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「隠れ肥満」の人への栄養・運動介入の効果を比較してわかったこと システマティックレビュー

顕著な肥満ではないにもかかわらず健康への悪影響が生じ得る人に対する栄養・運動介入の効果に関する、システマティックレビューの結果が報告された。体脂肪を減らすという点では高強度インターバルトレーニングと高タンパク食が最も有効であり、摂取エネルギー制限は体重が減るものの除脂肪量も減少しやすいという。英国の研究者の報告。

「隠れ肥満」の人への栄養・運動介入の効果を比較してわかったこと システマティックレビュー

アジア人では「正常体重肥満」の健康被害リスクを無視できない

肥満がさまざまな健康被害のリスクを高めることは広く知られているが、アジア人では欧米人のような肥満(例えばBMI 30以上)でない過体重(日本やアジアでは肥満の範疇とされるBMI 25~30)、あるいは基準範囲内の体重であっても、2型糖尿病の有病率が高いことも知られている。

「正常体重肥満(normal weight obesity;NOW)」、あるいは“隠れ肥満”ともいわれるこのような状態は、体重ではなく体脂肪率が高値であり、とくに内臓脂肪の蓄積が問題の根幹であると考えられている。体脂肪率の測定方法が標準化されていないため、現在、正常体重肥満(NOW)の定義も確立していないが、健康リスクを抑制するための介入において指標とすべきは体重でなく、体脂肪率や体組成のほうが適切であることは明らか。

しかし、NOWの体脂肪率や体組成を改善するための最適な介入方法はわかっていない。今回紹介する論文の著者らはこの点に関する、システマティックレビューを行った。

文献検索について

システマティックレビューとメタ解析のためのガイドライン(PRISMA)に則して、PubMedおよびWiley Onlineを用いて、2024年5月13日に文献検索を実施。包括基準は、2012~2022の10年間に報告された、18歳以上の標準体重または過体重(BMI 30未満または、平均BMI±2標準偏差以内)で、体脂肪率、ウエスト周囲長、ウエストヒップ比、ウエスト身長比などが高値の対象に対して栄養または身体活動による4週間以上の介入を行い、対照群・条件を設定して体組成関連指標の変化を検討した介入試験または症例対照研究で、英語で執筆されている論文。コホート研究、未成年対象研究、動物実験、薬物または減量・代謝改善手術による介入、介入期間が4週間未満の研究などは除外した。

正常体重肥満(NOW)、腹部肥満、中心性肥満、正常BMIなどのキーワードによる検索で2,821報がヒットし、重複削除、スクリーニング、全文精査、および関連文献のハンドサーチを経て、7件の研究報告を適格と判断した。なお、BMIの平均±2標準偏差としたことによって新たに該当した報告はなかった。

アジア発の7件の研究論文をレビュー

特定された7件の研究のうち6件は無作為化比較試験であり、1件は単群での介入試験だった。報告地はシンガポール、イラン、中国、インド、韓国、日本で、すべてアジアだった。合計参加者数は660人で、介入には高タンパク食、高強度インターバルトレーニング(high intensity interval training;HIIT)、ライフスタイル教育、軽度のエネルギー制限、および新規多糖類の摂取で行われていた。

なお、研究によって介入方法が大きく異なっていたため、メタ解析は行われていない。

体脂肪、除脂肪体重への介入効果の比較

除脂肪体重が増加する介入

体脂肪の減少という点で、最も大きな介入効果を報告していたのは、高強度インターバルトレーニング(HIIT)による介入を行った1件の研究だった(平均差〈MD〉-6.8%〈SE0.06〉)。ただし、バイアスリスクが高いと評価された。

次に大きな効果が認められたのは高タンパク食による介入を行った2件の研究だった(MD-2.8%〈SE0.27〉およびMD-2.0%〈SE0.05〉)

これら3件の研究では、除脂肪体重の増加も認められた。

体重が減るが除脂肪体重も減る介入

一方、エネルギー制限による介入を行った2件の研究は、体重とBMIの減少という点では最も有効だった(MD-3.10kg〈SD0.87〉およびMD-2.90kg〈SE0.06〉)。しかし、除脂肪体重も減少しており、結果として体脂肪率の低下は少なかった(MD-1.10%〈SD0.57〉およびMD-0.8%〈SE0.30〉)。

全体として、研究間に大きな異質性が認められた。

正常体重肥満(NWO)の管理に有望な栄養・運動介入のエビデンス

著者らは、「本システマティックレビューに含まれる研究は、正常体重肥満(NWO)の管理に有望な栄養と身体活動が存在するというエビデンスを提供しているのではないか」と述べ、さらに「レビューの結果、多くの介入が小さな効果しか示さなかったため、NWOの管理においては、多面的なアプローチを評価する必要があるということだ」と総括している。また、「最も有望な栄養介入は高タンパク食であり、最も有望でないのは、高タンパク質としない単純な摂取エネルギー制限、または断続的断食である」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「A systematic review of physical activity and nutritional interventions for the management of normal weight and overweight obesity」。〔Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2024 Aug 9:S0939-4753(24)00297-7〕
原文はこちら(Elsevier)

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