「東京栄養サミット2020」本年12月開催 栄養での国際貢献を推進
今年の12月に東京で開催されることが決まっている「栄養サミット2020」の概要が徐々に明らかになってきた。日本政府が主催、イギリス、フランス、世界保健機関(WHO)、NGOなどとが共催し、各国の首脳、閣僚の出席が予定されている。
栄養サミットは、2012年のロンドンオリンピックの最終日にキャメロン英首相(当時)が主催した「飢餓サミット」を機とし、翌2013年のG7(先進7カ国蔵相・中央銀行総裁会議)にあわせてロンドンで「栄養サミット」として初めて開催され、飢餓や低栄養に対する国際的な行動目標が策定された。
この流れはその後、2016年のリオデジャネイロオリンピックにも引き継がれ、2017年12月には安倍首相が2020年に東京オリンピックで開催することを表明し決定した。これまでの栄養サミットの議論は飢餓と低栄養が中心だったが、2020年の東京開催では、「栄養不良の二重負荷」※等も対象とした上で、これらの問題の解決に向け持続可能な開発目標(sustainable development goals;SDGs)の推進も議題にする。
主なテーマとして具体的には、厚生労働省の資料によると、
- 健康:栄養のユニバーサル・ヘルス・カバレッジへの統合
- 食:健康的で持続可能なフードシステムの構築
- 強靭性:脆弱な状況下における栄養不良対策
- 説明責任:データに基づくモニタリング
- 財政:栄養改善のための財源確保
の5点が掲げられている。
これらの議題について、首脳級・閣僚級のハイレベルセッションにより、栄養課題の解決に向けたコミットメントを表明し、最終的に成果文書を採択する予定。また、閣僚級・次官級のテクニカルセッションにより、多様な栄養課題の解決に向けて技術的・専門的議論を行う。
※栄養不良の二重負荷:低栄養と過栄養が個人内・世帯内・集団内で同時にみられる、または一生涯の中で低栄養と過栄養の時期が存在するなど、低栄養と過栄養の双方が健康の負荷となっている状態・環境。
東京栄養サミットの開催概要
- 日程
- 2020年12月
- 主催
- 日本政府
- 共催(予定)
- 英国、仏国(2024年オリンピック開催国)、国際機関(WHO、FAO、WFP、UNICEF、世銀等)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、NGO等
- 想定される出席者
- 首脳級、閣僚級、国際機関の長、市民社会、民間企業等
- 目的
- 世界的な栄養改善の現状と課題を確認し,栄養課題に向けた各国の今後の国際的取組の促進を主導
- 主なテーマ
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- 健康:栄養のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)への統合
- 食:健康的で持続可能なフード・システムの構築
- 強靭性:脆弱な状況下における栄養不良対策
- 説明責任:データに基づくモニタリング
- 財政:栄養改善のための財源確保
- 想定される成果
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Tokyo Nutrition for Growth Compact 2020
(各ステークホルダーからの、栄養課題に向けたコミットメントを添付)
※我が国の栄養に対する取組をパッケージとして発信
2020年はロンドン栄養サミットでの策定目標の最終年
現在、国際的には栄養関連で以下のように複数の取り組みが進行中だ。このうち「Nutrition for Growth Compact」はロンドン栄養サミットで策定されたもので、今年2020年が取り組みの最終年にあたる。また、国連総会で採択された「栄養に関する行動の10年」の中間評価を行う年でもある。世界の栄養改善に向けて、日本からの情報発信に国際社会からの注目が集まる年になりそうだ。栄養改善に関連する国際的な取り組みと主な目標
- WHO Global Monitoring Framework on NCDs【WHO】
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- 目標4:食塩摂取量を30%減少
- 目標6:高血圧の25%減少
- 目標7:糖尿病と肥満の増加阻止
- Global nutrition targets 2025【WHA】
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- 目標1(Stunting):5歳以下の子どもの発育阻害の割合を40%減らす。
- 目標2(Anemia):生殖可能年齢にある女性の貧血を50%減らす。
- 目標3(Low Birth Weight):出生児の低体重を30%減らす。
- 目標4(Childhood overweight):子どもの過体重を増やさない。
- 目標5(Brest feeding):最初の6か月間の完全母乳育児の割合を50%以上にする。
- 目標6(Wasting):小児期の消耗症の割合を5%以下に減少・維持する。
- Nutrition for Growth Compact
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2020年までに、
- 少なくとも5億人の妊婦及び2歳未満の子どもに効果的な栄養の介入がなされていることを確実にする。
- 5歳未満の発育阻害の症状にある子どもの数を少なくとも2,000万人減らす。
- 発育阻害を予防し、母乳育児を増やし、重度急性栄養不良の治療を増やすことによって、170万人の5歳未満の子どもの命を救う。
- ICN2【FAO/WHO Second International Conference on Nutrition】
- ICN2の成果文書「Framework for Action」において、アカウンタビリティ確保のために、既存の数値目標(Global nutrition target 2025及び2025年までに達成すべき非感染性疾患のリスク要因削減(食塩摂取量の30%削減等))を掲げている。
- 持続可能な開発目標(SDGs)【国連総会】
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目標2で「栄養の改善」を掲げた2030年を達成年とする国際目標。
目標2:飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。
2.1 :2030年までに、飢餓を撲滅し、全ての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。
2.2 :5歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。 - 栄養に関する行動の10年【国連総会】
- 栄養に関する国際的な行動を集結し、前進させることを目的にした決議。
上記の取り組みの行動期間
関連情報
東京栄養サミット2020(厚生労働省)
第1回 東京栄養サミット2020厚生労働省準備本部 資料
栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP)