に対し、トレッドミルで4×5分のトライアルを、以下の4種のシューズを着用して施行した。Vaporfly、Zoom Matumbo 3、Adizero Adios 3、およびVaporflyの重さをAdizero Adios 3に揃えて加重したシューズという4種。

試験は3日に分けて行った。初回はシューズを履き慣れるのみとし、2回目は男性14km/時および18km/時、女性14km/時および16km/時でのランニング、3回目は男性16km/時、女性15km/時でのランニングに加えて最大酸素摂取量(VO2max)を測定した。また、各速度でランニング中に、酸素摂取量、二酸化炭素排出量、生体力学的パラメーターを測定した。

結果をみると、VaporflyはZoom Matumbo 3に比較して2.6±1.3%、Adizero Adios 3に比較して4.2±1.2%、重さをAdizero Adios 3に一致させたVaporflyに比較して2.9±1.3%、それぞれランニングエコノミーを改善した。生体力学的変数との相関は明確な結果は示されなかった。

以上一連の結果から著者らは、「Vaporflyはトラック競技用スパイクやマラソンシューズに比べてランニングエコノミーを向上させたことから、トラック競技とロードレースの双方に使用可能な選択肢だ」と結論をまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「A Randomized Crossover Study Investigating the Running Economy of Highly-Trained Male and Female Distance Runners in Marathon Racing Shoes versus Track Spikes」。〔Sports Med. 2019 Feb;49(2):331-342〕

原文はこちら(Springer)

世界陸連が厚底シューズを容認

世界陸上競技連盟(World Athletics)は31日、ナイキ社の「ヴェイパーフライ」シリーズが発端となった競技用シューズの使用規則を変更した。これによると、これまでに市販されているヴェイパーフライについては、オリンピックなどの競技会で使用することが可能になった。

世界陸連のプレスリリースには、「2020年4月30日以降の競技大会で使用するシューズは、その4カ月前から市販されているものに限る」「ソールの厚さは40mm以下」「内蔵するプレートは1枚まで」などとルールが具体的に記載されている。詳細は下記リンク先を参照のこと。

世界陸連プレスリリース(2020年1月31日)

World Athletics modifies rules governing competition shoes for elite athletes

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