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酷暑や酷寒で消費エネルギー量が変化しても摂取量は変わらない カナダ軍歩兵での検討

酷暑や酷寒という過酷な環境温度により消費エネルギー量が変化しても、摂取エネルギー量は大きく変わらないという、カナダ軍の軍人を対象とした研究結果が発表された。

酷暑や酷寒で消費エネルギー量が変化しても摂取量は変わらない

軍人が砂漠や極地などの過酷な環境で作戦に従事した場合、1日の消費エネルギー量は10,000kcalに達するとの報告がある。またカナダ軍で行われた10~25℃という通常の環境温度下での実験では1日3,300~6,000kcal消費されたと報告されている。環境温度が酷寒または酷暑となれば、消費エネルギー量が著しく変化すると考えられるが、そのような条件で摂取エネルギー量がどのように変化するかはよくわかっていない。本論文の著者らはカナダ軍軍人からボランティアを募り、この疑問を明らかにするための研究を行った。

この研究は、酷暑、酷寒、温暖な環境での模擬的な作戦行動の実施、および安静(座業)という4条件において、摂取エネルギー量がどのように変化するかを検討したもの。4条件それどれの環境設定は以下のとおり。酷暑:30±0.2℃、湿度31±1%、酷寒:-10±0.4℃、湿度56±3%、温暖:21±0.2℃、湿度32±4%、安静21±0.3℃、湿度29%±2%。被験者に対して無作為の順序でこの4条件を課した。

被験者として志願したのは27名。うち9名はスケジュールの都合等により、研究期間中に脱落し、残りの18名が解析対象となった。主な背景は、男性が14名(78%)、年齢34±11歳、体重79±13kg、BMI26±4、体脂肪率23±8%。

アルコール摂取と激しい運動を48時間控えた状態で午前7時に研究室到着後、軍事用配給パック(調理済みですぐに喫食可能な食品・飲料)の中から朝食を自由意志で選択し喫食。続いて、安静条件を除く3条件では2時間の模擬的な作戦行動(異なる速度・傾斜・負荷でのトレッドミル走行、弾薬の持ち上げ、ストレッチャーの搬送、85kgのダミー人形の牽引など)を実施し、続いて2時間休憩。これを2回繰り返した。安静条件では、座位や射撃の想定などを行った。休憩時間中に配給パックから自由意志で昼食を選択し喫食した。4群ともに8時間の拘束後は夕食用の配給パックを自由選択し、研究室から帰宅後、自由に喫食した。

各条件での摂取状況をみると、研究室での8時間のエネルギー摂取量は平均1,970±718kcalで群間に有意差がなかった。また主要栄養素の割合は、炭水化物59%、脂質28%、蛋白質13%で、これも有意差はみられなかった。研究室から帰宅後の6時間以内のエネルギー摂取量も平均1,009±527kcalであり、群間に有意差がなかった。つまり、過酷なストレスから解放された後も、エネルギーバランスを補償する食行動に繋がらなかった。

被験者へ手渡された配給パックの総エネルギー量は4,093kcalだったが、このうち実際に喫食されたのは2,979kcal、72.8%だった。結論として、研究室での8時間および帰宅後の6時間におけるエネルギー摂取量に、4条件による有意な差はなかった。なお、食事に関する嗜好性が配給パックからの摂食量に影響を与えた可能性は、被験者の味覚等に関する満足度調査から否定された。

著者らは、本研究における消費エネルギー量が24時間で3,500kcal程度と、過酷な条件の再現としては十分でないこと、また、より長期にわたる過酷条件下におかれた場合は結果が変わる可能性を挙げつつも、本研究の介入期間以上の長期間の負荷が続いた場合には、パフォーマンスの低下や拒食症リスクの上昇が起き得ると述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Comparison of dietary intakes of Canadian Armed Forces personnel consuming field rations in acute hot, cold, and temperate conditions with standardized infantry activities」。〔Mil Med Res. 2019 Aug 16;6(1):26〕

原文はこちら(Springer Nature)

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