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運動によるストレス・心疾患に及ぼす効果をとりまとめて報告

2019年10月01日

運動によるストレスや心疾患に対する影響を詳細に検討した結果が報告された。

運動によるストレス・心疾患に及ぼす効果をとりまとめて報告

ストレスの軽減や心血管疾患の抑制に運動が良いことはよく知られているが、どの程度効果的なのかは明確でない。本論文は、1974年から2018年に発表された報告を対象に、「心理社会的ストレス」「心血管疾患」「身体活動」「運動」「心臓リハビリテーション」「チームスポーツ」という語句でPubMed検索した結果のナラティブレビューであり、運動とストレス、心疾患に関するデータやトピックがまとめられている。以下はその抜粋の箇条書き。

ストレスは3番目の心疾患危険因子

2001年9.11の同時多発テロ後、数時間から数日の間、ニューヨーク市民の心室細動・心室頻脈が2.3倍に増加した。臨床的には心疾患が否定されているにも関わらず、ストレスにより心筋虚血に関連する異常な心電図変化がみられる可能性がある。ストレスは不整脈の発生閾値を下げ、血圧を上昇させ、炎症反応を増加させ、血液の凝固能を亢進させる。心疾患の危険因子としてストレスはオッズ比(OR)約2.7で、血清脂質高値(OR約3.3)、喫煙(約2.8)に次いで3番目の要因(4位以下は、糖尿病約2.3、高血圧約1.9、腹部肥満約1.6)。

敵がい心は全死亡などのイベントリスクを有意に高める

敵がい心は、冠動脈疾患の増加、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)のレベル上昇等と関連し、高レベルの敵がい心により心血管疾患の有害事象が5倍に増えるとの報告がある。敵がい心の程度を四分位に分け、年齢調整後のイベント発生率を検討すると、全死亡(p=0.02)および複合エンドポイント(脳卒中、一過性脳虚血、心筋梗塞、心不全、全死亡.p=0.0003)の有意なリスク上昇が確認された。

運動による心血管疾患への効果

身体活動の増加、定期的な運動、および心肺運動能の改善は、心理社会的ストレスによる有害事象を改善する。運動トレーニングは、心拍数の変動性、圧反射反応性、QT延長、自律神経平衡、炎症、凝固能、内皮機能など、うつ病に関連する全身障害の多くを改善する。心不全患者が運動心臓リハビリテーションを行うと死亡率が59%低下。

ストレスが多い人が運動すると死亡率が低下する

抑うつ症状を伴う心不全患者は死亡率が4倍高い。ベースライン時のストレス状態が高い/低い、追跡中の運動量増加幅が大きい/少ないで4群に分け、対象者を5年間追跡した結果、ベースライン時に高ストレスでありながらも運動量を増やした群の死亡リスクが最も低かった。この検討において、リスクが最低だったベースライン時のストレス「高」・運動量増加幅「大」の群を基準とした場合、ストレス「低」・運動量増加幅「大」の群の累積ハザードは約0.08、ストレス「低」・運動量増加幅「少」の群は約0.1で、ともにリスク上昇がみられたが、ストレス「高」・運動量増加幅「少」の累積ハザードは約0.32と顕著に上昇していた。

適切な頻度での運動は精神的な健康に良い

定期的に運動する人は、そうでない人と比較して精神的な健康障害が43%少ないとの報告がある。その効果は1回あたり30〜45分、週に3〜5回運動した人で最も強かった。特にサッカー、バスケットボール、バレーボールなどのチームスポーツとメンタルヘルスが最も強い関連性を示した。運動の頻度が高ければ高いほど良いというわけではなく、月に24回以上、または1回あたり90分を超える運動をした人では、運動による精神的健康上のメリットが大きく減少する。月に12〜24回の運動頻度が最適で、それ未満またはそれ以上では、精神的健康の悪化と関連する。

2人以上でプレイするスポーツは生命予後改善効果が大きい

余命を伸ばすのに最も効果的な身体活動は、ラケットスポーツ、ゴルフ、サッカーなど、2人以上でプレイする競技。ランニングやトレーニング器具を使ったエクササイズより寿命を大幅に延ばす。年齢、性別、教育レベル、収入、アルコール摂取、喫煙、糖尿病、および身体活動量で調整し、非活発な生活習慣の者を対照として生命予後を検討すると、フィットネスクラブは約1.5年、ジョギングは約3.2年、水泳は約3.4年、サイクリングは約3.7年、サッカーは約4.7年、バドミントンは約6.2年、テニスは約7.4年の寿命延長効果があると推測された。

本論文ではこのほかにも、うつ病と心血管疾患、不安と心血管疾患、心臓リハビリテーション、生活習慣の修正、薬物介入などのテーマでさまざまなデータやトピックを紹介し、結論として「特にインタラクティブな環境で運動が行われる場合、非感染性疾患のリスクを軽減し、ことに心理社会的ストレスを軽減する可能性がある」とまとめている。

原題のタイトルは、「Exercise Counteracts the Cardiotoxicity of Psychosocial Stress」。〔Mayo Clin Proc. 2019 Sep;94(9):1852-1864〕

原文はこちら(MDPI)

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