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スポーツ習慣がある人の3人に1人が「痔」を患っていて過半数が受診していない イタリアで調査

今回は、アスリートの痔疾(痔)に関するパイロット研究の報告を紹介する。イタリアからの報告で、Webを用いた横断調査の結果、習慣的にスポーツを行っている人の3人に1人が痔もちであり、ボディビルや自転車、乗馬での有病率が高く、痔を有するアスリートの過半数が治療を受けていないという。

スポーツ習慣がある人の3人に1人が「痔」を患っていて過半数が受診していない イタリアで調査

アスリートと痔の関連についての初の研究報告

成人の痔の有病率は、39~52%と報告されている。ただし、痔という疾患の報告には羞恥心が伴うために、このような有病率は過小評価されたものだとする指摘もある。

痔の病態生理は十分に解明されていないが、リスク因子としては、便秘、排便時のいきみ、肥満などが想定されており、また食事・栄養との関連では、水分摂取の不足、食物繊維の不足(時に過剰)、および、腸内細菌叢の乱れなどが、便秘リスクを押し上げる可能性があるとされている。それらのほかにも、高強度または長時間の運動との関連を指摘する報告もみられる。ただし、アスリート集団での痔の有病率やリスク因子については、これまでほとんど研究されていない。

今回取り上げる論文は、習慣的にスポーツを行っている人を対象として、痔の有病率、およびその関連因子を横断的に調査したパイロット研究の報告。著者らは、「スポーツと痔の関連を検討した初の研究」としている。

アスリートの痔の有病率は34%で男性で高く、自転車・乗馬、ボディビルで高い

この研究は、2023年5月にイタリアの大腸・肛門外科の学術団体の会員を介して告知され、Web調査として実施された。回答の適格基準は、年齢が18歳以上で週2回以上スポーツ活動を行っている(または現在は行っていないが、アンケート回答の3年以内前までは行っていた)人であり、除外条件は肛門外科手術の既往者および膠原病患者。

312人が回答し全員が解析対象とされた。主な特徴は、平均年齢38±14.5歳、男性53.9%であり、トレーニング歴は11年未満が58.7%、12~18年が21.5%、18年超が19.9%で、アスリートとして競技会に参加している選手が11.2%であって、週あたりのトレーニング頻度は1~2回が56.4%、3~4回が34.0%、4回超が9.6%だった。

痔の有病率は34.0%と、ほぼ3人に1人だった。性別にみると、男性は40.5%、女性は26.8%であり、男性に多いという有意差が認められた(p=0.026)。また、年齢については痔を有する群が43±12.3歳、対照群(痔のない群)が36±15.0歳であり、痔を有するアスリートは有意に高齢だった(p<0.001)。

トレーニング歴、トレーニング頻度、競技会参加の有無では、痔の有病率に有意差がみられなかった。

競技カテゴリー別の比較

主として行っている競技別に有病率を比較すると、平均の34.0%よりも高い競技として、自転車・乗馬(57.4%)、ボディビル(47.8%)、および、サッカー・ラグビー・バスケットボール・バレーボール・テニス・パデル(44.1%)が挙げられた。反対に、有病率が平均よりも低い競技は、アルペンスキー・ノルディックスキー・トレッキング(14.3%)、ランニング(22.7%)、陸上競技・ダンス・クライミング(33.3%)などが該当した。

性別にみた場合、男性で有病率が最も高いカテゴリーはボディビルであり、71.43%に及んだ。女性では自転車・乗馬の66.67%だった。

高齢、およびボディビルを行っていることが痔に関連

次に、痔を有することを従属変数とし、独立変数を年齢、性別、競技カテゴリー、トレーニング歴、トレーニング頻度、競技会参加の有無とした多変量解析を施行。

その結果、痔を有することに独立した正の関連のある因子として、年齢(1歳高齢であるごとにOR1.03〈95%CI;1.01~1.05〉)とボディビルを行っていること(OR2.88〈1.05~7.90〉)の2項目が特定された。自転車・乗馬はオッズ比が2.39ながら信頼区間が1をまたぎ、非有意だった。

一方、アルペンスキー・ノルディックスキー・トレッキングを行っていることは、痔の有病率が低いことと独立した関連があった(OR0.24〈0.06~0.95〉)。性別やトレーニング歴、トレーニング頻度、競技会参加の有無は、痔の有病率と独立した関連が認められなかった。

痔もちアスリートの半数は医師の診察を受けていない

痔の罹患者に対しては、痔を有することの影響や対処行動などが質問された。

その結果から、痔を有するアスリートの19%が身体活動に中等度以上の影響を感じており、トレーニングの頻度または強度を減らさなければならないとの回答が24%に上った。その一方で、専門医の診察を受けた割合は52%にとどまり、ほぼ2人に1人はセルフメディケーション等で対処していると考えられた。

ボディビルが痔のリスクとなる理由の考察

これらの結果を基に著者らは、「いくつかのスポーツは、痔疾の発症や悪化に影響を及ぼす可能性がある。とはいえ、身体活動には多くの健康上のメリットがあるため、痔疾を原因にスポーツをやめるべきではなく、患者に対して正しい情報とアドバイスを提供する必要がある」と結論を述べている。

なお、ボディビルが痔のリスクとなる理由については、先行研究からの考察として、高強度の負荷に対応し腹圧が上昇すること、それとともに肛門周囲の血管の異常な拡張が生じたり、繊維組織が変性しやすくなることなどの影響が記されている。

これら以外にも栄養面からは、高タンパク食による食物繊維摂取量の減少、動物性タンパク質の過剰摂取による腸内細菌叢への悪影響、タンパク質代謝に伴う尿素の生成・排泄に水分を要するために脱水傾向が生じやすい――などのために便秘リスクが高まるという経路も考慮すべきかもしれない。

文献情報

原題のタイトルは、「Sport practice and hemorrhoidal disease: results from a self-assessment questionnaire among athletes」。〔Int J Colorectal Dis. 2025 Jan 8;40(1):8.〕
原文はこちら(Springer Nature)

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