女子大学生アスリートの利用可能エネルギー不足や摂食障害のリスクが不安レベルと有意に関連
全米大学体育協会(NCAA)に所属している女子大学生アスリートを対象とする調査の結果、利用可能エネルギー不足(LEA)や摂食障害のリスクの高さが、全般不安症の強さと有意な関連のあることが明らかになった。著者らは、女性アスリートのトライアド、スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)の新たなエビデンスが得られたとしている。北米の研究者らの報告。
女子大学生のメンタル関連REDsリスクを横断的に解析
「女性アスリートの三主徴(triad〈トライアド〉)」と呼ばれていた、利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)、月経異常、骨密度低下は、現在では「スポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sport;REDs)」として改めて定義付けされ、注意喚起がなされている。ただし、REDsに関するエビデンスは十分とは言えず、とくにメンタルヘルスとの関連については知見が不足している。
女性アスリートの中でも大学生アスリートは、精神的な未熟性、学業とのバランスをとる必要性などの点で、REDsによるメンタルへの影響がより強いと考えられており、飲酒行動や不安・うつレベルの高まりなどを示唆するデータもある。これを背景として今回紹介する論文の著者らは、女子大学生アスリートのLEAと、不安、摂食障害のリスクとの関連について横断的に検討した。
NCAA所属115人の女子大学生アスリートのLEAと摂食障害、不安レベルを解析
この研究の対象は、全米大学体育協会(National Collegiate Athletic Association;NCAA)のディビジョンI~IIIに所属している18歳以上の現役女子大学生アスリート。監督やコーチ、トレーナーを通じて募集され115人から有効回答を得た。調査はGoogleのフォーマットを用いた匿名でのオンラインアンケートとして実施され、年齢や行っている競技、体重などの質問のほかに、以下の質問票にて、利用可能エネルギー不足(LEA)や摂食障害、全般不安症の有無や程度を把握した。
摂食障害の有無
アスリートの摂食障害スクリーニングツール(Disordered Eating Screen for Athletes;DESA-6)を用いた。DESA-6は6点満点で評価し、3点以上の場合に摂食障害の存在が示唆される。
摂食障害のリスク評価
摂食障害検査質問票の簡易版(Eating Disorder Examination Questionnaire-Short;EDE-QS)を用いた。EDE-QSは12項目で構成されスコア範囲は0~36点であり、スコアが高いほど摂食障害関連の行動が多いことを示し、15点以上はリスクありと判定する。
利用可能エネルギー不足(LEA)の有無
女性の利用可能エネルギー不足に関する質問票(Low Energy Availability in Females Questionnaire;LEAF-Q)を用いた。LEAF-Qのスコア範囲は0~49点であり、スコアが高いほど高リスクであることを示し、8点以上をリスクありと判定した。
全般不安症の評価
全般性不安症の評価尺度(Generalized Anxiety Disorder-7;GAD-7)を用いた。GAD-7は7項目で構成されスコア範囲は0〜21であり、スコアが高いほど不安が強いことを示す。4点以下は不安症状がないか限定的、5~9点は軽度の不安症状、10~14点は中等度の不安症状、15点以上は重度の不安症状を示しGADの診断基準を満たす可能性が高い。解析対象アスリートの特徴
115人の女子大学生アスリートは、年齢が19.9±0.1歳、BMI23.3±0.2であり、ディビジョンIが14.8%、IIは56.5%、IIIは28.7%。行っている競技は、ラクロスが34.5%、サッカー23.5%、クロスカントリー/陸上競技20.9%、バスケットボール11.3%、ボウリング3.5%、バレーボール2.6%のほか、ソフトボール、水泳、テニス、ラグビーが各0.9%。
不安、摂食障害、LEAは相互に関連がある
GAD-7から、不安なしが14.8%、軽度不安が33.0%、中等度不安24.3%、重度不安27.8%と評価された。またEDE-QSから22.6%が摂食障害のリスクが高く、DESA-6では31.3%が摂食障害リスク陽性と判定された。LEAF-Qからは、68.7%が女性アスリートのトライアドのリスクがあることが示された。
不安の強い女子大学生アスリートは摂食障害リスクが高い
不安なし/軽度不安と判定された55人と、中等度/重度の不安と判定された60人とで、年齢とBMIに有意差はなかった。しかし、中等度/重度不安群は、GAD-7スコア(15.3±0.5 vs. 5.7± 0.3)、EDE-QSスコア(11.9±1.1 vs. 5.2±0.8)、DESA-6スコア(2.5±0.2 vs. 1.2±0.2)、およびLEAF-Qスコア(11.7±0.6 vs. 8.2±0.5)が有意に高かった(すべてp<0.001)。つまり、中等度/重度の不安のある女子大学生アスリートは、そうでない女子大学生アスリートに比べて、摂食障害を有していたり摂食障害のリスクが高いことが示された。
不安の強さは利用可能エネルギー不足(LEA)リスクなどと正相関
続いて、不安レベルを表すGAD-7スコアと、他の評価項目との相関を検討。その結果、EDE-QSスコア(r=0.465)およびDESA-6(r=0.391)との間に有意な正相関が認められた(いずれもp<0.001)。また、LEAF-Qの合計スコア(r=0.430、p<0.001)と正相関したほか、LEAF-Qのサブスケールである消化器症状スコア(r=0.373、p<0.001)、および傷害スコア(r=0.264、p=0.004)とも正相関していた。LEAF-Qの月経スコアとの相関は非有意だった。
これらの結果を基に著者らは、「女子大学生アスリートの半数以上が中度から重度の不安を示しており、トライアドまたはRED-Sのリスクは不安の強さと関連していた。具体的には、摂食障害と利用可能エネルギー不足(LEA)のリスクはともに不安の強さと関連があった。この知見は、女子大学生アスリートに対して、これらのリスク因子をスクリーニングすべきであることを正当化するものである。今後の研究では、競技の種類、競技レベル、個々のアスリートのメンタルヘルス状態、その他のリスク因子との関連をさらに検討する必要がある」と総括している。
文献情報
原題のタイトルは、「Low Energy Availability Risk Is Associated with Anxiety in Female Collegiate Athletes」。〔Sports (Basel). 2024 Oct 8;12(10):269〕
原文はこちら(MDPI)