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味覚は鍛えられることを科学的に実証 味を思い出す訓練で「舌が肥える」メカニズムを解明 東北大学

なぜ美食家は舌が肥えているのか? そのメカニズムの一端が解明された。東北大学大学院医学系研究科の研究グループの成果であり、「Chemical Senses」に論文が掲載されるとともに、プレスリリースが発行された。

味覚は鍛えられることを科学的に実証 味を思い出す訓練で「舌が肥える」メカニズムを解明 東北大学

発表のポイント

  • ヒトの味覚(感受性)の形成や変化については不明な部分が多く、とりわけ、ソムリエや料理評論家などの研ぎ澄まされた味覚の記憶のメカニズムはほとんどわかっていなかった。
  • 5種類の異なる甘味(グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース)を用い、味覚想起訓練※1により、微妙な味の違いを見分ける味覚が鋭敏になることを実証した。
  • この知見は、味覚想起訓練がさまざまな味覚障害や高齢者の食欲低下に対する新しいリハビリテーション法として応用可能であることを示唆している。

※1 味覚想起訓練:味を思い出す(想起)課題を通して味覚識別を向上させる新しいトレーニング手法。

研究の概要:味覚想起訓練で「舌が肥える」ことを証明

なぜ美食家は舌が肥えているのか? そのメカニズムの一端が解明された。

健康な成人40名を対象に、さまざまな甘味の微妙な違いを見分けて覚えていく「味覚想起訓練」を実施した結果、この訓練によって、微妙に味の違いを識別できるようになり、その味覚が鋭敏になっていくことが確認された。

この成果は、味の記憶と感覚の学習が脳の中でどのように結びついているかを理解するための重要な手がかりとなるものであり、味覚障害や加齢による食欲低下に対する新しいリハビリテーション法としての応用が期待される。現在、東北大学病院リハビリテーション科において、味覚想起訓練による味覚リハビリテーション診療の実践も進められている。

研究内容の詳細

研究の背景と経緯:味覚は鍛えられるのか?

これまで、「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」などの基本味の違いを識別する仕組みは研究されてきたが、同じ「甘味」の中で、例えばショ糖(スクロース)とブドウ糖(グルコース)のように同一味質の異なる物質を、どう感じ分けているのかはほとんどわかっていなかった。また、「味を覚える」「味を思い出す」といった味覚の記憶や想起のメカニズムも明らかでなく、「食の楽しみ」を支える脳の働きを理解するうえで大きな課題となっていた。

研究の内容:3日間の味覚想起訓練の前後比較、および対照群との比較

東北大学大学院医学系研究科臨床障害学分野の研究者らは、健康な成人40名を対象に、さまざまな甘味の微妙な違いを見分けて覚えていく「味覚想起訓練」を実施した。

参加者はまず、5種類の甘味物質(グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース)について、それぞれどのくらいの濃度で味を感じ取れるか(味覚閾値※2)の測定を受けた。その後、自身の味覚閾値よりも一段階薄い濃度の甘味物質を繰り返し味見してもらい、「これはどの甘味物質だったか」を思い出して当てる訓練を3日間連続で行った(図1)。

※2 味覚閾値:味を感じ取るために必要な最小濃度。閾値が低いほど感度が高い。

図1 甘味味覚想起訓練の流れ

甘味味覚想起訓練の流れ

5種類の甘味物質(グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース)について、それぞれどのくらいの濃度で味を感じ取れるか(味覚閾値)を測定。その後、自身の味覚閾値よりも一段階薄い濃度の甘味物質を繰り返し味見してもらい、「これはどの甘味物質だったか」を思い出して当てる訓練を3日間連続で行った。
(出典:東北大学)

その結果、訓練を行ったグループでは、すべての甘味物質において味覚の感度(味覚閾値)が有意に改善し、3日間で味をより鋭く感じ取れるようになった(図2)。これは、味覚にも学習による変化(可塑性)があることを示すもので、視覚や聴覚と同じように、味覚も「鍛えることができる」ことを明確に示した成果。

図2 訓練群と対照群における5種類の甘味閾値の変化

訓練群と対照群における5種類の甘味閾値の変化

訓練を行ったグループでは、すべての甘味物質において味覚の感度(味覚閾値)が有意に改善し、3日間で味をより鋭く感じ取れるようになった。
(出典:東北大学)

優れた味覚は生まれつきの才能ではなく、経験によって形成されることが知られている。例えば、ソムリエが食品と飲料の最適な組み合わせを判断できるのは、特別に敏感な味覚や嗅覚を持つからではなく、長い経験の中で「良い味」のデータを脳に蓄積してきた結果だと報告されている。

さらに、日本の慣用句にも「舌が肥える」という表現がある。これは、良い味を食べ慣れることで味の微妙な違いを鋭敏に感じ取れるようになるという意味であり、今回の研究結果はまさにその科学的裏づけともいえる内容。

味を思い出す訓練を重ねることで、味の細やかな違いを感じ取る味覚の感受性や識別力が鋭敏になることが示された。この成果は、食欲の低下や味覚障害の改善につながる可能性があり、特にこれまで有効な治療法がほとんどなかった高齢者の食欲不振(anorexia of aging)に対する新しいリハビリテーション法の開発にも道を開くもの。

今後の展開:高齢者の食欲低下などに対する味覚リハプログラムの開発へ

本研究は、「味を思い出す力」が異なる味質の識別だけでなく、同じ味質の微妙な違いを感じ取る能力も高めることを示した世界初の報告。

研究者らは、「今後は脳活動計測や画像解析を組み合わせて、味覚の記憶と脳の働きの関係をより深く明らかにし、味覚障害患者や高齢者の食欲不振に対する科学的根拠に基づいた味覚リハビリテーションプログラムの開発を目指す」としている。

プレスリリース

美食家の舌が肥えるメカニズムを解明 -ヒトは味の微妙な違いを記憶できる-(東北大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of taste recall training using five sweet substances on sweet taste sensitivities」。〔Chem Senses. 2025 Jan 22:50:bjaf057〕
原文はこちら(Oxford University Press)

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