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クレアチンサプリに関する一般的な質問と誤解 Part2 国際スポーツ栄養学会がQ&Aを発表

国際スポーツ栄養学会の「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に、「クレアチンサプリメントに関する一般的な質問と誤解(Common questions and misconceptions about creatine supplementation: what does the scientific evidence really show?)」というタイトルのレビュー論文が掲載された。同名のタイトルの論文が2021年にも掲載されており、今回の論文はその「Part II」にあたる。

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今回の論文も2021年の論文と同様に、クレアチン研究の専門家からなる国際チームが結成され、クレアチンに関する文献をレビューし、後述の16項目の誤解に対するエビデンスに基づく回答がまとめられた。質問と回答の要旨のみを紹介する。

1. クレアチンは運動せずとも筋肉に効果をもたらすか?

クレアチン一水和物(creatine monohydrate supplementation;CrM〈以下、クレアチンと省略〉)は主に骨格筋に蓄えられ、細胞内でのアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate;ATP)の生成を促し、エネルギー産生に重要な役割を果たす。その結果、運動介入なしでもクレアチンの総貯蔵量を有意に増加させ、運動パフォーマンスを向上させる可能性があるという複数の報告がある。ビーガンやベジタリアンなど、ベースラインのクレアチンレベルが低い人では、クレアチンに対してより大きな反応を示す可能性がある。

2. クレアチンの摂取タイミングは重要か?

理論的には、クレアチンの体内量が飽和状態に達するまでの摂取開始初期段階において、摂取タイミングの違いが重要な意味をもつと考えられる。ただし、クレアチンの摂取タイミングの違いによる影響の差異を適切なデザインで検討した研究は少ない。現段階では、摂取タイミングを考慮するよりも、クレアチンを継続的に摂取することが恐らく、効果を期待する場合に最も重要と言える。

3. クレアチンに加えて他の化合物を追加摂取すると、有効性が高まるか?

骨格筋へのクレアチンの取り込みは、ブドウ糖摂取またはインスリンによって促進される可能性が報告されている。また、必須アミノ酸のロイシンの代謝産物(つまりβ-ヒドロキシ-β-メチル酪酸〈β-hydroxy-beta-methylbutyrate;HMB〉)との併用により、筋肉内のクレアチン蓄積が促進されるとするいくつかの報告がある。

4. クレアチンとカフェインの作用は拮抗するか?

短期間のクレアチンとカフェイン(5mg/kg/日未満)の併用は、筋肉への拮抗作用を及ぼさない可能性が高い。長期的な干渉作用は不明。パフォーマンス向上の可能性を期待する場合、クレアチン摂取を続けている状態において、カフェインの急性摂取を検討すべきであり、クレアチンを習慣的に摂取している状態でカフェインを慢性的に摂取した場合に、より大きな運動パフォーマンスが発揮されるとは言えず、この組み合わせは消化器障害のリスクを増大させ、間接的にパフォーマンスを妨げる可能性がある。

5. クレアチンは筋タンパク質の合成もしくは分解の速度を速めるか?

少数の研究から、クレアチンは筋肉のタンパク質合成を促進しないと考えられる。一方、異化に対しては、男性において異化を抑制する可能性を示す限られたエビデンスがある。

6. クレアチンは抗炎症作用を有するか?

主に有酸素運動に対する反応として、短期的にはクレアチンがいくつかの炎症マーカーを減少させる可能性があるが、運動に伴う炎症反応に対する長期的なメカニズムや効果を判断するには、さらなる研究が必要とされる。

7. クレアチンは、怪我や手術後の回復を促進するか?

理論的なメカニズムと前臨床データから、クレアチンは外傷、手術、固定後の回復を促進する可能性があると示唆されるものの、臨床データは依然として少なく一貫性がない。摂取プロトコル(短期または長期、他の療法〈例えばリハビリテーション〉の並行介入)や対象疾患の相違が、一貫性の欠如に関与していると考えられる。

8. クレアチンは発癌リスクを高めるか?

ヒトにおいて、3~5g/日のクレアチンが発がん性化合物の形成やがんリスクを増大させるというエビデンスはない。一方、がん化学療法の際に骨格筋や体組成上の課題に対して保護的に作用し、支持的に働く可能性がある。

9. クレアチンは尿量を増やすか?

クレアチン摂取により水分摂取量が増加し尿の生成が増える可能性はあるが、クレアチン自体が独立して尿量を変化させるわけではない。

以下、10番目以降は結論のみを紹介する。

  • 10. クレアチンが血圧に悪影響を及ぼすというエビデンスはない。
  • 11. 動物実験では妊娠中のクレアチン摂取が母体や児に悪影響を及ぼさないことが示唆されている一方、ヒトの妊娠中のクレアチン摂取の安全性・忍容性に関する適切な臨床試験のデータはない。
  • 12. クレアチンは若年者(adolescent)のパワーやスプリントなどの指標も向上する。
  • 13. クレアチンは男性の生殖能力に悪影響を及ぼさない。
  • 14. 脳が骨格筋より多くのクレアチンを必要とするかは不明。
  • 15. クレアチンは睡眠不足の若年成人の認知機能と記憶力に好影響を与える可能性があるが、十分な睡眠をとっている人には影響しない。
  • 16. クレアチンは外傷性脳損傷(traumatic brain injury;TBI)の重症度を軽減し、TBIからの回復を促す可能性がある。

文献情報

原題のタイトルは、「Part II. Common questions and misconceptions about creatine supplementation: what does the scientific evidence really show?」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2025 Dec;22(1):2441760.〕
原文はこちら(Informa UK)

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