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アスリートをサプリメント使用に駆り立てるものは何か? 体系的な情報提供が必要

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調査によって差があるがアスリートの栄養補助食品利用率は40~93%と報告されている。例えばカナダからの報告ではアスリートの88.4%が栄養補助食品ユーザーであり、スポーツドリンク、マルチビタミン/ミネラル、蛋白質サプリメント、ビタミンCがよく利用されている。別の報告では、米国の学生スポーツアスリートでは、ビタミン/ミネラルの利用が73.3%、カロリー補充飲料47.0%、蛋白質補給40.3%、クレアチン31.4%に上るという。

栄養補助食品の安易な利用は時に健康への悪影響やドーピングの陽性所見につながる可能性も否定できない。にもかかわらずアスリートが健康補助食品を利用するのには、どのような背景があるのだろうか。

この疑問に対し本研究では、アスリート個人の栄養に関する知識の多寡が栄養補助食品の利用と関連するのではないかとの仮説に基づき、栄養と栄養補助食品に関する知識の主観的および客観的評価を行っている。

オリンピック出場経験のあるアスリート900名強を調査

調査対象はオリンピック出場経験のあるスポーツ選手912名(22.11±3.37歳、女性356名)。競技種目は、バスケットボール(n=228)、サッカー(n=324)、バレーボール(n=154)、ハンドボール(n=206)。すべての選手は調査時点で18歳以上であり、2016/2017年シーズン中にクロアチアとコソボでトップレベルの競争大会に参加したチームのメンバーだった。調査対象チームは無作為に選択された。また調査対象チーム・個人と栄養補助食品関連企業との支援関係はなかった。

栄養や栄養補助食品に関する知識の主観的評価としては、選手個人が回答した「知識が乏しい」「平均以下」「平均」「良い/非常に良い」という4段階で階層化した。一方、客観的評価としては、スポーツ栄養に関する10項目の質問に対し「はい」「いいえ」で答えてもらい、正答率をスコア化した。その質問とは、例えば「激しい発汗後の回復には純水摂取が最適、競技終了後4時間は食べない方がよい、有酸素持久力トレーニングの後は炭水化物含有飲料を飲むべきでない、蛋白質補給は水の摂取量の増加を必要とする、β−アラニンはアミノ酸である、炭水化物飲料は排尿を促し脱水を招くため試合前には避けるべき、など。

栄養補助食品の利用状況については、「定期的に利用する」「不定期に(時々または稀に)利用する」「利用しない」の三択とし、前二者を選択した者に対しては、利用する以下の栄養補助食品別に利用頻度を質問した。ビタミン/ミネラル、炭水化物、タンパク質/アミノ酸、アイソトニック(等張性飲料)、鉄補給、回復補助食品、エネルギーバー、クレアチン、ほか。

このほか、栄養に関する学習方法として、医師からの情報提供、教育機関への受講、自己学習の三択で回答してもらった。

知識の自己評価が高いのはバレーボール選手で、低いのはサッカー選手

調査の結果、全体の12.7%が定期的に栄養補助食品を利用し、35.6%が不定期に利用していた。性別による有意差はなかった。スポーツ競技別にみると、バスケットボール選手の利用率が高く(定期的及び不定期の合計で53%)、他はハンドボールが49%、バレーボール47%、サッカー46%だった。

利用頻度の高い栄養補助食品は、ビタミン/ミネラルが最多で全体の67%の選手が少なくとも「稀に」以上使用していた。続いて等張性飲料59%、エネルギーバー58%、鉄40%、回復補助剤40%、炭水化物37%、蛋白質/アミノ酸36%、クレアチン11%、その他(朝鮮人参、オメガ-3など)9%。

栄養や栄養補助食品に関する知識の評価について、まず主観的評価をみると競技による差が大きく、バレーボールは最も自己評価が高く(良い/非常に良いが17%、悪いが8%)、サッカーは自己評価が最も低かった(同順に3%、60%)。しかし客観的評価をみると、スポーツ競技による有意差はなく、平均得点4.58±2.27だった。

知識の習得方法としては、大多数の選手が最も重要な情報源として「自己学習」を挙げた。

栄養の知識と栄養補助食品利用率が相関。ただし自己評価と客観的評価が乖離

全例解析により、アスリートの年齢と栄養補助食品の利用との間に負の相関が認められ、高齢であるほど栄養補助食品の利用が少ないことがわかった(定期的な利用のオッズ比:0.91,96%信頼区間:0.85-0.98)。また、栄養や栄養補助食品に関する知識と、栄養補助食品の利用状況に正の相関が認められた。ただし、客観的評価(OR:1.15,95%CI:1.04-1.26)に比べて主観的評価(OR:1.67,95%CI:1.44-1.92)は、栄養補助食品利用のより強力な予測因子だった。なお、競技成績との明らかな相関が認められたのはバレーボール選手のみで、成績が良いほど栄養補助食品を定期的に利用している者が少なかった(OR:0.33,95%CI:0.13-0.84)。

自己学習ではなく、体系的な情報提供が必要

年齢と栄養補助食品の利用状況に負の相関がみられたことに関し本論文の著者らは、経験の浅い若手アスリートはベテランアスリートに比べて熟練度が低く、そのギャップを埋める手段として栄養補助食品を選択しやすいことや、栄養補助食品に関するマーケティング広告の影響を受けやすいためではないかと考察している。

他方、本研究から明らかになった問題として、栄養に関する知識の主観的評価と客観的評価がほとんど相関せず(r=0.10)、アスリートが自身の知識レベルを過大評価しやすい傾向があることを指摘している。またアスリートの多くが情報源として「自己学習」を挙げたことも課題とし、アスリートが体系的に学習できる機会の必要性があると述べている。

文 献

原題のタイトルは、「What drives athletes toward dietary supplement use: objective knowledge or self-perceived competence? Cross-sectional analysis of professional team-sport players from Southeastern Europe during the competitive season」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2019 Jun 14;16(1):25〕

原文はこちら(BioMed Central Ltd)

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