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格闘技アスリートの栄養知識・栄養素摂取量・減量戦略は、指導者の栄養知識レベルと関連

体重別階級のある格闘技のアスリートの栄養知識や栄養素摂取量、減量戦略が、指導するコーチの栄養知識の多寡と相関しているというデータが報告された。著者らは、アスリートだけでなく、コーチへの栄養指導の必要性もあるとしている。韓国発の報告。

格闘技アスリートの栄養知識・栄養素摂取量・減量戦略は、指導者の栄養知識レベルと関連

アスリートの食習慣や栄養素摂取量はコーチに依存しがち

現在では、非常に豊富な情報にいとも簡単にアクセスでき、食事や栄養に関する情報もあふれている。しかし、その膨大な情報の中から、エビデンスに基づいた情報を取捨選択するには一定のリテラシーが必要であり、エリートレベルのアスリートであっても、食事や栄養に関する情報をコーチに依存していることが少なくない。

アスリートにとって食事や栄養が重要であることは改めて述べるまでもなく、適切な栄養知識は適切な体組成や健康の維持とパフォーマンス向上につながり、そうでない場合は健康リスクの増大やパフォーマンス低下の懸念が生じる。とくに、試合前に減量戦略がとられることの多い格闘技アスリートでは、食事・栄養管理がより重要であり、知識の多寡がさまざまな結果に結びつく可能性がある。

これらを背景として本論文の著者らは、韓国のエリートレベルの格闘技アスリートのコーチを対象として栄養知識の調査を行い、そのコーチの指導を受けてるアスリートの栄養知識、実際の栄養素摂取量、および減量戦略との関連を解析した。

コーチの栄養知識の高低で2群に分け、アスリートの栄養知識や行動を比較

研究対象は、韓国オリンピック委員会に登録されているコーチ22人(43.84±4.57歳)と、その指導を受けている格闘技アスリート88人(21.47±1.47歳)。すべて男性で、アスリートは過去1年間にわたり怪我によるスポーツからの離脱がないことが条件とされていた。22人のコーチおよびアスリートの競技カテゴリーは、レスリング 9人、柔道 7人、テコンドー 4人、ボクシング 2人。

栄養に関する知識は、韓国語版の栄養知識質問票(General Nutrition Knowledge Questionnaire;GNKQ)で評価した。GNKQは、食事に関する推奨事項や、栄養と疾患との関連などの四つのセクションに分かれた計88項目の質問票で、各問1点とし合計88点で評価する。

この研究では、コーチのGNKQ点数に基づき、成績上位群12人と下位群10人に二分。このコーチの割り付けに応じて、アスリートも2群(コーチの成績上位群57人、下位群31人)に分類したうえで、統計解析を行っている。

アスリートの栄養素摂取量は、週末を含む3日間の食事調査に基づき推定された。

コーチの栄養知識スコアの高低で、アスリートのスコアにも有意差

コーチのGNKQスコアは、成績上位群が63.17±4.18、下位群が52.98±6.17であり、平均差は10.19点で有意差が認められた(p<0.001)。また、アスリートのGNKQスコアは成績上位コーチの指導を受けている群が53.39±6.86点、成績下位コーチの指導を受けている群が46.77±7.92点であり、平均差は6.62点でやはり有意差が認められた(p<0.001)。

コーチのGNKQスコアとアスリートのGNKQスコアには有意な相関がみられた(r=0.369、p<0.001)。

栄養知識のスコアが高いコーチの指導を受けているアスリートは、減量の頻度が低い

減量戦略については、アスリートの59.1%が短期間(1週間以内)で行い、41.9%が長期間(1週間超)かけて行っていた。減量幅は54.5%が3kg未満、45.5%が3kg以上であり、減量頻度は54.5%が年3回以下、45.5%が年4回以上だった。

コーチのGNKQスコアが高いほど、指導を受けているアスリートの減量頻度が少ないという有意な関連が認められた(r=-0.235、p=0.027)。一方、指導を受けているアスリートの減量期間や減量幅は、コーチのGNKQスコアとの有意な関連がなかった。

コーチの栄養知識のスコアの高低で、アスリートの摂取栄養素量にも有意差

コーチのGNKQスコアの高低は、指導を受けるアスリートの栄養素摂取量の多寡とも有意な関連が認められた。例えば炭水化物(%エネルギー)は、成績上位コーチの指導を受けている群が53.56±6.10、成績下位コーチの指導を受けている群が59.04±6.02(p<0.001)、タンパク質(g/日)は同順に248.26±45.99、211.90±47.83(p=0.001)、脂質(%エネルギー)は26.57±3.66、23.71±3.70(p<0.01)だった。

コーチは栄養に関する適切な情報をもっている必要がある

本論文には考察および結論として以下のように述べられている。

「これまでの研究によると、エリートレベルであっても多くのアスリートが栄養に関する情報をコーチやトレーナーから得ており、栄養士からのアドバイスを入手しているアスリートは少数に限られている。したがって、コーチやトレーナーは適切な栄養情報を有している必要がある。我々の研究結果は、コーチとアスリートの栄養知識を向上させる教育資材の開発に役立つと考えられる」。

文献情報

原題のタイトルは、「Analysis of the diet, weight-loss behavior, and nutritional knowledge of athletes and coaches in weightclass sports: influence of a coach’s nutritional knowledge on athletes」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2024 Dec;21(1):2405159〕
原文はこちら(Informa UK Limited)

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