クレアチンの筋力増強効果に影響を与える因子が明らかに 系統的レビューとメタ解析
筋力増強を期待してクレアチンを摂取しているアスリートは少なくないが、その効果に影響を及ぼし得る因子が、システマティックレビューとメタ解析から示された。性別と摂取量という二つの因子が、効果の違いを生じさせる可能性があるという。
高齢集団が対象の研究を除外したシステマティックレビュー
クレアチンはアスリートの利用率が最も高いエルゴジェニックエイドの一つであり、おもに筋力の増強に関する強固なエビデンスがある。それらの研究を対象とするメタ解析の報告も既に複数存在し、いずれも有用性を示している。ただし、解析に含まれている個々の研究は、高齢者の加齢変化の抑制に焦点を当てたものが含まれていたり、メタ解析に際して摂取の効果を標準化平均差(standardized mean difference;SMD)として検討しているために具体的な有効性の解釈が困難であるといった限界がある。
そこで今回紹介する論文の著者らは、研究参加者に高齢者が含まれていない50歳未満の集団を対象とした研究に絞り、かつ、メタ解析はSMDではなく筋力の実測値(kg)で解析するという趣旨で、以下の検討を行った。
レジスタンストレーニングと並行介入した23件の研究をメタ解析
文献検索にはPubMed、Scopus、Embase、SPORTDiscusを用い、各データベースのスタートから2024年5月22日まで収載された論文を対象とした。包括基準は、クレアチン摂取とレジスタンストレーニングを並行して行い、その筋力に対する影響を、プラセボ摂取とレジスタンストレーニングを並行して行った場合と比較した無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)であり、対象が50歳未満である研究。除外基準は、レジスタンストレーニングを並行して行っていない研究(例えば有酸素運動を並行して行った研究など)、全文を入手できない報告、急性効果のみを検討した研究、査読システムのないジャーナルの論文、症例報告、レビュー、エディトリアルなど。
一次検索で1,586件がヒットし、重複削除後の799件を2名の研究者がタイトルと要約に基づき独立してスクリーニングを実施。99件に絞り込み、全文精査の対象とした。採否の意見の不一致は討議により解決し、最終的に23件の研究報告をメタ解析の対象とした。
解析対象研究の特徴
23件の研究のうち20件は男性対象、2件は女性対象、1件は男性と女性が含まれていた。参加者数は男性が計447人、女性は計40人。18件の研究は、レジスタンストレーニングの経験者を対象とし、他の5件は未経験者が対象だった。
クレアチンの摂取量は、ローディング期(最初の7日間)は15~25g/日または0.3g/kg/日で、メンテナンス期(維持期)は2~10g/日または0.03~0.22g/kg/日であり、レジスタンストレーニングは週2~5回で4~12週間の介入が行われていた。
性別と摂取量が筋力アップの差に関連
評価項目は、21件(n=433)では上半身の筋力、19件(n=395)は下半身の筋力を評価していた。
本研究におけるメタ解析は、上半身の筋力と下半身の筋力に分けて実施されており、またそれぞれについて、性別、介入期間(8週未満/以上)、研究参加前のレジスタンストレーニング歴の有無、介入期間中のトレーニング頻度(週3回以下/超)、クレアチン摂取量(5g/日以下/超)、および、摂取ローディング期の有無で層別化したサブグループ解析を行っている。
上半身の筋力への影響
クレアチン摂取+レジスタンストレーニングにより、プラセボ摂取+レジスタンストレーニングに比較し、上半身の筋力が有意に強化されることが示された。加重平均差(weighted mean difference;WMD)は4.43kg(95%CI;3.12~5.75)であり(p<0.001)、研究間の異質性を認めなかった(I2=0%)。
サブグループ解析では、性別を除くすべての因子について群間差が非有意であり、いずれのカテゴリーでもプラセボ摂取+レジスタンストレーニングのほうが筋力が有意に上昇していた。唯一、性別の解析では、男性でより大きな効果が認められた一方(平均差〈mean difference;MD〉4.95kg〈95%CI;3.52~6.38〉、p<0.001)、女性では有意差が認められなかった(MD1.54〈-1.81~4.89〉、p=0.368)。ただし、男性と女性の効果の差も、有意水準未満だった(p=0.067)。
また、クレアチンの投与量で比較した場合、高用量群のほうがMDは高値だったが(4.17kg〈2.75~5.58〉 vs 6.11kg〈2.54~9.68〉)、群間に有意差はなかった(p=0.543)。
下半身の筋力への影響
下半身の筋力への影響も、クレアチン摂取+レジスタンストレーニングのほうが優れていた。加重平均差(WMD)は11.35kg(95%CI;8.44~14.25)であり(p<0.001)、研究間の異質性を認めなかった(I2=0%)。
サブグループ解析では、上半身の筋力への影響と同様に、性別を除くすべての因子について群間差が非有意であり、いずれのカテゴリーでもプラセボ摂取+レジスタンストレーニングのほうが筋力が有意に上昇していた。唯一、性別の解析では、男性でより大きな効果が認められた一方(MD11.68kg〈8.60~14.76〉、p<0.001)、女性では有意差が認められなかった(MD8.03〈-0.83~16.90〉、p=0.076)。ただし、男性と女性の効果の差も非有意だった(p=0.446)。
また、クレアチンの投与量で比較した場合、高用量群のほうがMDは高値だったが(9.90kg〈6.61~13.19〉 vs 16.43kg〈10.25~22.61〉)、群間差は有意水準未満だった(p=0.068)。
以上を基に論文は、「50歳未満の成人がクレアチン摂取とレジスタンストレーニングを並行して行うと、上半身と下半身の筋力が強化され、とくに女性よりも男性でより大きな効果を期待できる可能性が高い。またクレアチンの用量は高用量のほうが影響が強い傾向がみられる。クレアチン摂取による筋力への影響を左右するその他の因子は特定されなかった」と総括されている。
文献情報
原題のタイトルは、「Effects of Creatine Supplementation and Resistance Training on Muscle Strength Gains in Adults <50 Years of Age: A Systematic Review and Meta-Analysis」。〔Nutrients. 2024 Oct 28;16(21):36651〕
原文はこちら(MDPI)