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GLP-1受容体作動薬による肥満治療の増加に伴いフードロスも増加する可能性

GLP-1受容体作動薬による肥満治療が、食品廃棄物を増やす可能性を指摘した論文が発表された。同薬による治療開始後に、4人に1人は食品ロスが増えたと感じているという。

GLP-1受容体作動薬による肥満治療の増加に伴いフードロスも増加する可能性

GLP-1RA処方者に、新たな栄養指導項目が発生?

フードロスの削減は持続可能な開発目標(sustainable development goals;SDGs)の実現に向けて大きな課題であり、栄養スタッフが積極的に関与すべきテーマの一つ。家庭でフードロスが発生する理由として、従来から、まとめ買いによる買いすぎ、賞味期限と消費期限の混同、外食頻度の上昇などが指摘されているが、これらにもう一つ、別の理由が最近登場したようだ。GLP-1受容体作動薬(glucagon-like peptide 1 receptor agonist;GLP-1RA)である。

GLP-1RAは当初は血糖降下薬として発売されたが、近年ではむしろ肥満治療薬としての使用が広がっており、その影響で糖尿病用薬が品薄になったこともある。肥満大国の米国では、成人の約12%がGLP-1RAを試したことがあり、約6%は現在使用中だという。

同薬には食欲抑制作用があって、それが減量効果に寄与すると考えられる。では、GLP-1RAの使用により食欲が抑制されることで、人々のフードロスが増えているということは考えられないだろうか。今回取り上げる論文の研究は、このような疑問に基づいて行われた。もし、GLP-1RA使用によってフードロスが増えるのであれば、GLP-1RA治療を行う肥満患者に対する栄養指導では、体重管理のための情報提供だけでなく、フードロスを減らすための情報提供も必要になるかもしれない。

GLP-1RA開始後に4人中1人はフードロスが増加

この研究は、肥満治療の目的でGLP-1RAを現在使用中の米国成人を対象とする、webによる横断調査として実施された。主要な質問項目は、「GLP-1RA治療を開始してから、購入した食品を無駄にすることが増えたか?」であり、強い否定(-2)~強い同意(+2)という5段階のスケールで回答を得た。この回答の答を従属変数とし、説明変数にあてる質問として、GLP-1RAの副作用(吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、便秘、低血糖など)、治療開始後の食事スタイルの変化、摂取量が増えた/減った食品、GLP-1RAの種類、治療開始後の経過日数、および性別や年齢、人種/民族、教育歴、就労状況、加入している医療保険などを把握した。

解析対象は505人で男性が43.4%であり、年齢は45~54歳が28.8%、35~44歳が26.8%、25~34歳が25.6%と多くを占め、その他は55~64歳が9.2%、18~24歳が5.8%、65歳以上が3.8%と少なかった。使用しているGLP-1RAは、セマグルチドが68.5%であり、チルゼパチドが22.4%、リラグルチドが4.1%で、5.0%は不明だった。GLP-1RA治療を始めてからの経過日数は、90日未満が29.9%、90~180日が22.6%、181~365日が21.0%、365日以上が26.5%だった。

「購入した食品を無駄にすることが増えたか?」

「GLP-1RA治療を開始してから、購入した食品を無駄にすることが増えたか?」という質問に対して、強い否定が26.7%、否定が34.1%、どちらでもないが13.9%、同意が18.6%、強い同意が6.7%であり、後二者を加算すると25.3%となり、GLP-1RA治療中の患者の4人に1人は、治療開始後にフードロスが増えたと認識していた。

一方、GLP-1RAの副作用については、49.3%とほぼ半数の患者が吐き気を報告した。そのほかに発現率が高い副作用として、便秘が32.3%、腹痛が28.7%、下痢が25.1%、嘔吐が16.0%などの消化器症状が報告された。

GLP-1RA治療開始後の経過が長引くと、フードロスは減る

GLP-1RA治療開始後にフードロスが増えたことを従属変数とする解析の結果、有意な関連の認められた独立変数として、副作用として吐き気を生じたこと(係数0.26、p=0.02)のみが抽出された。その反対に、野菜の摂取量が多いこと(同-0.27、p=0.04)、および、GLP-1RA治療開始後365日以上経過していること(-0.35、p=0.03)という2項目は、フードロスの増加に対する負の関連因子として抽出された。

年齢、性別、人種/民族、GLP-1RAの種類、吐き気以外の副作用、教育歴、収入、就労状況、加入医療保険などは有意な関連因子でなかった。なお、GLP-1RA治療開始後の経過日数に関しては非有意ながら、90~180日では係数-0.13(p=0.41)、181~365日では同-0.22(p=0.16)であり、前述のように365日以上では-0.35(p=0.03)と有意となっていて、継続使用期間が長いほどフードロスが減少する傾向が観察された。

野菜の摂取量が増えて廃棄量は減るという好ましい変化も

これらのほかに本研究では、GLP-1RA治療開始後に人々の嗜好や習慣が変化することも示された。全体的に、植物性食品、タンパク質、魚、健康的な脂質の摂取量が増え、アルコール、パスタなどの炭水化物、揚げ物、菓子、乳製品の摂取量は減っていた。

野菜は通常、フードロスにつながりやすい食材だが、本研究からは既に述べたように、フードロスの増加に対する負の関連因子(野菜摂取量が多いほどフードロスが減る)として特定されており、この点からもGLP-1RA治療により野菜の摂取量が増加した可能性がうかがえた。

論文の結論は、「GLP-1RAによる肥満治療は、食品廃棄パターンに大きな影響を与える可能性がある。フードロス削減という社会課題の重要性を考慮すると、GLP-1RAの新規ユーザーには、一時的に食品廃棄量が増える可能性があることを伝え、対策を促す必要があるのではないか」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Changes in Food Waste among a Sample of U.S. Consumers after Beginning Anti-Obesity Medication」。〔Nutrients. 2024 Sep 27;16(19):3274〕
原文はこちら(MDPI)

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