世界の青少年の5人に4人は運動不足 WHOが146カ国・160万人調査
世界の青少年の8割以上、実に5人に4人以上が、1日60分の中等度以上の運動を週に5日 行うという推奨を満たしていないことが、世界保健機関(WHO)の調査から明らかになり、「Lancet」に論文掲載された。
この調査は、146カ国・地域の11~17歳の青少年160万人を対象とした。調査手法は、各国・地域で実施されている学校ベースの調査のうち、対象者数が100人以上の調査298件の報告を統合し、2001~2016年までの傾向を解析するというもの。行政機関から基礎データが報告されていない国・地域については、文献検索によってデータを追加した。これらの作業によって、146カ国・地域のうち73カ国・地域は同様のアンケートを用い、2001~2016年に少なくとも2回以上データを収集していることがわかった。
2016年の現状
結果について、2016年時点の現状をみると、11~17歳の学生の81.0%(95%不確実性間隔77.8~87.7)がWHOの推奨運動量を満たしておらず、身体活動不十分だった。性別では、男子が77.6%、女子が84・7%で、女子において特に運動不足が顕著だった。国や地域の所得別では、低所得国では身体活動不十分の割合が84.9%、中低所得国では79.3%、中高所得国は83.9%、高所得国79・4%で、男子および女子ともにアジア太平洋地域の高所得国・地域において最も運動不足の割合が高かった(男子89.0%、女子95.6%)。運動不足の割合が最も低かったのは、男子は高所得の西側諸国(72.1%)、女子は南アジア(77・5%)。運動不足の割合が90%を超えていたのは、女子は27カ国に及んだ。一方、男子は2カ国だった。
2001年から16年間での変化
運動不足の割合は、2001年から2016年の間に男子では、80.1%から77.6%へと低下した。しかし女子は2001年が85.1%、2016年が84.7%であり、顕著な変化がみられなかった。国・地域の所得による変化の明確なパターンは認められなかった。
運動不足の性差および所得の影響
前述内容と一部重複するが、2001年から16年間での変化を性や所得別にみると、まず性差に関して男子については中低所得を除く所得カテゴリーで身体活動不足の割合が減少。一方、女子に関しては所得のカテゴリーにかかわらず変化が認められなかった。成人を対象とした調査では、所得が増加するにつれて運動不足が増える傾向があるが、青少年の男子では逆に高所得国で運動不足の割合が低く、低所得国で高い傾向があった。ただし、前述のように、アジア太平洋地域では高所得カテゴリーで、運動不足の頻度が最も高かった。
国や地域別の比較
運動不足の割合が最も高い国は、男子はフィリピンで92.8%、女子は韓国で97.2%で、韓国は両性の合計でも94.2%となり、最も運動不足の割合が高かった。一方、バングラデシュは男子63.2%、女子69.2%、合計66.1%で、最も運動不足の割合が低かった。トンガ、サモア、アフガニスタン、ザンビアの4カ国を除くすべての国・地域で、男子より女子のほうが身体活動量が少なかった。29%に相当する43カ国では、性差が10%を超え、米国とアイルランドでは性差が15%を超えていた。
WHOは2030年までに15%減少を目指している
今回この調査が実施された背景には、WHOが2030年までに青少年と成人の運動不足を15%削減するという目標を2018年に掲げたことが関係している。この目標を達成するためには、あらゆるレベルでの政策施策が求められると、論文の結論は述べている。なお、本調査の限界点として著者らは、調査対象が学校に通学している者のみのため、解釈の注意が必要であることを挙げている。
文献情報
原題のタイトルは、「Global trends in insufficient physical activity among adolescents: a pooled analysis of 298 population-based surveys with 1・6 million participants」。〔Lancet Child Adolesc Health. 2020 Jan;4(1):23-35〕