英国のボディビルダー プロとアマの栄養戦略の違いは何か
ボディビルダーの栄養摂取状況を詳細に検討した結果が英国から報告された。プロとアマの比較から、炭水化物摂取量や総摂取エネルギー量などに違いがあることが示された。
ボディビルダーには競技参加のための準備フェーズと競技参加後の回復フェーズがあり、それにあわせた栄養・トレーニング戦略をとっている。準備フェーズでは競技が近づくにつれて身体活動量を増やし、エネルギー摂取量を減らすことが多い。これらの調整方法はボディビルダー本人またはコーチの経験・工夫に負うところが多く、体系的な研究はあまりなされていない。一般的には炭水化物摂取を控えることが多い傾向があるが、最近報告された英国のハイレベルボディビルダーを対象とする横断研究では、相反する結果が得られている。
本研究の対象は、2017年に英国のナチュラルボディビル(筋肉増強剤などを用いないボディビル)選手権等に参加したボディビルダー47名。内訳は、男性が33名でうち8名はプロ、女性は14名でうち5名はプロ。競技参加準備フェーズの開始時点と終了時点(競技参加直前)の体重、栄養摂取状況などを比較検討した。
対象者の背景をフェーズ開始時点でプロとアマを比較してみると、男性選手の競技歴(プロ12.3 vs アマ2.4年)と体重(95.6 vs 88.3kg)、BMI(30.4 vs 28.4)に有意差があった。女性選手はプロとアマで有意差のある指標はなかった。
以下に準備フェーズ中の栄養摂取量等の推移やプロとアマを比較した結果の一部をピックアップする。
栄養摂取量
準備フェーズ中はプロとアマともに、エネルギー摂取量と主要栄養素の摂取量が、時間経過とともに有意に減少していった。男性選手では、エネルギーと炭水化物および食物繊維の摂取量において、プロの方が有意に多かった。これはプロの方が体重が重いことの影響もあると考えられるが、炭水化物摂取量については体重で補正後も有意差がみられた。
男性の栄養素摂取比率は、炭水化物:プロ49.2~49.7%,アマ39.8~43.4%、蛋白質:プロ31.2~34.0%,アマ34.0~39.3%、脂肪:プロ13.2~15.3%,アマ17.7~19.7%。なお、女性選手ではプロとアマの有意差はなかった。
食品の多様性
摂取した食品数は、男女ともプロ/アマで有意な差はなかった。女性において、アマは畜産食品の点数が多く、プロは魚介類の点数が多いという特徴がみられた。
サプリメント摂取
女性のプロはアマよりも有意に多くサプリメントを摂取していた(10.0 vs 8.0品目)。男性も同様の傾向がみられたが有意差はなかった(8.1 vs 6.3品目)。最も多く摂取されていたサプリメントはプロテインパウダーで、男女ともに100%が摂取していた。
推定エネルギー不足量
1日の総摂取エネルギー量から推定エネルギー消費量を差し引いてエネルギーの過不足を算出すると、男性はフェーズ開始時点でプロは+2.0kcal/kg、アマは-3.39kcal/kg、フェーズ終了時点で同順に-1.1kcal/kg、-9.3kcal/kgであり、いずれも有意差があった。女性は有意差がなかった。
体重の変化
準備フェーズ中に、男性のプロは13.4kg、アマは13.1kg、女性のプロは8.1kg、アマは9.7kg減量していて、プロとアマの間に有意差はなかった。ただし男性において、週あたりの体重減少率がプロは0.5%、アマは0.7%で、有意差をもってアマの減量スピードが速かった。これはプロの男性は準備フェーズにより長い時間をかけていたことによる。
これらの結果の結論として著者らは、「プロがアマと比較して準備フェーズに時間をかけゆっくりと減量していることが、推定エネルギー不足量の抑制につながっている可能性が高い。体重減少が遅いことはエネルギー不足時に筋肉量を維持するための効果的な戦略となり得る」とまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「Nutritional strategies of British professional and amateur natural bodybuilders during competition preparation」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2019 Aug 22;16(1):35〕