幼児の運動能力との関連は、BMIよりもウエスト周囲長のほうが重要
幼児の運動能力はBMIよりもウエスト周囲長との関連が強く、また、通園している幼稚園の社会的環境が園児の運動能力に独立して関連すると報告された。
幼児期に運動能力が低いことは、成長過程における低活動につながり成人後の肥満・生活習慣病の増加にもつながる可能性がある。実際に子どもの肥満の増加は公衆衛生上の世界的な懸念となっている。例えば2010年において子どもの6.7%が過体重・肥満であり、2020年には9.1%、6,000万人に達するとの予測もある。
園児本人と親へのアンケート調査の結果と、子どもの運動能力との関連を検討
この研究はドイツで行われた。公立幼稚園34校に通う園児とその親、それぞれ434人に対し、アンケートを行い、身体状況、活動レベル、生活習慣、経済状況などを調査し、子どもの運動能力と関連のある因子を探索した。子どもの肥満は国際肥満タスクフォース(international obesity taskforce;IOTF)で判定し、ウエスト周囲長はドイツの幼児のデータに当てはめ90パーセンタイル以上の場合を高リスク状態と判定した。また運動能力は、片足立ち、幅とび、横とび、シャトルランで評価した。
子どもの平均年齢は4.9±1.0歳で、男児が55.9%。女児(5.0±1.0歳)は男児(4.8±1.0歳)よりも有意に年長(p=0.009)であり、BMIは男児(16.2±1.6)のほうが女児(15.8±1.4)より高かった(p=0.043)。過体重・肥満の頻度は18.1%(n=78)で、女児(12.6%)より男児(22.2%)で高かった(p=0.027)。
親のアンケート回答者の大半(85.7%)は母親だった。
ウエスト周囲長のほうがBMIよりも運動能力と関連する項目が多い
評価した4種類の運動能力テストのうち、横とびについてはBMIとの関連が認められ、過体重・肥満に該当する子ども(平均21.6±12.2cm)は通常体重の子ども(29.4±12.2cm)より有意に跳躍幅が短かった(p=0.039)。その他の3種類のテストはBMIによる有意差はなかった。
BMIとの関連とは対照的に、ウエスト周囲長についてはシャトルラン以外の3種類のテストで、運動能力と有意な関連が認められた(片足立ちp=0.014、幅とびp=0.008、横跳びp=0.003)。なお、ウエスト周囲長が高リスクに該当したのは11.6%(n=49)だった。
続いて幼稚園が立つ地域の社会環境を、人口社会統計学的に評価し生活状況指数(life situation index;LSI)を算出。その結果と園児の運動能力との関係をみたところ、LSIが低い地区の園児はLSIが高い地区の園児に比べて、片足立ち(p=0.044)と幅とび(p=0.043)の記録が有意に低かった。
以上より著者らは本研究の結論を、「この結果は3~6歳の幼稚園児の時点において既に、平均以下の運動能力の重要な影響因子を特定できることを示唆している。今後の研究では、身体活動を促進して過体重・肥満、その他の身体的不活動によって生じる負の結果を防ぐために、幼児期の運動能力低下の要因を特定し、より効果的に介入することを目標とすべきだ」とまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「Beyond BMI: waist circumference and social environment is associated with motor performance ability in kindergartners」。〔BMC Pediatr. 2020 Jan 6;20(1)〕