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サッカー選手の「サポートスタッフ」をサポートするための栄養戦略

「Supporting the Support Staff(サポートスタッフをサポートする)」というタイトルの下、サッカー選手をサポートするスタッフのための栄養について論説した、英国、フランス、スペインの研究者によるナラティブレビュー論文を紹介する。著者らは、「サッカーの組織やクラブ運営にかかわる政策立案者は、組織の全体的なパフォーマンスの向上を目指す際に「サポートスタッフのサポート」という視点での検討も必要ではないか」と述べている。

サッカー選手の「サポートスタッフ」をサポートするための栄養戦略

サポートスタッフは、選手以上に過密スケジュールの可能性

プロサッカーにおいて、試合や移動、トレーニングなどの需要はかつてないほど高まっている。年に約40週間のシーズン中に50試合以上戦うことは当たり前となり、成績次第ではさらに試合数が増え70試合を超えることがある。加えてトップレベルの選手は国際試合への参加、そのための移動、現地トレーニングなどのタスクが加わる。時差のある移動、回復にあてられる時間の短縮、国際化によるキックオフ時間のばらつきなどは、アスリートの身体的・精神的負荷を高め、怪我のリスクやパフォーマンス低下のリスク上昇につながり、サポートスタッフの任務がより重要となる。

サッカーのサポートスタッフは、選手への帯同以外に、トレーニングや栄養戦略等の事前計画の立案、実施後のデータ分析、レポートの作成などのため、選手以上の長時間労働を行っている可能性がある。最近、国際プロサッカー選手会(FIFPRO)は、サッカー選手の休息日は週に1日に満たないとする報告を発表した。そうだとすると、サポートスタッフは、最良でも週に1日未満の休息、最悪ではほぼ休みがない状態で働き続けていることになる。

にもかかわらず、サッカーのサポートスタッフのサポートに関する研究論文は、これまでほとんど報告されていない。この状況を本論文の著者らは「やや意外なこと(somewhat surprising)」と表現している。

これまでの限られた研究から、ハイパフォーマンスアスリートのコーチやサポートスタッフには、高いレベルの心理的苦痛の有病率が14~28%、睡眠障害が18%であり、それらを含めて39~55%に疲労とメンタルヘルス症状がみられることが報告されている。これらを背景として、本論文の著者らは、プロサッカー選手を支えるサポートスタッフのサポート体制のうち、栄養に重点を置いたナラティブレビューを行った。一部を要約して紹介する。

サッカーの多職種サポートスタッフの回復と健康のための栄養

栄養と免疫

コーチを含めてサッカーアスリートを支える多くのサポートスタッフは、免疫機能低下の一因として知られている環境的および心理的ストレスにさらされる可能性が高い。選手を対象とした研究からは、冬季の強化トレーニング、長距離の移動、エネルギー不足、精神的ストレスや不安の高まりなどが、免疫機能低下のリスク因子として特定されている(ただし、これらに限らない)。サポートスタッフも同様に、これらの因子に曝露されていると考えられる。

スポーツアスリートの免疫について取り上げたある総説論文では、免疫能における「抵抗性」と「寛容性」というモデルを提唱している。栄養学の観点から、免疫寛容性については、亜鉛、グルタミン、炭水化物、牛初乳、カフェイン、βグルカン、エキナセアなど、また免疫抵抗性については、プロバイオティクス、ビタミンC、D、E、ポリフェノール、ω3などが有用とする論文もある。

さらに、一般集団を対象とする知見ではあるが、免疫機能の最適化において関心が高まっている分野として、腸内細菌叢と免疫システムの相互作用が挙げられる。短鎖脂肪酸(short-chain fatty acid;SCFA)、トリプトファン代謝物、胆汁酸代謝物などの腸内細菌叢の代謝物は、免疫抑制細胞の分化と機能を促進し、炎症細胞を抑制する可能性が示唆されている。この領域の研究にはまだ、スポーツ特異的な視点がみられておらず、限定的なエビデンスではあるが、腸内での発酵(およびそれに続くSCFAの産生)を促す食物繊維の摂取や、トリプトファンと胆汁酸の代謝に関連するアミノ酸源の摂取などの食事戦略は、アスリートおよびそのサポートスタッフにとっても役立つ可能性があるかもしれない。

栄養と睡眠衛生

近年、スポーツアスリートの睡眠の重要性の認識が高まり、それを改善するための栄養戦略がいくつか提案されてきている。アスリート向けのそのような戦略がサポートスタッフの回復や健康にも役立つか否かについては、ほとんど文書化されていない。とは言え、総睡眠時間、睡眠相などの指標をモニタリングし、栄養戦略を通して睡眠衛生習慣を改善することで、サッカーサポートスタッフの回復と健康に一定のメリットがもたらされる可能性はあるだろう。いくつかの神経伝達物質が睡眠相を調整することが確認されている。5-ヒドロキシトリプトファン、γ-アミノ酪酸、オレキシン、コリン作動性ホルモン、ノルアドレナリン、ヒスタミンなどである。

アスリートの睡眠と栄養に関して行われたレビュー論文では、炭水化物の摂取(タイミングと種類を含む)、メラトニン、トリプトファンを豊富に含むタンパク質、抗酸化物質(ビタミンA、C、E)、タルトチェリー、ビタミンB群、マグネシウムなどが、睡眠を改善する可能性のある栄養素として特定されている。一方、アルコール摂取は概日リズムを変化させる潜在的なリスクがあり、睡眠に悪影響を及ぼす可能性が示唆されている。サポートスタッフにもこれらの知見が当てはまる可能性があるが、実証のためにこのコホートでの研究が求められる。

時間栄養学研究

サッカーのハードスケジュール化の進展を考慮すると、この集団での回復戦略の最適化を模索する将来の研究は、時間栄養学が軸となるかもしれない。

概日リズムのプロセスは、睡眠/覚醒サイクル、血圧、心拍数、ホルモン分泌、認知機能、気分調節などの生理学的プロセスに関連があると考えられており、それが乱されると代謝の健康に影響を与える可能性がある。また、そのような概日リズムのずれは、食物摂取、糖代謝、体重調節に影響を及ぼすことが報告されている。

時間栄養学の実践のために、いくつかの食事戦略が提案されている。例えば、1日のカロリーと炭水化物の大半を昼食時と午後の早い時間に摂取することなどが含まれる。しかし、時間栄養学は進歩しつつあるが未だ学ぶべきことが多く残されている。さらに、移動や睡眠時間の不規則性などの諸問題を避けがたいという事情を考慮すると、サッカーのサポートスタッフにとり、時間栄養学に基づく食事戦略の実践は実践的でないかもしれない。

文献情報

原題のタイトルは、「'Supporting the Support Staff': A Narrative Review of Nutritional Opportunities to Enhance Recovery and Wellbeing in Multi-Disciplinary Soccer Performance Staff」。〔Nutrients. 2024 Oct 14;16(20):3474.〕
原文はこちら(MDPI)

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