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女性アスリートのパフォーマンス向上、回復促進、健康維持に有効な栄養戦略とは? 初の体系的レビュー

女性アスリートまたは活発な身体活動を行っている女性の、パフォーマンス、回復、健康のための栄養戦略に関するシステマティックレビューの報告を紹介する。スペインやブラジルの研究者によるもので、著者らは本報告を「このトピックに関する初のシステマティックレビュー」だとしている。

女性アスリートのパフォーマンス向上、回復促進、健康維持に有効な栄養戦略とは? 初の体系的レビュー

女性アスリートの食事・栄養戦略のシステマティックレビュー

オリンピックなどの大規模スポーツイベントにおける女性アスリートが増加し、活発な身体活動を行っている女性の増加が世界的に進行しており、昨年のパリ五輪の参加選手数は男性と女性がほぼ同数となった。それにもかかわらず、女性に特化した身体活動のための栄養に関する推奨事項は確立されていない。これを背景に著者らは、「食事やサプリメントのアプローチを含む、どのような食事戦略が、女性アスリートや身体的に活動的な女性のスポーツパフォーマンス、回復、健康状態を改善できるか」という疑問の答を、システマティックレビューにより検討した。

システマティックレビューとメタ解析の推奨報告項目(PRISMA)ガイドラインに準拠し、Pubmed、Scopus、Web of Scienceという文献データベースを使用して、各データベースに2000年1月1日~2023年7月3日に収載された論文を対象とする検索が行われた。包括基準は、研究対象が女性のみであり「アスリート」と明示されているか米国スポーツ医学会の推奨する身体活動量を超える集団で、比較対照群を置き食事・栄養介入のスポーツパフォーマンスや健康状態に対する影響を検討し、英語、ポルトガル語、スペイン語のいずれかで報告されている無作為化比較試験。

一次検索で3,431報がヒットし重複削除後の3,169報を2名の研究者が論文のタイトルと要約に基づき独立してスクリーニングを実施し、99報を別の2名の研究者が全文精査。採否の意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決した。最終的に71件の研究の報告を適格と判断した。

抽出された研究報告の特徴

71件の研究の参加者総数は1,654人で、32.5%が競技アスリート、30.7%が中~高強度のトレーニングを行っているアスリートであり、37.2%がレクリエーションアスリートだった。食事介入を行った研究が17件、サプリメント介入を行った研究が54件だった。

食事介入を行った研究のうち7件は並行群間比較デザイン、11件はクロスオーバーデザインであり、参加者数は計393人で、26.0%が競技アスリート、16.5%が中~高強度のトレーニングを行っているアスリート、57.5%がレクリエーションアスリートだった。サプリメント介入を行った研究のうち20件は並行群間比較デザイン、30件はクロスオーバーデザインであり、参加者数は計1,261人で、34.6%が競技アスリート、37.7%が中~高強度のトレーニングを行っているアスリート、27.7%がレクリエーションアスリートだった。

論文では、食事介入とサプリメント介入とに分けて、レビューの結果がまとめられている。それぞれについて、一部を紹介する。

食事介入研究の結果の要約

食事中の炭水化物摂取量を操作した研究のうち、1件の研究では運動前のグリコーゲンレベルの上昇、運動中の炭水化物酸化の促進、グリコーゲン消費量の増加が報告され疲労困憊に至る時間の延長が報告されていた。グリセミックインデックス(GI)に関しては、運動前に高GI食を摂ると、最大強度以下の運動で炭水化物の酸化が促進されることが報告されている。

ある研究では、運動前にオートミールを牛乳と一緒に摂取すると、運動後の活性酸素種(ROS)レベルが低下する可能性が示されている。一方、炭水化物の生物学的利用能(バイオアベイラビリティー)が非常に低い食事(具体的にはケトン食)は、体組成にプラスの影響(体脂肪率の低下と除脂肪体重の増加)を与えるが、神経筋の適応には影響しないと報告されている。

高タンパク質食に焦点を当てた研究では、そのような食事が健康に悪影響を及ぼすことはないが、介入期間とパフォーマンス変数との関連は認めなかったと報告されていた。ただし、高タンパク質食(2.0g/kg/日)は低タンパク質食(1.0g/kg/日)に比べて、筋関連指標に有益な影響が認められると報告されている。筋肉への影響という点では、多価不飽和脂肪酸リッチな食事(高PUFA食)も対照食と比較して、筋線維の断面積の増加と関連していることが報告されている。

その他、就寝前の牛乳(355mL)の摂取は最大強度以下の運動での代謝反応に影響を与え、炭水化物代謝を促進すると報告されている。一方、月経異常のアスリートに対する抗酸化食や高エネルギー食については、肯定的な結果の報告がみられない。

サプリメント介入研究の結果の要約

欠乏症の予防・治療のためのサプリ摂取の有用性を検討した研究のうち、鉄補給に焦点を当てた3件の研究では、競技アスリートのヘモグロビンレベルと血清フェリチン値に対するプラス効果が報告されている。ビタミン補給に関しては、葉酸は血行改善とわずかに関連している可能性があるが、ビタミンCやEなどの抗酸化作用を有するビタミンは、身体パフォーマンスの向上や回復の促進という点でのエビデンスは示されていない。

パフォーマンス向上のためのサプリメントに関して最も重要な知見は、カフェインの有効性を検討した10件の研究のうち9件で、少なくとも1種類の指標にエルゴジェニック効果が報告されていることである。一酸化窒素(NO)前駆物質に関しては、エリートホッケー選手を対象に実施された研究で、ビート根ジュースの摂取後に模擬試合で身体能力の向上が見られなかったという報告がある一方、身体的に活発、または中程度のトレーニングを行っている女性を対象とする4件の研究では、何らかの評価指標にエルゴジェニック効果が報告されている。

クレアチンに関しては、介入期間が1週間未満の研究では身体パフォーマンスの改善は示されなかったが、介入期間がより長い研究では体組成上のメリットと、一部の研究で身体パフォーマンスの向上が報告されていた。

女性対象研究が少なく、さらに月経の影響を考慮した研究は非常に少ない

結論は以下のように述べられている。「食事については、炭水化物含有量の多い食事は筋グリコーゲン枯渇を引き起こす活動でのパフォーマンスを高める。また、運動前の高GI食や高炭水化物食の摂取は、炭水化物代謝を促進する。他方、1日を通して5~6回、タンパク質食品を摂取し、1回の摂取量が25gを超えると、筋タンパク質の同化が促進される。サプリについては、パフォーマンスを高めるために摂取するカフェイン、NO前駆物質、β-アラニン、特定のスポーツ食品サプリ(炭水化物、タンパク質、またはその組み合わせ、微量栄養素など)は、女性アスリートおよび身体的に活動的な女性のスポーツパフォーマンスや健康状態に良い影響を与える可能性がある」。

なお、「女性アスリートや身体的に活動的な女性のパフォーマンスと健康状態に対する食事戦略の効果を検討した研究は非常に限られており、研究間に大きな異質性が認められる。さらに、月経機能への影響に関する情報が非常に限られている。また、全体として、食事介入の研究よりもサプリ介入の有効性に関する研究のほうが多かった」と総括し、「食事やサプリ摂取が男性と女性にどのような異なる影響を与えるかについて、現在の知見の不足を埋めるために、性別に特化したさらなる研究が不可欠」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutritional Strategies for Optimizing Health, Sports Performance, and Recovery for Female Athletes and Other Physically Active Women: A Systematic Review」。〔Nutr Rev. 2025 Mar 1;83(3):e1068-e1089〕
原文はこちら(Oxford University Press)

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