ハンドボール選手のサプリメント利用状況を調査 ハイレベル選手はサプリ摂取率が高い
ハンドボール選手のスポーツサプリメントの摂取状況を調査した結果、性別や競技レベルによって、利用しているサプリが有意に異なることが明らかにされた。男性、およびハイレベルの選手ほどより多くのサプリを摂取しており、エリートレベルではクレアチン水和物の摂取率が他群より高いという。スペインからの報告
性別、および、3段階の競技レベル別にサプリ利用状況を解析
ハンドボール選手のサプリメントの摂取状況に関する知見は十分でなく、性別や競技レベルで摂取サプリが異なるのかは明らかにされていないことから、この論文の著者らスペイン国内のハンドボールアスリート対象調査を行った。
研究前の仮説の一つとして、「ハンドボール選手は摂取するサプリを適切に選択しており、その多くはAIS分類の『A』に該当するものである」という項目も立てられていた。スポーツサプリメントのAIS分類は、オーストラリア国立スポーツ研究所(Australian Institute of Sport;AIS)が定義しているスポーツサプリメントの分類で、Aはスポーツサプリとして有効性を示すエビデンスのあるもの。そのほかに、Bは一定の条件下では有効の可能性のあるもの、Cはエビデンスが不足しているもの、Dは禁止物質や安全性上の懸念があるものとされている。
解析対象アスリートの特徴と調査項目
事前の統計学的検討により、このトピックの検証に必要なサンプル数は360人と計算された。スペインのハンドボール連盟やクラブ経由で、研究参加に同意した360人のハンドボール選手が解析対象とされた。研究参加の適格条件は、競技歴が2年以上でハンドボール連盟に所属しており、過去3カ月以内の怪我の既往がないこととされていた。
360人の性別の内訳は、男性199人(55.3%)、女性161人(44.7%)。競技レベルは、地域レベル(州大会またはコミュニティーでの競技会)が104人(28.9%)、全国レベルが162人(45.0%)、およびエリートレベル(国内大会上位のチームで国際大会に参加する機会もある選手)が94人(26.1%)だった。
調査質問票は、スポーツ科学、スポーツ医学、栄養学、薬学などのさまざまな分野の専門家、計25人が作成に関与。三つのカテゴリー、計34項目の質問が設定された。スポーツサプリメントについては、摂取の有無、摂取しているサプリの種類、摂取理由、購入場所、摂取タイミング、摂取に関する情報源などが調査された。
ハイレベルの選手はサプリ摂取率が高く摂取数が多い
スポーツサプリの摂取率は65.8%だった。
性別で比較すると摂取率には差はないが、摂取数は男性のほうが多い
性別でみた場合、男性の摂取率は69.3%、女性は61.5%であり、有意差はなかった。摂取しているサプリの数も、男性が3.81±3.84、女性は3.37±3.64で、有意差はなかった。
ただし、AIS分類別に比較した場合、Aに該当するサプリは、男性が2.81±2.55であるのに対して女性は2.24±2.20で、有意差が認められた(p=0.027)。BおよびCは、性別による摂取している数の有意差はなかった。なお、Dに該当するサプリを利用しているアスリートは存在しなかった。
AIS分類のAに該当するサプリをより細分化してみると、スポーツフード(おもにエネルギー産生栄養素)の摂取数は性別による有意差がなかったが、メディカルサプリ(マルチビタミン/ミネラル、プロバイオティクスなど)とパフォーマンスサプリ(クレアチン、カフェインなど)は、男性の摂取数が有意に多かった。
競技レベルで比較すると、ハイレベルの選手ほど摂取率が高く摂取数が多い
次に、競技レベルで比較すると、地域レベルでは摂取率49.0%、全国レベルでは67.9%、エリートレベルでは80.9%であり、レベルが高いほど摂取率が高いという有意差がみられた(p<0.001)。また、摂取しているサプリの数も、前記と同順に2.45±2.94、3.90±4.05、4.41±3.75であり、やはり競技レベルが高い選手ほど多くのサプリを摂取していた(p<0.001)。
AIS分類別に比較した場合、A、B、Cの各カテゴリーいずれについても、ハイレベル選手のほうが多く摂取していた。Aに該当するサプリをより細分化してみると、メディカルサプリの摂取数は競技レベルによる有意差がなかったが、スポーツフードとパフォーマンスサプリは、ハイレベル選手の摂取数が有意に多かった。
性別、競技レベル別にみた、最も利用されているサプリ
続いて、性別・競技レベル別に、利用率の高いサプリが検討された。解析結果はAIS分類のAまたはBに該当するサプリについて記されており、このうちカテゴリーBのサプリの中では、性別や競技レベルにかかわりになく、ビタミンが最も多く利用されていた。ここではカテゴリーAのサプリの中で、最も多く利用されていたサプリの情報のみをピックアップする。
性別での比較
スポーツフードでは、男性での最多はプロテインサプリの38.2%であり、女性ではスポーツドリンクの28.0%だった。メディカルサプリの中では、男性はビタミンDが10.6%、女性はマルチビタミンの13.7%、パフォーマンスサプリでは男性がクレアチンの39.4%、女性はカフェイン21.7%だった。
競技レベルでの比較
スポーツフードについては、地域レベル選手ではスポーツドリンクの利用が最多で24.0%、国内レベルやエリートレベルではプロテインサプリの利用が多かった(それぞれ33.5%、38.3%)。メディカルサプリとしては、地域レベル(9.6%)とエリートレベル(11.7%)ではビタミンDの利用が最多で、国内レベルではマルチビタミン(12.3%)の利用が最多だった。パフォーマンスサプリとしては、地域レベルではカフェインが26.0%で最多であるのに対して、国内レベルとエリートレベルではクレアチンが最多だった(それぞれ30.9%、41.5%)。
なお、カフェインの摂取率は競技レベルで有意差がなかったが、クレアチンについては競技レベルが高いほど摂取率が高いという有意差が存在していた(p<0.001)。
文献情報
原題のタイトルは、「Pattern of Consumption of Sports Supplements of Spanish Handball Players: Differences According to Gender and Competitive Level」。〔Nutrients. 2024 Jan 20;16(2):315〕
原文はこちら(MDPI)